自工会と石連がタッグ。カーボンニュートラル実現へ燃料を進化させる「AOI」プロジェクト

二酸化炭素(CO2)の排出量削減に対する社会からの要請が強くなる中で、クルマと燃料にはさらなる進化が求められています。そのためには、クルマと燃料の研究開発は両輪で進めなければいけません。内燃機関が進化すればそれに最適な燃料を、燃料が変わればそれに最適な内燃機関を開発しなければ、進化による効果を正しく得られないためです。こうした中、自動車業界と石油業界では将来を見据えた燃料の共同研究を進めています。

2020年4月に自工会石油連盟(石連)が開始したプロジェクトが「AOI(オートモービル&オイルイノベーション)」です。両業界の共同研究は1997年から2019年度まで「JCAP」「JATOP」「J-MAP」と名称や目的を変えながら行われてきましたが、これまでと異なる点は「足元の規制対応ではなく、50年のカーボンニュートラル達成につなげるための将来を見据えた研究であること」(石連 技術委員会燃料技術専門委員会 菅野秀昭委員長=ENEOS)です。また、従来は経済産業省の補助事業として共同研究を進めてきましたが、AOIでは根本的に燃焼時の着火や拡散といった現象をゼロベースで検証していくために、業界独自の事業として進めているのが特徴です。

AOIで掲げる目標は将来の内燃機関に最適な液体燃料を30年頃までに実用化し、CO2排出量を削減することです。カーボンニュートラル燃料として合成燃料やバイオ燃料などへの注目が高まっているものの、いずれもコストや供給量などの課題があるのが現状です。このため、燃料組成の最適解を探求し、カーボンニュートラル燃料が普及するまでのCO2排出量のベースラインを下げるとともに、カーボンニュートラル燃料にも応用することで、その必要量を減らす考えです。

具体的な研究テーマの一つが、ガソリンエンジンにおけるスーパーリーンバーン環境に最適化した液体燃料です。空気と燃料を14.7対1の割合で混合する通常の理論空燃比(ストイキオメトリー)に対し、空気の割合を2~3倍ほどに増やした状態を指すスーパーリーンバーンは、燃料を減らして同等の仕事量を得ることで燃費を向上させる技術として期待されますが、燃焼が不安定になるという課題もあります。

そこで重要になるのが燃料の進化です。現在は基礎研究のフェーズにありますが、オレフィンやパラフィン、アロマ(芳香族)など液体燃料の組成の中から燃えやすい組み合わせを模索しています。スーパーリーンバーンは自動車メーカー全社が採用を決めている技術ではないものの、燃料希薄環境下での燃焼に適する燃料の開発は「どのような燃焼方式にも効果的」(自工会 燃料・潤滑油部会 菊池勉副部会長=日産)といいます。

自工会では、再生可能エネルギーの供給量確保などの課題を踏まえ、内燃機関を含めた複数のパワートレインを残す重要性を訴えています。一方、石油業界ではエネルギーレジリエンス(強靭性)の観点などで液体燃料をエネルギー源の選択肢として残す必要性を訴求しています。

とはいえ、カーボンニュートラルの時代に内燃機関や液体燃料を存続させるための課題は決して小さくありません。自動車メーカーでも次世代燃料の研究や予測は行っているものの、「(石油業界と)一緒にやらなければ成果は出ない」(自工会 燃料・潤滑油部会 林倫部会長=トヨタ)といいます。

AOIプロジェクトのメンバー(左から自工会 林氏、菊池氏、石連 菅野氏、貝瀬氏=石連事務局)

AOIプロジェクトでは20年度から22年度までを基礎研究フェーズとしており、23年度からはその成果を踏まえ、市場導入に向けた実証フェーズに移行する計画です。自工会と石連は、今後も協力関係を深めて、カーボンニュートラルに向けた研究をより強力に推進していきます。