- 2022/03/02
- JAMAGAZINE, モーターショー
サロン・メッセ 動き出したリアルイベント
自工会広報誌「JAMAGAZINE」3月号よりピックアップ
新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期や中止が相次いでいたイベントや展示会ですが、徐々に再開を模索する動きが広まっています。国内最大のカスタムカーイベントである「東京オートサロン2022」は、2年ぶりにリアルイベントとして1月14日から幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催されました。イベントの開催制限により、出展者は366社、展示車両は712台と前回比で減少したものの、出展者や来場者が交流を深めるなど、会場はこれまで通りの熱気に包まれていました。
主催者である東京オートサロン実行委員会の発表によると、3日間の累計参加人数は12万6869人でした。新型コロナウイルスの感染予防対策を図るため、1日当たりの参加人数上限を施設収容定員(最大11万4800人)の半数となる5万7400人におさえると事前に定めており、各開催日の参加人数もその範囲内に収めました。会場内では人の滞留を抑制するために通路幅を広げブースの間隔を確保したほか、これまで出展ブース内に収めるように求められていた来場者をブース周辺の待機列へ誘導可能とすることで、密集回避に努めました。屋外走行会場やライブ会場でも感染予防対策を行いましたが、「来場者の理解で、トラブルなども起きなかった」と、福井潤一総合プロデューサーは振り返ります。
さらに東京オートサロンでは初めてとなる完全電子チケットも導入するなど県や市と連携しながら徹底した感染症対策を施した結果、「リアル開催が中止となった昨年も含め、準備期間は実質2年ありました。これまで蓄積したノウハウを生かし、様々な事態を想定した対策を行ったことで、クラスターの発生もありませんでした」(同)と福井氏は対策が奏功したとの認識を示しました。
会場内では、これまで西から東ホール内を横断できた通路を封鎖し、出展エリアを4カ所に区切りました。各ホールに設けたゲートでは入場人数を人感センサーで計測して滞留を抑制したほか、エリア内で定期的な消毒やマスクの着用などを喚起する人員を動員し、感染拡大防止対策を呼びかけました。独自の感染症対策を施す出展者も多く見られました。入口で除菌ミストを噴霧するゲートの設置や、入口と出口の動線を分けた滞留しにくいブース構成など、それぞれに工夫を凝らしていました。また、ある出展者はスタッフを減らし、製品前に設置した端末から開発者がリモートで説明する仕組みを用意しました。「オートサロンはカスタムに詳しい来場者も多いので説明できる体制が重要となります。実際に詳細な質問をする来場者が多かった」と実施したカスタムメーカーの社長は話します。
自動車メーカー各社のブースでは、密集が起こらないように入口で人数制限などの対策を施しながら、リアルやオンラインとのハイブリッド形式で新型車やコンセプトカーが発表されました。お披露目されたコンセプトカーは、EVなど電動車も多く、形状もスポーツカーからSUV、軽自動車まで多岐にわたり、自動車業界の大きな変革の流れを感じられる内容となりました。なかでも、日産自動車が初公開した日本仕様の新型「フェアレディZ」は注目度が高く、トヨタ自動車の豊田章男社長が日産ブースを訪れたことも大きな話題となりました。
カスタムパーツメーカーのトレンドは、昨年発売されたトヨタ「GR86」とスバル「BRZ」の新製品でした。各社は車両本来の性能を引き出すためのチューニングパーツや、個性を際立たせる内外装パーツ、アルミホイールなどを一挙に初公開し、カスタムの可能性を提示しました。そのほか、昨年に展示予定だった車両や製品をブラッシュアップし、よりこだわりの詰まったブースの出展が目立ちました。
日本のカスタム文化は海外でも人気が高いものの、入国制限により海外からの来場者は見込めませんでした。このため今回はリアル展示とのハイブリッドをコンセプトに「オンラインオートサロン」を実施。イベントの模様をライブ配信する「オートサロンTV」では、日本語・英語・中国語に対応し、3日間でのべ42万人が視聴しました。福井総合プロデューサーは「タイムラグなくオートサロンを体感してもらえたのでは」と述べます。さらに、初の試みとして「TOKYO OUTDOOR SHOW 2022」が併催されました。近年のオートサロンではアウトドア仕様のカスタムカーなども増えており、「アウトドアショーの来場者にも(オートサロンの展示は)好評で、新たなクルマファンの拡大につながったと思います」(同)と、評価しています。無事に東京オートサロンが閉幕したことについて「出展者と来場者そして関係者それぞれの理解のうえで成り立つ、コロナ禍における大型イベントの指標となったと思います」(同)と振り返ります。さまざまな工夫や新たな取り組みにより、リアル開催を実現したオートサロンの関係者による努力は、自動車産業にとって尊敬と感謝に値します。自動車業界のファンづくりに欠かせないリアルイベントの今後の開催において、一つの好例となりそうです。
大阪オートメッセ2022
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