世界の社食から ①スズキ

グローバルに活動する日本の自動車メーカー。国内のオフィス・工場でもさまざまな国の人々が行き来し、従事し、そしてランチを食べます。そうした国際色豊かな集いの場である「社食」(社員食堂)を訪問する新企画。第1弾は、スズキ本社の社食です。

―社食に込めたこだわりはありますか

「メインコンセプトは『明るい食堂』です。現在の社員食堂は、2016年に新築した建屋にオープンしました。それまでの本社食堂は体育館のような、ややもすると殺風景なものでしたが、刷新後は採光に優れ、開放感のある空間となりました。以後もよりよい食堂づくりを目指してリニューアルを重ねており、コロナ禍を経た2024年1月には什器を大幅に入れ替え、コミュニケーションエリアや一人でも食事に集中できるエリア、立食エリアなどを設け、個々の食事スタイルに合わせたより利用しやすい社食に生まれ変わりました。」

「明るい食堂」に生まれ変わり利用しやすくなった

―進化を重ねる中で、利用の仕方に変化はありますか

「ランチタイムはもちろんですが、食事時間外の利用も活発になっています。今では会議や社内外の方との打ち合わせなどに使えるオープンスペースとして、一日を通して多くの人が訪れる場所になりました。実際に、『コーヒーを飲みながら部下や後輩と気軽に面談できる』などの声もあります。これまでにない交流の機会が、社食から生まれていると実感しています」

―歴代の経営トップと社食の関わりを感じるエピソードなどはありますか

「元相談役の鈴木修氏(故人)や現社長の鈴木俊宏をはじめ、誰もが自然体で社食を利用しているところにスズキらしさがあるのだと思います。経営トップと現場で働く一人ひとりの社員が隣り合い、食事を通じて気軽にコミュニケーションをとるスタイルが、今なお受け継がれています。2016年の現食堂のオープン以来、誰もが感想を書き込めるメッセージボードを入り口に設置しているのですが、人気メニューへのコメントや改善の要望など、リアルタイムで寄せられる忌憚のない意見を社長も楽しみに見ているようです」

―メニューづくりでの取り組みも教えてください

「多様な利用者に配慮した豊富なメニューが一番のポイントです。とりわけ当社と関わりの深いインドの伝統料理は、30年以上にわたって提供を続けている名物メニューです。また、地域の事業者とも協力しながら、菜食主義者(ベジタリアン)向けメニューなども日々考案しています。他にも、インドのお祭りで親しまれているメニューを提供したり、関係会社のある秋田県にちなんだ『秋田フェア』を実施したりと、さまざまな企画を通じて地域や季節ごとの食文化の発信も図っています。今年の1月からは、食材のアレルゲン情報を社内ネットワークで閲覧できるようにするなどの取り組みも実施しています」

国際色豊かなメニューから自分に合った食事ができる

―最近では〝健康食〟にも力を入れていると聞きます

「今年の2月に、健康経営の一環として『スマートミール』という取り組みを全事業所で始めました。食こそが一人ひとりの健康の根幹であり、ひいては経営の安定につながるとの考え方に基づき、栄養バランスや塩分摂取量、ボリュームなどを厳密に管理したメニューを提供しています。もちろん、味や見栄えにも妥協はありません。毎月の給食会議を通じて、外部の専門家や給食事業者の協力も仰ぎながら、『気付けば健康食を楽しんでいる』と思ってもらえるようなメニューを開発しています。まだ始まったばかりの取り組みですが、早くも『健康診断の数値が改善した』『社食以外での食事にも気を遣うようになった』といった声が上がっています。従来のメニューも継続提供しつつ、こうした新たな選択肢を浸透させていければと思います」

―昨今の原材料高などを受け、メニューづくりには苦労もあるのでは

「確かに悩ましいポイントです。省エネや人員の最適配置、食材の工夫などには継続して取り組んでいますが、何より重要なのはフードロスの削減です。この一環として、従業員の入館データを基に、想定利用人数を食堂に共有する仕組みを導入しています。契機となったのはコロナ禍でした。出社人数が減少し、日々の提供食数を見通すのが難しくなった教訓から、需要を高精度に割り出せるシステムを構築しました。この仕組みが、今もフードロス削減の役に立っています」

―さらなる利用活発化に向けた今後のビジョンを教えてください

「グローバルな食文化に寄り添うこと、一人ひとりの健康を支えること、食事を通してワイワイと交流できること、この3つがスズキの社食の柱です。グローバル対応や健康食の取り組みは着実に進んでいますが、シフトや座席数の制約もあり、交流空間としての食堂づくりは道半ばだと実感しています。フロアの最適配置なども検討しながら、誰もがゆったりと食事を楽しみ、気軽に交流できる社食を目指していきたいと考えています」

関連リンク

スズキ株式会社

2024/03/21 多様性が強み!外国人も働きやすいモビリティ産業 – JAMA BLOG 一般社団法人日本自動車工業会

アーカイブ-JAMAブログ 社名の由来