日本に帰ってきた世界最高峰のモータースポーツ

新型コロナウイルスの感染拡大はレースシーンにも様々な影響を及ぼしました。特に日本では厳しい入国制限により世界選手権の開催が見送られていましたが、ようやく日本にも帰ってきました。世界耐久選手権(WEC)MotoGPフォーミュラ1(F1)と日本で立て続けに開催された世界最高峰のレースでは、日系メーカーも活躍。日本のモータースポーツファンも大いに盛り上がりました。さらに11月には12年ぶりとなる悲願の世界ラリー選手権(WRC)ラリージャパン」も開催。モータースポーツファンの盛り上がりも最高潮に達しそうです。

日本で開催した世界選手権として先陣を切ったのが、9月11日に富士スピードウェイ(FSW)で開催されたWEC第5戦の「富士6時間耐久レース」。日本での開催は3年ぶりで、WECではアジア唯一のレースとなりました。決勝当日は晴天にも恵まれ、FSWには24,500人が詰め掛けました。

日本で3年ぶりに開催したWEC「富士6時間耐久レース」

WECには、トヨタ自動車TOYOTA GAZOO Racing(TGR)チームが最高峰のハイパーカークラスに「GR010ハイブリッド」2台で参戦しています。第5戦は、序盤からTGRの2台がレースをリードし、セバスチャン・ブエミ選手、ブレンドン・ハートレー選手、平川亮選手が駆る8号車が、232周を走り切りトップでチェッカーを受けました。マイク・コンウェイ選手、小林可夢偉選手、ホセ・マリア・ロペス選手の7号車も2位となり、トヨタ勢がホームサーキットでワンツーフィニッシュを飾りました。8号車の優勝は第3戦のル・マン24時間に次いで今季2勝目となりました。

優勝した「GR010ハイブリッド」8号車

母国での勝利に、チームオーナーであるトヨタの豊田章男社長は「FSWではファンの皆さまがわれわれに『おかえり』と声援を送ってくれた。その沢山の応援にワンツーフィニッシュで『ただいま』と応えられて本当に良かった」とコメントしました。

9月はバイクも盛り上がりました。二輪車ロードレースの最高峰MotoGPの第16戦「MOTUL日本グランプリ」の決勝が25日にモビリティリゾートもてぎで開催されました。MotoGPもコロナ禍の影響により、3年ぶりの日本開催となりました。

モンスターエナジー・ヤマハのファビオ・クアルタラロ選手(右)

レース会場には、日本での開催を待ち望んだMotoGPファンが駆け付けました。24日の予選会はゲリラ雷雨に見舞われましたが、25日の決勝は快晴。3日間の来場者数は延べ57,482人に達しました。
MotoGPも、本田技研工業スズキヤマハ発動機の日本メーカーが参戦しています。このうち、スズキは2022年シーズンで撤退を表明しており、日本でのレースは今回が最後となりました。決勝は、Ducati Lenovo Teamのジャック・ミラー選手が優勝しました。日本勢では、Repsol Honda Teamのマルク・マルケス選手が4位に入賞。Monster Energy Yamaha MotoGPのファビオ・クアルタラロ選手は8位を獲得しました。Team SUZUKI ECSTARのアレックス・リンス選手と津田拓也選手は、マシンのトラブルに見舞われ完走することができず、悔しさが残る日本での最後のレースとなりました。

日本開催では最後のレースとなったスズキ

10月にはF1も開催されました。鈴鹿サーキットで開かれた F1世界選手権シリーズ第18戦「Honda日本グランプリ」には7~9日の3日間で、延べ20万人が来場しました。決勝の9日は天候に恵まれなかったものの、3年ぶりの開催とあって会場は熱気に包まれました。

決勝戦当日は多くのF1ファンが詰め掛けた

日本のレースファンが見守る中、特に注目を集めたドライバーは、ホンダも支援するOracle Red Bull Racingのマックス・フェルスタッペン選手と、Scuderia AlphaTauri所属の日本人ドライバー角田裕毅選手です。レースは大雨で2時間超にわたって中断されるなど大混乱の展開でしたが、ランキング首位のフェルスタッペン選手が2位に約27秒の大差をつけて勝利。日本のファンの前で年間チャンピオンに輝きました。一方、初の凱旋走行となった角田選手は残念ながら入賞できなかったものの、一時は9番手を走り、実力の一端を見せました。

モータースポーツの最高峰ともいわれるF1の日本開催には政府も注目し、岸田文雄首相が視察に訪れました。レース後の会見で「圧倒的な会場の迫力、熱気を強く感じた」とコメント。2026年からの合成燃料の使用についても触れ、「こうした技術革新があらゆる分野にどのような変化をもたらしていくのか、政策テーマの参考になる」と述べました。


鈴鹿サーキットに訪れた岸田首相
(出典:首相官邸ホームページ https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202210/09mie.html

さらに11月にはWRC「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」が開催されます。愛知県(岡崎市、豊田市、新城市、設楽町)と岐阜県(恵那市、中津川市)の計6市町をまたいで開催されるラリージャパンは、10日のセレモニアルスタートから13日までの4日間、全19のスペシャルステージ(SS)で、熱い戦いが繰り広げられます。

今回のラリージャパンといえば、マニュファクチャラーズランキングでトップのTGRワールドラリーチームの「GRヤリスRally1ハイブリッド」に注目が集まっています。同チーム所属で、ドライバーズランキングでもトップのカッレ・ロバンペラ選手のほか、TGRワールドラリーチームネクストジェネレーションに所属する唯一の日本人ドライバーである勝田貴元選手の母国での活躍も期待されています。

マニュファクチャラーズランキングトップの「GRヤリスRally1ハイブリッド」

また、WRCは、クローズドのサーキットなどで行われる他のレースとは異なるラリーならではの見どころが多いのも特徴です。開催期間やエリアが広く、タイムを競うSSのほかに、セレモニーや車両整備を行うサービスパーク、さらにはSSとSSをつなぐリエゾン区間を走るラリーカーなど、ファンが身近に楽しめるのもWRCならではの魅力と言えます。

まもなく始まる12年ぶりのラリージャパン。実際に足を運んでラリー気分を存分に満喫できる一大イベントの開催で、日本のラリーファンのすそ野も大きく広がりそうです。

 

参考:
恒例の耐久レースシーズン到来!24時間レースのなぜ