世界初!二輪レースにカーボンニュートラル燃料

全日本ロードレース選手権が今年も開幕しました。最大の注目は最高峰クラスであるJSB1000で世界の二輪レースに先駆け、温室効果ガスの排出が実質ゼロとみなされるカーボンニュートラル燃料を使用したことです。国内二輪車メーカーも技術的、経済的支援を通じてカーボンニュートラルの実現に貢献していく考えです。

4月1、2日にモビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)で開催された第1戦。JSB1000のレースが始まると、サーキットには普段とは異なる独特の匂いが漂いました。匂いの正体は、今シーズンから使用が義務化された独ハルターマン・カーレス社の燃料「ETS Renewablaze Nihon R100」。植物ごみや木材チップなどのバイオマスを原料とし、化石由来の原料を一切使用していない特殊な燃料です。

今回のレースで使用したカーボンニュートラル燃料

カーボンニュートラル燃料のレースでの使用は、四輪のスーパー耐久シリーズで一部のメーカーが使用しているほか、23年からはスーパーGTでGT500クラス、GT300クラスに採用します。二輪ではMotoGPが25年に40%非化石由来燃料を採用しますが、100%非化石由来燃料を使用するのは27年になる予定で、JSBはそれよりもかなり早く採用を始めたことになります。導入に当たっては、国内二輪車メーカー4社などが燃料のテストを実施し、仕様変更に必要なデータを各チームに提供しました。

大きな一歩を踏み出した全日本ロードレースですが、各チームともカーボンニュートラル燃料の使用はまだまだ手探り状態であるのが実情です。従来のエンジンをそのまま使用できるとはいえ、通常のレース燃料と比べると燃えにくく、点火系の制御を最適化する必要があります。

課題の一つと言われてきたのがパワーダウンです。最高時速300キロメートルにもなるJSB1000ですが、シーズン開始前まではカーボンニュートラル燃料によってレースの醍醐味であるスピード感が失われる懸念がありました。しかし、1日の予選でポールポジションを獲得したヤマハの岡本裕生選手、中須賀克行選手は昨シーズンのポールポジションタイムを上回るタイムを記録。決勝では2回とも中須賀選手が優勝しました。メカニックやドライバーの技術によって、問題をクリアできることを示しました。

当初の懸念を払しょくし、通常の燃料と同等のラップタイムで快走

決勝ではヤマハファクトリーレーシングチームの中須賀克行選手が2回とも優勝

一方、今後の対応が必要になりそうなのがオイルの劣化です。参戦したチームによると、燃え残った燃料がオイルに混ざり、オイルが希釈されるスピードが早いといいます。今後のレースを通じ、課題解決に向けた検討が行われるとみられます。

費用の問題もあります。二輪車メーカーやタイヤメーカーなどが費用を分担することで、通常は1リットル当たり1500円程度の燃料を400円で提供しているものの、通常の燃料と比べると価格は2倍にもなります。継続的に活用していくためには、燃料コストを低減していく必要もあります。

まだまだ課題の多いカーボンニュートラル燃料ですが、世界のレースに先駆けて採用した理由について日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)の隠岐直広理事・事務局長は、「ガソリンを使用するモータースポーツに対する風当たりは強くなっている。少しでも早く準備しておく必要がある」と話します。MFJではカーボンニュートラル燃料のほか、全日本トライアル選手権のレギュレーションを改定し、電気バイクでの出場が認められるようになりました。モータースポーツの現場で蓄積された知見を生かし、二輪車でもカーボンニュートラルが進むことが期待されます。

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2023/3/27【ブログ】世界初!バイクレースにカーボンニュートラル燃料を採用