歴代のグッドデザイン賞受賞モデルを振り返る

日本デザイン振興会は「2023年度グッドデザイン賞」を10月5日(木)に発表します。デザインによって暮らしや社会をより良くするという目的で毎年実施しているもので、25日(水)には、最も優れたデザインに贈られる「グッドデザイン大賞」が決まります。60年以上の歴史があるグッドデザイン賞は、これまでに二輪車や乗用車も数多く受賞してきました。過去の受賞モデルを振り返ってみましょう。

グッドデザイン賞の始まりは、1957年に通商産業省(現経済産業省)の主催で始まった「グッドデザイン商品選定制度(通称Gマーク制度)」です。シンボルマークの「Gマーク」とともに広く親しまれてきました。例年、4月に応募受付が始まり、一次審査、二次審査を経て、10月に各賞が決まります。審査対象は製品だけでなく、建築、ソフトウエア、システム、サービスなど、幅広い分野にわたって、「よいデザイン」を顕彰しています。

賞が創設された翌年の58年度、二輪車で初めて受賞したのがヤマハ発動機の「YA-2」(57年発売)でした。ヤマハの製品第1号となった「YA-1」(55年発売)の後継モデルで、エンジンの馬力をアップして新設計のフレームに搭載。フロントフォークやリアサスペンションも変更し、イメージを一新しました。その軽快さと力強さを兼ね備えた独自のスタイリングが高く評価され、モーターサイクルとして初めての受賞となりました。

ヤマハ発動機「YA-2」

1年に一つだけ選ばれる大賞を乗用車で最初に受賞したのは本田技研工業の「シビック 3ドアハッチバック25i」(83年発売、3代目)で、1984年度のことでした。3代目シビックは、居住性や走りを最大限に追求しながら、エンジンやサスペンションなどのメカニズム部分は小型・高密度で高性能な設計にするホンダの「ММ(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想」を基に開発されたものです。中でも3ドアハッチバック車は、空力性能に優れた斬新なロングルーフデザインにより、居住スペースを大幅に拡大しました。

本田技研工業「シビック 3ドアハッチバック25i」

その4年後の88年度には、日産自動車の「シルビアQ’s」(88年発売)が大賞に輝きました。「若い男女のカーライフをお洒落に演出する」というコンセプトで開発されたこの車は、曲面と曲線で構成された流麗なデザインが特徴です。フロントグリル部分に透明な樹脂を採用し、左右のヘッドランプに連続性を持たせたフロントデザインも独特でした。運転する楽しさも追求し、新しいトレンドを示すスペシャルティーカーとして評価されました。

日産自動車「シルビアQ‘s」

環境志向の高まりを背景に、2003年度にはトヨタ自動車の「プリウス」(03年発売、2代目)が大賞に選ばれました。前モデルの実験車的なイメージを完全に払拭し、エクステリア・インテリアからハイブリッドカーとしての雰囲気が十分に感じられる点が評価されました。またバッテリーのレイアウトによるユーティリティースペースの拡張やインテリジェントキーシステムなどの新機能など、先進技術をデザインに反映されており、全体として好感が持てる製品に仕上がっていることも高評価でした。

トヨタ自動車「プリウス」

新しい時代を切り開く革新的スモールとして開発された三菱自動車工業の「i(アイ)」(06年発売)は、06年度に軽自動車として初めて大賞を受賞しました。軽自動車の課題だった「デザインと居住性」「居住性と衝突安全性能」という二律背反のテーマを克服しようと、エンジンを後輪車軸の前に配置するユニークな設計を採用。これにより、未来的で上質なスタイリング、軽快なハンドリングと快適な乗り心地、全方位からの優れた衝突安全性能を実現しました。

三菱自動車工業「i」

今回、紹介した以外にも、数多くの個性的なクルマがグッドデザイン賞各賞を受賞してきました。今年はどのクルマが選ばれるのか、予想してみると楽しいのではないでしょうか。

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