自動車産業の歴史を紐解く「クルマづくり日本史」がトヨタ博物館にオープン

トヨタ博物館に4月、自動車産業の歴史を紹介する常設展示「クルマづくり日本史」コーナーがオープンしました。展示のテーマは「日本の自動車産業はいかに生まれたか」。日本人が初めて自動車を目にしてから、自動車産業が国の基幹産業となるまで約70年の歴史を多彩なビジュアルで紹介しています。自動車産業の歴史を知り、これからを考える機会に大きなヒントとなる展示であり、自動車メーカー各社や自工会が監修や資料提供などで協力し、史実に忠実で中立性の高い、他に類を見ない出展内容となっています。

愛知県長久手市にあるトヨタ博物館は、トヨタ自動車の創立50周年事業として1989年4月に開館しました。「皆さまとともに自動車の歴史を学び、人と車の豊かな未来のために博物館をつくりました」と当時自工会会長を務めた豊田章一郎氏は語っています。

そんなトヨタ博物館のクルマ館2階に「クルマづくり日本史」コーナーがオープンしました。展示を企画したトヨタ自動車学芸グループの鳥居十和樹担当課長は、企画を立ち上げたきっかけとして、来館されるお客さまから「日本の自動車産業がどう出来上がったのか、なぜここまで大きくなったのか」と問われるケースが増えてきたことを挙げています。さらに自動車業界が「100年に一度の変革期」にあることも重なり、これまでを振り返る絶好のタイミングとして構想に着手、以来足掛け4年をかけて制作してきたということです。

展示エリアにはメーカーを問わず歴史的価値の高い車両がずらりと並ぶ

展示コーナーは「ヒストリーロード」、「物語」、「人物」、「系譜」、「数字」の5つに分かれています。ひときわ目を惹くのは、中央の「ヒストリーロード」です。動く年表に約200の史実が投影され、とくに重要なトピックスは大きく表示、クルマづくりの歴史をビジュアルで体感できます。

4つの短編動画で自動車産業の歴史を振り返る「物語」エリア

「人物」のコーナーはタッチパネルで操作できます。日産コンツェルン創設者の鮎川義介氏とトヨタ自動車創業者豊田喜一郎氏の経営姿勢が対比されていたり、鈴木道雄氏(スズキ)、松田恒次氏(マツダ)、本田宗一郎氏(ホンダ)のプロフィールが紹介されるなど、自動車産業の発展に貢献した人物への理解を深めることができます。

国内自動車メーカーの始まりから現在までを示した壮大な「系譜」

企画の進行にあたっては、同博物館と凸版印刷がタッグを組み、自動車メーカー各社や関連企業、自工会が史実の確認や資料提供などで協力。構想段階から国立科学博物館のアドバイスを受けるなど、多くの企業や団体との連携がありました。「メーカーの社史の集合体にするのではなく、産業の足跡を客観的に俯瞰することを心掛けた」と鳥居氏が語る通り、自動車メーカーの歴史だけにとどまらず、国の産業政策が自動車産業に与えた効果などについても広く解説されています。

トヨタ自動車学芸グループの鳥居十和樹担当課長

「産業史を知ることで、館内に展示されている日本車1台1台の生まれてきた背景を理解することができ、より深くクルマを楽しんでいただける」と鳥居氏。何よりも自動車業界で働く550万人にとって、「日々の業務に取り組む活力になれば」とエールを送ってくださいました。