FSWに「富士モータースポーツミュージアム」がオープン

静岡県小山町の富士スピードウェイ(FSW) に10月7日、「富士モータースポーツミュージアム」が開館しました。施設のコンセプトは、「モータースポーツがクルマを鍛え、進化させた熱い歴史をたどる」というものです。クルマづくりにモータースポーツが果たしてきた役割を紹介する展示施設となっており、トヨタ博物館の監修と国内外の自動車メーカーの連携により、約40台の貴重な車両の展示が実現しました。

富士モータースポーツミュージアムの館長を務める布垣直昭氏は、「モータースポーツの展示施設を望む声はこれまでにも多くいただいていた」といいます。一方で富士スピードウェイに宿泊施設を望む声も多く、富士スピードウェイホテルの開業にあわせてホテルの1階、2階に展示施設を設けることになったのです。

展示エリアは15に分かれており、1番の「モータースポーツのはじまり」から15番の「これからのモビリティとモータースポーツ」まで、車両やパーツ、関連資料を順にたどることができます。人物に焦点を当てたコーナーもあり、本田宗一郎氏の人物紹介パネルの傍には、ホンダにF1初勝利をもたらした「ホンダRA272」などが展示されています。

世界で活躍した国産ラリーカーが勢ぞろい

展示車両は、ラリーやF1、ル・マン、NASCARなど、さまざまなレースカテゴリーの参戦車両から厳選しており、世界のモータースポーツ史に歴史を刻んだ日本車が堪能できます。メーカー各社がモータースポーツへの参戦で磨いてきた性能や耐久性、信頼性など、現在のクルマにも続く日本車の軌跡が示されています。さらには近年のカーボンニュートラルへの取り組みなど、最新のモータースポーツについても知ることができます。

ル・マン24時間レース日本車初優勝の「マツダ787B」(左)

同施設の展示は日本車だけではありません。4台しか製造されていないという1920年代の「サンビーム・グランプリ」や、ポルシェが1963年から製作を開始したレース用スポーツカー「ポルシェ904カレラGTS」など、海外の貴重な車両が並んでいるのも見どころです。

「サンビーム・グランプリ」(手前)など貴重な車両が集結

「モータースポーツの展示施設は、メーカーごとに設立されたものや個人のコレクターによるものが多く、世界のメーカーを広く扱った施設はほかに存在しない」と布垣館長。「1点もの」であるレース車両を集めるのは困難を極めたといいますが、施設のコンセプトに自動車メーカー各社が賛同したからこそ、レースでしのぎを削ったライバル車両が一堂に会した貴重な展示空間が生まれました。

施設の3階にはカフェがあり、窓からサーキットを眺めながら一息つくこともできます。「今後は、サーキットに隣接する施設だからこそできるイベントなども検討していきたい」と布垣館長。FSWのコースをミュージアムの展示車両が走行する光景を眺められる日も、遠くないかもしれません。

布垣直昭館長

*展示内容は2022年10月現在のものです。