新会長に託されたタスキ — 自動車5団体賀詞交歓会を開催

2024年1月5日、自動車5団体(自工会部工会車工会自機工自販連)による賀詞交歓会が都内で開催されました。およそ1,200名の参加者が見守る中、前会長の豊田章男よりタスキが渡された新会長の片山正則が所信を表明しました。

■主催者挨拶動画

■会長 片山 正則(いすゞ自動車 代表取締役会長)

まずは、令和6年能登半島地震により犠牲となられた方々に心よりお悔み申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。被災地域のみなさまの安全確保、そして一日も早い復旧・復興を衷心よりお祈り申し上げます。
本日はご多忙の中、吉田 経済産業大臣政務官、国土交通省 鶴田物流・自動車局長をはじめ、このように多くの方々にご臨席を賜りまして、誠にありがとうございます。自動車5団体を代表いたしまして、新年のご挨拶を申し上げます。

昨年を振り返りますと、コロナ禍から、ようやく通常の社会生活や経済活動を取り戻すことを実感できた1年だったと思います。また、海外からの観光客やビジネスパーソンの方をお見かけする機会も増えるなど、日本全体に活気が戻り始めた年であったかと思います。新たな1年の始まりを、皆さま方と供にできることに感謝申し上げるとともに、2024年が自動車産業にとって、より一層飛躍の年となるよう、業界一丸となって取り組んでまいりたいと存じます。

私は、本年1月1日より、日本自動車工業会の会長職に就任いたしました。100年に1度の大変革の真っ只中で会長職を担うことについて、改めて、その重責に身の引き締まる思いでございます。名実ともに本日から自工会新体制がスタートするわけですが、豊田前会長に築き上げていただいた課題解決に対し、チームで取り組む形を進化させ、副会長や理事の皆さまと一致協力しながら、全力でこの難局を乗り越えていく決意であります。

さて、私たちが直面している課題は多岐にわたりますが、今後も自動車及びモビリティ産業が基幹産業として日本経済に貢献するために
向こう2年程度をスコープに取るべき具体的なアクションを洗い出し、7つの課題として取りまとめたことは、ご案内の通りでございます。この中で物流の停滞が懸念される2024年問題への対応は、喫緊の社会課題です。自動車産業の枠を超えて、他産業との連携を図り、自動運転技術の積極的採用や運行システムの更なる効率化など、各種取り組みを推進いたします。

また、カーボンニュートラル実現については
「敵は炭素であり内燃機関ではない」
として、マルチパスウエイの必要性を世界に訴えてまいりました。電動車の普及促進に必要なインフラ整備やこれらを後押しする政策が求められますが、これをモビリティ産業への大きな変革期のチャンスと捉え、研究開発投資を増加させ、新たな市場へのアクセスを開拓することで、競争力の向上に向けて取り組んでまいります。
さらには、国産電池・半導体の国際競争力確保、競争力あるクリーンエネルギー、業界を跨いだデータ連携といった課題についても、全力で解決に向けて邁進いたします。

また、昨年秋にはジャパンモビリティショーを開催いたしました。クルマがモビリティに進化することで新たな価値を創造するモビリティ社会の実現にむけ、500社の企業・団体の皆さまと作り上げることが出来ました。結果として111万人のお客さまにご来場いただき、モビリティ産業への期待、その可能性を掴むことが出来ました。関わっていただいた全ての皆さまに、改めて御礼申し上げます。

そして本日は、わたくしからの、たってのお願いとして、このジャパンモビリティショーを引っ張っていただいた豊田前会長にお越しいただいております。長年自工会にご尽力いただき、なかでも近年は強力なリーダーシップで自工会改革を断行していただいた豊田前会長に深く感謝申し上げます。一度マイクをお渡しし、ぜひお話をいただきたいと思います。

■前会長 豊田 章男(トヨタ自動車 代表取締役会長)


まずは、能登半島で発生した大地震ならびに羽田空港での飛行機事故により、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

片山会長のご指名により、ひとことご挨拶させていただきます。2010年に初めて自工会の副会長を拝命してから13年半、2018年に二度目の会長に就任してから5年半。多くの方々に支えられ、この度、片山会長にタスキをお渡しすることができました。皆さまのご支援に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

自工会の歴史を振り返りますと、1960年代に初代会長を務められた 川又克二さんから 1990年代初頭の5代目会長久米豊さんまでは、皆さん4年以上、会長職を務めてこられました。排ガス規制、オイルショック、貿易摩擦など、数々の危機を乗り越え、先達が自工会の礎を築かれた、まさに創業期だったと思います。

それ以降は、会長の任期が短くなり、日産、トヨタ、ホンダの3社による持ち回りが定着いたしました。そして、CASE革命により、自動車業界が「100年に一度の大変革期」に突入する中、私は、二度目の会長に就任することになりました。コロナ危機、カーボンニュートラルなど、自動車産業の構造改革に取り組む中で、
「自動車はみんなでやる産業」
「未来はみんなでつくるもの」
いつしか、それが合言葉となり、「クルマを走らせる550万人」のチームができたと思います。

よく会長職は「神輿」だと 言われたりいたしますが、「神輿」の「輿」という字には、クルマの文字が入っております。担ぐべきは会長ではなく、自動車産業そのものである。そんな想いで、私も 仲間と一緒になって、「550万人」の 「神輿」を担いでまいりました。

昨年のジャパンモビリティショーでは、自動車業界の枠を越えて多くの仲間が、
「乗りたい未来を探しにいこう!」
というメッセージを発信してくれました。

そして、迎えた2024年。富士スピードウェイでの初日の出。ニューイヤー駅伝で8年ぶりの優勝。喜んだのも束の間、能登半島での大地震により、深い悲しみからのスタートになりました。13年前、東日本大震災の時に被災地の方から掛けていただいた言葉が、私の脳裏に蘇りました。
「元気な地域、会社の人たちが 被災した地域の分まで頑張って、 日本を支えてください」

今の日本には、550万人の強くて、たくましい現場があります。被災された方々が、一日も早く、日常と笑顔を取り戻せるよう、550万人の仲間とともに、私自身も動いてまいります。今こそ、対立や分断、争いや誹謗中傷をやめて、お互いに助け合い、笑顔で「ありがとう」と言い合う。そんな大人の姿を見せる時だと思います。
今年は、震災からの復興に加え、物流の2024年問題など、働き方が問われる年でもあります。
いずれも、その解決に向けては、自分以外の誰かを想う「優しさ」が大切になると思います。

「優」しいという字は「人を100回愛する」と書きます。同じ日本に、同じ地球に生きる人たちへの愛、これから生まれてくる子供たちへの愛。そんな愛があふれる年となりますことを祈念いたしまして、私の挨拶とさせていただきます。

■会長 片山 正則

力強く、また愛のあるお言葉をいただきありがとうございました。
豊田前会長から確かに「タスキ」を受け取りました。

今後私たちは自動車以外の様々な産業の皆様とも手を携えて、官民のオールジャパンで様々な課題を解決し、持続可能なモビリティの未来を築いてまいりますので、引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

最後に、本日ご出席の皆さま方の、今年1年のご清栄を祈念いたしまして、私からのご挨拶とさせていただきます。

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