- 2022/04/27
- JAMAGAZINE, モータースポーツ, レース
日本のモータースポーツ最新事情 カーボンニュートラルとファンづくりへの道 ①「スーパーフォーミュラ」
長年にわたり自動車技術の進化を支え、クルマの楽しさや魅力を発信し続けているのがモータースポーツです。日本でも市販車に近い見た目のツーリングカーから、レースでタイムを競うために生まれたフォーミュラカーなど、さまざまなカテゴリーのレースが展開されています。近年は自動車の技術革新を牽引する役割を担うモータースポーツにおいても、カーボンニュートラルに向けた活動が本格化しています。「スーパーフォーミュラ」「スーパーGT」「スーパー耐久」を例に、新技術やファンづくりの取り組みなどモータースポーツの最前線を探っていきます。
国内最高峰のフォーミュラカーレース「スーパーフォーミュラ(SF)」が、持続可能なモータースポーツ業界の構築に向けた新プロジェクト「スーパーフォーミュラネクスト50(ゴー)」を2022年シーズンからスタートさせました。カーボンニュートラルの実現に向けた技術開発の場として活用することなどを柱に掲げ、環境に配慮した材料をボディやタイヤ、燃料に活用するための開発テストを行います。新たなファン作りに向けたデジタル戦略も進める計画で、国内トップフォーミュラの大改革が始まります。
SFは世界最高峰のF1にステップアップするための登竜門にもなります。そのルーツは1973からスタートした「全日本F2000選手権」にさかのぼり、1978年~のF2、1987年~のF3000、1996年~のフォーミュラ・ニッポンを経て2013年から現在のSFの大会名称で開催されれており、運営は日本レースプロモーション(JRP、上野禎久社長、東京都千代田区)が担います。
SFでは、海外製のシャシーに日本製のエンジンとタイヤを組み合わせたマシンを使います。現在はイタリアのダラーラがシャシーを製作。トヨタとホンダの2社がエンジンを供給し、横浜ゴムがタイヤのワンメイクサプライヤーとなっています。
今シーズンは12チーム21台が参戦します。レギュレーション(規則)の大きな変更はありませんが、ネクスト50プロジェクトのスタートが最も大きなトピックとなります。
ネクスト50プロジェクトは、モータースポーツを取り巻く環境が大きな変化を遂げていることに対応する取り組みです。50年の歴史をもつ国内トップフォーミュラレースですが、カーボンニュートラルへの対応や新たな顧客層の開拓を進めなければ、持続的なレース開催に赤信号が灯りかねないとの危機感があります。次の50年もSFが社会と共存し続けるための一大改革と言えるのです。
JRPの上野社長は「我々はカーボン素材を多用し、化石燃料を燃やしCO2を出すスポーツとしてこの問題をスルーできない。難しい課題をクリアすることが業界にとっていい影響を与えられる」と見ています。
JRPはネクスト50プロジェクトで、22年以降のSFを「モビリティとエンターテインメントの技術開発の実験場」と位置付けました。
さまざまな開発段階の技術を搭載したテスト車両を走らせ、パワートレインやシャシー、タイヤ、素材、燃料など次世代技術の開発を進める計画です。
まずは、原材料に化石成分を一切使用しないカーボンニュートラル燃料やバイオコンポジットと呼ばれる植物由来の天然素材の導入をめざします。
同時に、横浜ゴムが植物由来の配合剤や廃タイヤから再生したゴムなどサステナブル素材を採用したレーシングタイヤを開発します。23年シーズンの実践投入に向けてテストを行い、25年にはグリップ性能を犠牲にすることなく、サステナブル素材を35%以上使用したタイヤの供給を目指す考えです。
JRPの上野社長は「パフォーマンスを落とさず課題をクリアする」ことをサプライヤーに求めています。モータースポーツは技術開発の場であると同時にエンターテインメントの場でもあり、抜きつ抜かれつのバトルがなくなっては本末転倒。脱炭素との両立を進めます。
SFの魅力を世界中のファンに届けるデジタル戦略も強化します。新たなデジタルプラットフォーム「SFgo(エスエフゴー)」を立ち上げ、レースのライブ中継だけでなく、オンボード映像や無線交信、各種車両データなども公開し、デジタル社会にマッチした新しいモータースポーツ体験を提供していく予定となっています。
「ドライバーファーストのコンセプトに基づいてドライバーの凄さを伝える。そのために必要なのがデジタルシフト。デジタルの力を借りて全ドライバーのドラマを伝えたい」と上野社長は意気込みます。
今シーズンは改革元年を象徴する取り組みの1つとして、全7大会中3大会で「1ウイーク2レース制」が導入されます。通常は土曜日に予選、日曜日に決勝レースが行われますが、両日とも決勝レースが開催されるのが特徴です。ファンにとってはサーキットに足を運びたくなる取り組みといえそうです。
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