2023年シーズンもみどころ満載! 自動車メーカーのモータースポーツ活動

自動車メーカー各社は2023年もモータースポーツに精力的に取り組みます。1月のダカールラリー世界ラリー選手権(WRC)開幕戦では早速、トヨタ自動車が優勝を飾りました。3月開幕のフォーミュラワン(F1)世界選手権ロードレース世界選手権(Moto GP)もシーズンが本格化します。レースはカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に向けた技術開発の舞台でもあり、国内で圧倒的な人気を誇るスーパーGT(SGT)では、今年からカーボンニュートラル燃料が導入されます。チャンピオン争いと同時に、環境対応や入門カテゴリーの強化など、「持続可能なモータースポーツ」の実現への取り組みが注目されます。

■トヨタ

トヨタ自動車TOYOTA GAZOO Racingは「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を目指し、今期も世界ラリー選手権(WRC)、世界耐久選手権(WEC)を筆頭に、国内外の選手権に挑みます。WRCはGRヤリスをベース車両とする「GRヤリス ラリー1 ハイブリッド」で参戦し、3年連続の3冠(ドライバー/コ・ドライバー/マニュファクチャラー)獲得を目指します。WECではハイパーカー「GR010 ハイブリッド」で、100周年記念大会を迎えるル・マン24時間耐久レースでの6連覇に期待がかかります。

トヨタ「GRヤリス ラリー1 ハイブリッド」

国内では、水素エンジンでの挑戦3年目を迎えるスーパー耐久シリーズ(S耐)には、液体水素を燃料に積んだ「GRカローラ」で参戦し、カーボンニュートラル実現に向けた技術をサーキットで磨きます。
またGTレースの最高峰カテゴリーであるスーパーGT GT500クラスに「GRスープラ」6台体制で参戦。。国内トップフォーミュラのスーパーフォーミュラ(SF)にも11台にエンジンを供給し、国内トップの両カテゴリーでのチャンピオン奪還を狙います。

■日産

日産自動車NISMOは国内の自動車メーカーで唯一、電気自動車(EV)のレース「ABB FIAフォーミュラE選手権」に参戦しています。今シーズンは、桜のデザインを施した「ニッサンe-4ORSE 04」を投入しています。第4戦を終えた段階ですでにポイントを獲得しており、EV開発に力を注ぐ同社の技術力が遺憾なく発揮されています。

日産「ニッサン e-4ORCE 04」

国内ではSGTのGT500クラスにスポーツカー「フェアレディZ」ベースの車両「Nissan Z GT500」で参戦します。今シーズンは23年(ニッサン)で語呂合わせがよく、22年に続く2連覇に期待がかかります

さらにプライベーターチーム向けには既にNissan GT-Rを供給しているGT3車両規格に加えGT4規格のニッサンZも供給し、S耐や「ピレリGT4アメリカチャンピオンシップ」での技術支援も実施する予定です。

■本田技研工業

ホンダ・レーシング(HRC)を通じ、今年もF1世界選手権に参戦するレッドブル・グループへのパワーユニット(PU)の技術支援を継続。オラクル・レッドブル・レーシングのチーム・ドライバー両部門での年間王者連覇に貢献していきます。また、22年シーズン後半同様に車体に「HONDA」のロゴがあしらわれます。加えて、F1参戦3年目を迎える角田裕毅選手への支援も継続します。

HRCの技術支援を受けたパワーユニットを搭載する「レッドブル RB19」

国内に目を向けると、SGTにはGT500クラスに「NSX-GT」5台が参戦します。24年からの「CIVIC TYPE R」ベースのマシンへのスイッチが発表されており、その有終の美を飾れるかどうかに注目が集まります。SFでは、昨年2年連続王者に輝いた野尻智紀選手をはじめとする強力な布陣で挑みます。

そして、HRCはS耐への参戦を表明。エントリーリストからは2台の投入が確認されており、詳細の発表が待たれます。

■SUBARU

SUBARUSTiは、海外ではドイツ・ニュルブルクリンク24時間レースに新型「WRX S4」で参戦します。全国のスバルディーラーのメカニック8人を含むチームで、クラス優勝、ターボ車クラストップを目指します。

スバル「WRX NBRチャレンジ2023」

SGTのGT300クラスには引き続き「BRZ」で参戦し、総合王座の奪還を目指します。
S耐では環境や安全を意識した技術開発を加速させます。今季はカーボンニュートラル燃料に加え、スバル航空宇宙カンパニーの協力で実現した再生カーボン部品の追加検討、運転支援システム「アイサイト」の技術向上などに取り組み、市販車へのフィードバックを目指します。

