SDGs 17の目標

SDGsの概要および経営ガイドに関するセミナー開催

自動車工業関連5団体連携活動

講師: 経済産業省 経済産業政策局産業資金課 課長補佐 増本 龍憲 様

稼ぐ力との両立が重要企業のイノベーションが不可欠

自動車関連5団体(自工会、部工会、車工会、自機工、自販連)では、5団体の連携によるサプライチェーンの競争力向上に向けたセミナーを5月26日に開催しました。講師には、経済産業省 経済産業政策局 産業資金課の増本課長補佐を迎え、「SDGsをどのように経営に取り込み、対外的に発信して行くか。投資家と如何に協働しながら、持続的に企業価値を上げていくか」など、SDGsの概要と企業経営にSDGsを取り込む意義、今後のSDGs経営の重要性などを解説いただきました。また、企業の稼ぐ力と社会のサステナビリティの両立が必要であるとの認識から、同省が提唱している「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」についても説明いただきました。なお、セミナーには5団体の会員企業約190名(回線数)がリモート形式で参加しました。

自工会広報誌「JAMAGAZINE」6月号より

SDGs 17の目標

日本企業の技術力とパートナーシップで取り組むSDGs

誰一人取り残さない

「Sustainable Development Goals」の略で、「持続可能な開発目標」を意味し、2015年に国連サミットで採択されました。「誰一人取り残さない」を掲げ、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指し、2030年を年限に17の国際目標、その下には169のターゲットが定められています。

SDGsの5つの特徴

SDGsは、①普遍性(先進国を含め、全ての国が行動)、②包摂性(人間の安全保障の理念を反映し「誰一人取り残さない」)、③参加化型(全てのステークホルダーが役割を)、④統合性(社会・経済・環境に統合的に取り組む)、⑤透明性(定期的にフォローアップ)の5つの特徴からなり、発展途上国のみならず、先進国の課題も網羅した普遍的な目標で、それぞれの立場での役割を果たしていくものです。SDGsには政府全体で取り組んでいます。カーボンニュートラルの観点からは、「目標7」エネルギー(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)や「目標8」経済成長と雇用(働きがいも経済成長も)が重要となるほか、「目標9」インフラ、産業化イノベーション(産業と技術革新の基盤をつくろう)等が該当しますが、日本の企業が持つイノベーションを起こす力や技術力で、経済的合理性を見出し、社会課題に貢献、企業として成長していくことが、非常に重要です。

SDGsの5つの特徴

SDGs実施のための日本政府の取り組み

日本政府においては、内閣総理大臣を本部長とする「SDGs推進本部」を設置、その下に関係行政機関が連携する「SDGs推進本部幹事会」が置かれ、毎年、アクションプランを策定し、政府全体でSDGsの達成に向けて取り組んでいます。2019年に改訂した「SDGs実施指針」では「国内外においてSDGsを達成するための中長期的国家戦略」と位置付けており、8つの優先課題が特定されています。特に、企業と関係が深いものとしては、省・再生可能エネルギー、成長市場の創設、地域の活性化、科学技術のイノベーションなどがあります。SDGsを達成するには個々の企業の取組だけでは限界があるので、いろいろなステークホルダーと協力・パートナーシップを結びながら取組を進めていくことが重要です。

世界で拡大するESG投資

ESGについて

2006年に国連で「責任投資原則」(PRI:Principles for Responsible Investment)が発表され、この中でESG投資の重要性が示されたことから始まります。投資家は、これまでの財務情報に加え、ESG要素も考慮に入れ、財務とESGを統合した投資判断が求められています。

2020年3月末時点で、PRI署名機関数は3000を超え、その運用規模は100兆ドルを超えています。世界、日本ともESG投資は拡大の傾向にあり、コロナ禍でもESG投資はポジティブな影響を与えるという認識が持たれています。

SDGsの経営への取り込み

「経営ガイド」の策定

経済産業省では「SDGs経営/ESG投資研究会」を2018年に立ち上げ、2019年に、ESG投資の呼び込みと、企業活動の情報発信に向け、「SDGs経営ガイド」を策定しました。内容は、SDGs経営のエッセンスをまとめたもので、「SDGs価値の源泉」、「SDGs経営の実践」から構成されており、企業がSDGsに取り組む意義として、企業競争力の向上につながることなどが記載されています。

SDGsと日本企業の三方よし

近江商人の「売り手よし・買い手よし・世間よし」の「三方よし」にも見られる「会社は社会のためにある」と考える日本企業は多く、このような日本企業が長らく意識し実践してきた取組とSDGsの理念は親和性が高く、そのことをステークホルダーにしっかりPRしていくことが求められます。一方で、三方よしを現状肯定のために用いないよう注意が必要です。

SDGs経営の実践

SDGs経営の実践にあたっては、本業を通じてどのようにSDGsに貢献するのか(社会的課題解決と経済合理性の両立)、一つの企業だけで、SDGsの17ゴール・169のターゲット全てにアプローチすることは難しいため、自社が取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定すること、自社の事業活動が、サプライチェーンやバリューチェーン全体の中で、どの部分でどのような影響をもたらしているかを国際標準も用いながら評価・検証すること(科学的・論理的な評価)、長期視点が重要となるSDGsへの取組を経営システム(ガバナンス)で担保すること(長期視点を担保する経営システム)、企業の価値創造ストーリーの中に位置付けて発信することなどが重要となっています。経済産業省では、長期的な価値向上に向けた企業の情報開示や投資家との対話の共通言語となるものとして、『価値協創ガイダンス』を2017年5月に策定しており、価値観、ビジネスモデル、持続可能性・成長性、戦略、成果成長と重要な成果指標(KPI)、ガバナンスなどを関連付けて示すための考え方が示されています。

サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)と実質的な対話の要素

長期の時間軸を前提にした企業のサステナビリティと社会のサステナビリティの同期化の重要性

2019年に立ち上げた「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」では、伊藤レポート(2014年)から5年が経過する中で、「対話の実質化」に向けた課題整理と解決の方向性が検討されました。現在の経営環境は、コロナ危機もあり不確実性が高まり、また、社会のサステナビリティの要請も高まっていますが、企業のサステナビリティ(企業の稼ぐ力の持続性)を高めるためには、長期の時間軸を前提に、企業のサステナビリティと社会のサステナビリティを同期化させること、つまり、①企業の稼ぐ力を中長期で持続化・強化する事業ポートフォリオ・マネジメントやイノベーション等に対する種植え等の取組を通じて、企業のサステナビリティを高めていくとともに、②社会のサステナビリティ(将来的な社会の姿)をバックキャストして、稼ぐ力の持続性/成長性に対する中長期的なリスクとオポチュニティ双方を把握し、それを具体的な経営に反映させること、更には、③将来に対してのシナリオ変更がありうることを念頭に置き、企業と投資家が対話を繰り返すことで、価値創造ストーリーを磨き上げ、企業経営のレジリエンスを高めていくことが重要となっています。

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