クルマの使われ方4

コロナで変わる?クルマの使われ方

単なるモビリティではない、新たなクルマの価値とは

自工会広報誌「JAMAGAZINE」9月号より

クルマの使われ方(ワ―ケーション)

リモートワークの普及で好きな場所で働くことも可能に

新型コロナウイルスの感染拡大以降、人々の移動やライフスタイルに対する意識が大きく変化しています。これに伴いクルマに対する価値にも変化が生じています。モビリティという移動手段だけでなく、プライベートな空間の提供や、生活を豊かにするアイテムとして、その価値が見直されています。さらにはコロナ禍で過熱するアウトドアブームでもクルマはなくてはならないツールとして存在感を高めています。移動だけではない、コロナ禍における新しいクルマの使われ方を探ります。

 

3密回避で見直されたクルマの魅力

 新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の生活は大きく変化するとともに、社会活動にもさまざまな制約が生まれました。「密閉」「密集」「密接」のいわゆる「3密」を避けるため、リモートワークの導入や公共交通機関の利用自粛のほか、趣味の旅行や、仲間との楽しい会食も遠慮せざるを得ない状況です。
 その中で大きな注目を集めているのがクルマです。感染リスクの低い移動手段として、時間や場所を選ばず自由に移動できる第2のプライベート空間として。求められるニーズは人によってさまざまですが、コロナ禍でクルマに対する価値が多様化しているのは間違いありません。
 実際にコロナ禍以降、クルマの利用に対するニーズは高まっています。交通エコロジー・モビリティ財団(岩村敬会長)がまとめたカーシェアリング市場に関する調査によると、カーシェアのステーション数や利用数は、コロナ禍の移動自粛やテレワークの実施により減少したものの、カーシェア各社の会員数は増加傾向が続いています。また、カーシェア最大手のパーク24もコロナ禍以降、移動自粛によって当初はカーシェアの利用が落ち込んだものの、3密回避の移動手段としての需要が高まり、2020年夏以降は前年実績を上回る台当たり売上高を維持しています。

移動自粛で利用が減ったカーシェアも3密回避で需要が回復している

 

プライベートオフィスでも

 昨年のコロナ感染拡大以降、新しい働き方としてリモートワークの定着が進んでいます。ただ、特に都心部では居住空間などの理由により、自宅では快適に仕事をこなす環境を整えるのが難しいという人も少なくないのが実情です。そこでプライベート空間として注目を集めているのがクルマです。
 リモートワークに欠かせないのがノートパソコンなどのモバイル端末ですが、現代のクルマはハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)など電動車を中心に給電機能を搭載しているケースも多く、まさにクルマはリモートワークの空間にうってつけとも言えます。充電ニーズの高まりを受けて、自動車メーカー各社では給電機能の採用を積極化しており、例えばトヨタ自動車は新型「アクア」にAC100ボルト最大1500ワットのアクセサリーコンセントを標準装備しています。
 さらに会議などのオフィス空間としてクルマを活用する動きも進んでいます。日産自動車、ソフトバンク、ゼンリン、大日本印刷、クワハラの5社は、クルマでの移動中にWEB会議ができる「移動会議室」の実証実験を開始しました。大型ミニバン「エルグランド」で移動しながら打ち合わせなどができるように、車両内装や通信環境、運行サービスなどの環境を整備。コロナ禍における移動時間の有効活用という新たなニーズを探っています。
 また、プライベートオフィスとしての利用も可能という観点から、キャンピングカーに対する関心も高まっています。中でも取り回しの良さや手頃な価格帯から、軽自動車をベースとしたキャンピンクカーが人気を集めています。今年4月に幕張メッセで開催された国内最大規模のキャンピングカーショー「ジャパンキャンピングカーショー2021」でも、オフィスカーとしての法人需要から、初めてのマイカーとして購入を検討する若年層まで、さまざまな来場者から注目を集めていました。

 

多様化するキャンプニーズ

 感染拡大により行動制限が余儀なくされたことで、ライフスタイルも大きく変化しました。これまでの旅行やテーマパーク、ショッピング、映画鑑賞、会食といった休日の過ごし方も様変わりし、いかに感染リスクを抑制して休日を楽しめるかが求められています。
 その中で近年急速に人気が高まっているのがキャンプなどのアウトドアライフです。制約の多いコロナ禍において、密を避けながら自然を満喫して非日常を楽しめることがキャンプブームの背景にあります。場所も設備が整った本格的なキャンプ場や海岸沿い、河原などの遠方から、河川敷や公園といった近場でも気軽に楽しむことが可能です。また、旅行に比べて費用が抑えられ、手軽に楽しめる車中泊も人気を集めています。このため週末になると小さい子ども連れのファミリーから、仲間同士の若者、一人で気ままにのんびりと寛ぐ方まで、多くの人がそれぞれの楽しみ方でアウトドアライフを過ごしている光景を見かけます。
 同時にキャンプに欠かせないのが、場所や時間、荷物を気にせず行動範囲を広げることができるクルマです。折しも自動車業界ではSUVブームに沸いており、加えて元々日本では実用性の高いミニバンが普及していることも、アウトドア人気を加速させている要因といえます。
 アウトドア人口の増加に伴い、キャンプでの過ごし方も多様化しています。従来のキャンプといえばサーフィンや釣りといった屋外スポーツや、火を焚いて料理を楽しむといったことが定番でした。ところが近年では、大自然の中で音楽や映画鑑賞、動画や通信ゲームを楽しむなど、たとえキャンプといえども屋内外での過ごし方に垣根はありません。このためモバイル電源を用意する利用者も増加しています。

クルマの使われ方4

カー用品もキャンプ関連グッズの売れ行きが好調

 このような新しい楽しみ方でもクルマは活躍する場面が増えそうです。EVやPHV、HVに搭載している外部給電機能を活用すれば、これまで以上にアウトドアの楽しみ方を広げることが可能となります。欧米で普及しているような本格的なキャンピングカーでなくともキャンプライフを豊かにできることも、電動車の魅力の一つと言えそうです。

キャンプ場ではルールを守ってください。またキャンプ場外では各自治体の条例を守り、環境汚染や他者の迷惑になる行為は絶対にやめましょう。

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