#自工会 記者会見を実施(2021/9)

本日、日本自動車工業会の記者会見をオンラインで実施いたしました。
今回は、会長の豊田章男(トヨタ)に加え、副会長の神子柴寿昭(ホンダ)、日髙祥博(ヤマハ)、片山正則(いすゞ)、永塚誠一(自工会)の正副会長全員が登壇。カーボンニュートラルはもちろん、自動運転や政界への要望など幅広いトピックをカバーしました。

■会長 豊田章男(トヨタ自動車代表取締役社長)

日本のために行動する自動車産業

先日、オリンピックに続き、東京2020パラリンピックが閉幕いたしました。
障がいをオンリーワンの個性にするパラアスリートたちのオンリーワンの闘い方とオンリーワンのストーリーに、多くの人が感動した大会だったと思います。

そして、選手たちが試合後に語っていたことは、

この場に立たせてくれてありがとう。
応援してくれてありがとう。
大会をサポートしてくれた
すべての人に、ありがとう。

という「感謝の気持ち」でした。

舞台裏ではボランティアをはじめ、「大会運営を支えよう」と頑張っている人たちがたくさんいました。そこには、自動車産業550万人の仲間の姿もありました。アスリートや現場の皆さんが示してくれたものは、「自分以外の誰かのために」という想いであり、それこそが今大会のレガシーではないかと思っております。

そして自動車会社といたしましては、閉会(へいかい)後も、パラリンピックを通じて知り得た社会課題や技術課題をこれからのモビリティ社会で解決することにつなげてまいりたいと思っております。

さて本日は、カーボンニュートラルについていま私たちが考えていることを申し上げたいと思います。

今年11月にはCOP26もあり、各国の代表者からはこれまで様々な目標が提示され、その実現策として、出口であるクルマの選択肢を狭める動きも出てまいりました。カーボンニュートラルにおいて、私たちの敵は「炭素」であり、「内燃機関」ではありません。炭素を減らすためには、その国や地域の事情に見合ったプラクティカルでサステナブルな取り組みが必要だと思います。そして、目標を掲げること以上に、目標に向かって行動することが大切だと思っております。

自工会においては、電動車フルラインナップという日本の強みを生かしてカーボンニュートラルに貢献するために、各社の得意分野に応じてタスクフォースを組みながら、課題の洗い出しや関係省庁を巻き込んだ議論を進めてまいりました。各企業でも、新たなパートナーシップや実装実験を通じて、「技術の選択肢を広げる」動きが加速しております。

日本の自動車産業はいち早く電動車の普及に取り組み、この20年で23%という、国際的に見て極めて高いレベルでCO2を削減してまいりました。この先の数年間やるべきことは、これまで積み上げてきた技術的なアドバンテージを生かし、今ある電動車を使って足元でCO2を最大限減らしていくことだと思っております。


そこで自動車が余力を稼ぐことができれば、他産業における技術革新に向けた時間や投資に回すこともできると思います。
その中で、日本の事情に合った選択肢を模索していくことが、プラクティカルで、日本らしいアプローチだと考えております。

これまで申し上げてきましたとおり、輸出で成り立っている日本にとって、カーボンニュートラルは雇用問題でもあるということを忘れてはいけないと思います。私たちが、必死になって「選択肢を広げよう」と動き続けているのは、自動車産業550万人の雇用、ひいては日本国民の仕事と命を背負っているからです。

これから総裁選も始まります。一部の政治家からは、「すべてを電気自動車にすれば良いんだ」とか、「製造業は時代遅れだ」という声を聞くこともありますが、私は、それは違うと思います。「今の延長線上に未来はない」と切り捨てることは簡単です。でも、日本の人々の仕事と命を守るためには、先人たち、そして、今を生きている私たちの努力を未来につなげること、「これまでの延長線上に未来を持ってくる努力」も必要だと思っております。それが、日本を支え続けてきた基幹産業としての私たちの役割であり、責任です。

いま、私が実感しておりますのは、多くの産業と関わり、人々の生活と密着したクルマというリアルなモノがあるからこそ自動車産業を軸にすると、カーボンニュートラルにおいても納期と課題がわかりやすくなるということです。納期と課題が明確になれば、色々な行動につながってまいります。

そこで来月には、カーボンニュートラルの出発点であるエネルギーについて、「プラクティカル&サステナブル」の観点で、自動車産業を軸にした課題を提示させていただく予定です。そして、自動車産業の「つくる」「運ぶ」「使う」の各ステップにおいて行動を起こすことにつなげたいと思っております。

カーボンニュートラルのペースメーカーとして、日本の基幹産業として、自動車産業は今後とも行動し続けてまいりますので、ご支援いただけますと幸いです。