- 2022/06/21
- JAMAGAZINE, トラック, 二輪車
CASE時代に挑む自動車メーカーのEV戦略:商用車・二輪車編
環境規制への対応や世界的な電気自動車(EV)市場の拡大を受けて、自工会会員各社ではEVの取り組みを加速しています。中でも商用車や二輪車は、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)経営の観点から、EVに対する法人の導入意欲が高まっています。このような中で2022年は国内商用車メーカーの小型商用EVが出揃う見込みです。二輪車業界でも各社が新型EVバイクの発売を予定しているほか、標準化したEVバイク用交換バッテリーの会社を設立するなど、話題が絶えない状況となっています。
物流業界では、脱炭素化を進める荷主側が、配送におけるCO2排出量削減に強い関心を示していることもあり、商用EVへの関心が急速に高まっています。ただ、乗用車に比べて走行距離が長い商用車では1充電当たりの航続距離も課題といえます。
その一方で、宅配便など市街地の小口配送では、一回の使用での走行距離が短く、EVでカバーできる使用環境も少なくありません。このため市街地利用に適した小型商用車の分野でEVに対する需要が高まっています。これを受けて他社に先駆けて小型EVトラックを市場投入したのが三菱ふそうトラック・バスです。2017年に小型EVトラック「eキャンター」を発売。2022年内にはeキャンターの次世代モデルを発表する予定です。また、2022年度はいすゞ自動車と日野自動車も小型EVトラックの市場投入を計画しています。
トラック同様にバスにおいてもEV化の流れが広がっています。中でも決められたルートを走行する路線バスはEVとの親和性が高く、旅客事業者から注目を集めています。これを受けていすゞと日野の合弁会社ジェイ・バスが2024年度からEV路線バスを生産する予定です。この路線バスをベースにいすゞ、日野、トヨタの3社でFCVバスを開発することも検討されています。
一方、二輪車業界では2021年3月、ホンダ、ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業(現カワサキモータース)の4社が、共通利用できる交換式バッテリーとバッテリー交換システムの仕様統一で合意しました。さらに2022年4月にはホンダ、ヤマハ発、スズキ、カワサキモータース、ENEOSホールディングスの5社で、EVバイク用交換バッテリーのシェアリングサービスとインフラ整備を手掛ける新会社「Gachaco(ガチャコ)」を設立しています。新会社では2022年度内に200台相当のEVバイクに対応するステーションが首都圏に設けられる予定となっています。共通規格の交換バッテリーのネットワーク拡大により、EVバイクの普及も大きく進むことが見込まれています。
また、自工会でもEVバイク普及に向けた取り組みを進めています。2020年9月から大阪府と大阪大学と共同でバッテリー交換式EVバイクを活用した実証実験「e(ええ)やんOSAKA」を開始しました。大阪大学の学生と教職員を対象に貸し出し、キャンパス内や周辺の提携するコンビニエンスストアに交換式バッテリーを設置することで、街中でのバッテリー交換の有効性などを検証しています。
EVバイクは、ホンダが2020年から交換式バッテリーを採用した「ホンダe:ビジネスバイク」を3車種投入するなど、集配事業者をはじめとする法人需要がこれまで中心となっていました。その中で、ヤマハ発は2022年7月から125cc級EVスクーターの実証実験でのリース販売を計画するほか、カワサキモータースもスポーツタイプのEVバイクを2022年に投入する計画など、今後はビジネス用途だけでなく走りを楽しむEVバイクの種類も広がりそうです。