全日本ラリー選手権でも「WRX S4」を投入し、チームと車両開発をサポートするほか、「GR86/BRZカップ」に出場するチームへの支援も継続していきます。

■マツダ

マツダ倶楽部 MAZDA SPIRIT RACINGは23年、S耐に新型車両「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept」を投入します。同社は、レースを通じた次世代バイオディーゼル燃料の技術実証を進めており、カーボンニュートラルの実現に向けた技術開発を加速させる計画です。
また、新たな時代のモータースポーツ文化の担い手になっていただくことを狙いに、チャレンジプログラム「スーパー耐久レースへの道」で選ばれたドライバーが、「倶楽部 MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER(120号車)」で、S耐のST-5クラスにチャレンジします。

マツダ「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept」

一方、eスポーツ大会の成績優秀者にリアルモータースポーツを体験する機会を創出するチャレンジプログラム「バーチャルからリアルへの道」も展開します。モータースポーツのすそ野拡大とモータースポーツ活動の活性化に貢献していく方針です。

■ダイハツ

ダイハツ工業は、部品商社のSPKとともに、「D-SPORT Racing Team」として、WRCのラリージャパンでクラス2連覇に挑戦します。また、23年も「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge」に参戦するなど、活動の幅を広げていく計画です。さらに1月に開催された「K4-GPフジ7時間耐久」に「ミライ―ス」で参戦するなど、軽オープンスポーツカー「コペン」以外での取り組みも行っています。このようなレース活動を通じ、人材育成と技術力の向上を強化していく方針です。

ダイハツ「コペンGRスポーツ」(2022年のラリージャパン参戦車両)

22年8月に開催したサーキット走行イベント「D-SPORT& DAIHATSU Challenge Cup」は、23年は2月の沖縄を皮切りに4回開催する計画です。このほか、軽自動車でも気軽に楽しめるイベントの開催を検討しており、モータースポーツの裾野を拡大していく考えです。

トヨタグループの一員として、「モータースポーツを起点としたもっといい車づくり」を推進すると共に、モータースポーツイベントなどを開催し、「クルマファンづくり」にも取り組んでいきます。

【2輪車

■本田技研工業

HRCは昨シーズンより2輪・4輪双方のレース活動を担う新体制となりました。22年後半から4輪レース部門の空力に関する知見をMotoGPに取り入れるなど、相互連携して競争力を高めていきます。

MotoGPでは、22年が未勝利に終わった悔しさをばねに、「RC213V」でタイトル奪還を目指します。けがから復帰した6度のチャンピオン経験者、マルク・マルケス選手に加え、20年の王者ジョアン・ミル選手らが新たに加入し、体制を強化しています。

ホンダ「RC213V」

22年に年間王者に輝いた世界耐久選手権(EWC)のほか、モトクロス世界選手権トライアル世界選手権など、国内外の選手権へのチャレンジを続けるとともに、若手ライダーの発掘・育成にも力を入れていきます。

■ヤマハ発動機

ヤマハ発動機は、22年のMotoGPで惜しくもランキング2位だったファビオ・クアルタラロ選手を筆頭に、23年型「YZR-M1」でチャンピオン奪還を目指します。Moto2クラスに新たに加入する野左根航汰選手の活躍も期待されています。ほかにも、シーズン7連覇がかかるスーパースポーツ世界選手権、22年ランキング2位だったスーパーバイク世界選手権(WSBK)など、主要選手権に挑みます。

ヤマハ「YZR-M1」

全日本ロードレース選手権では、2年連続で全戦優勝を果たした中須賀克行選手が12回目のチャンピオンを狙います。

モータースポーツを通し、カーボンニュートラルの実現に向けた技術開発と熟成にも取り組みます。全日本トライアルでは、黒山健一選手が電動の「TY-E 2.1」で史上初めてフル参戦し、市販化を念頭に技術を磨きます。

■カワサキモータース

カワサキモータースは、20年まで6連覇したWSBKで、引き続きジョナサン・レイ選手とアレックス・ロウズ選手を擁し、年間タイトル奪取を目指します。22年シーズン終了直後の12月には、早速、新たなパーツのテストを敢行しており、参戦マシン「Ninja ZX-10RR」の性能向上に取り組んでいます。

カワサキ「Ninja ZX-10RR」

国内では、販売ネットワークの名を冠したKawasaki Plaza Racing Teamが、22年に初参戦ながら優勝を果たした鈴鹿8耐SSTクラスでの連覇を狙います。

このほか、「Ninja ZX-25R」を使ったワンメイクレース「Ninja Team Green Cup」をはじめとする一般ライダー向けのイベントも展開し、モータースポーツのすそ野を広げる活動にも力を入れていきます。