【今さら聞けない】シリーズ トラック用語

乗用車には詳しくても、トラックとなると、トンと分からない人も多いかと思います。自動車に関する用語解説などをお届けしている「今さら聞けない」シリーズ。今回はトラック編です。

【車型】

一つのモデルの中のバリエーションを指す言葉が「車型」です。トラックの場合はシャシーのタイプ、あるいは用途や架装物による区分に対して使われます。トラックはまず、キャブ、シャシー、そして荷台などが一台で完結する「単車車型」と、キャブとシャシーの駆動部分と荷台などが分かれる「トラクター車型」に大別されます。

トラックを横から見た場合に見えるタイヤの数を「軸数」といい、3本あれば3軸、4本あれば4軸となります。左右のタイヤをつなぐ軸を車軸またはアクスルと呼びます。簡単に言えば、軸の数が多いほど、より多くの重量を分散して支えることができ、多くの重量を積載することができます。

また車型表記では、一般的に〈全車輪の数〉×〈駆動輪数〉といった表現がなされます。

単車はシャシーの軸配置および駆動方式によって2軸車型(4×2駆動、4×4駆動)、3軸車型(後2軸6×2駆動、後2軸6×4駆動、後2軸6×6駆動、低床後2軸6×4駆動、前2軸6×2駆動)、4軸車型(低床8×4駆動)などに分類されます。

後2軸の6×2駆動の単車車型

3軸のセミトレーラーを連結する2軸4×2駆動のトラクター車型

また、トラクターにはセミトラクターとフルトラクター車型があり、前者には2軸4×2駆動、3軸後2軸6×4駆動が、後者には3軸後2軸6×4駆動4軸低床8×4駆動があります。これらが国内市場向けに現在設定されている基本車型で、さらにホイールベース長のほか、エンジン/ギアボックス、キャブタイプなどによって細分化され、一車種の車型数は膨大な数になります。少量多品種生産工業製品の典型といわれる所以でしょうか。

・特装車型
用途に対してはカーゴ車型/特装車型といった分類もありますが、国内向けで不整地走行を想定した特装系シャシーは多くなく、ダンプとミキサー用(ホイールベース4.5m級GVW20t(※後述)の3軸6×4駆動車が大勢を占める)のほかは、主に一部のシャシーメーカーが少量生産する除雪車用の総輪駆動車(2軸4×4駆動および3軸6×6駆動)にとどまります。

GVW20t級のミキサー車。ドラム駆動用の動力取り出し機構を備えた専用シャシーに架装されます

・バン
箱型荷台のこと。多くのものが軽量なアルミ製のコルゲートと呼ばれる波板やアルミと樹脂のサンドイッチパネルなどで荷箱を構成し、後部および側面に扉が備わります。荷台容積がそれほど大きくない小型車ではこうした本来のバン型車が一般的ですが、中型の一部車型から大型車では荷役性に優れた側面開放型のウイング車が大勢を占めています。

外板にアルミ材を使ったアルミバンは小型車に広く使われています

ウイング車の構造は荷箱の側面を上下2分割して、下側はアオリ、上側はルーフの中央を軸としてルーフパネルとともに開閉する仕組みです。その呼称は開いた姿が鳥の羽ばたく姿に似ていることに由来します。開閉機構は電動の油圧ポンプ式が一般的ですが、スプリングを組み合わせた手動式もあります。ウイング車は側面が大きく開くので荷役性に優れ、一定の水密性能も備えるので汎用性が高いという特徴があります。

ただし構造上開閉部分が大きく、内部に露出する金属部品が外部の熱を伝えてしまうなど、断熱性能はバン型に比べて不利です。冷凍ウイング車の性能も上がってきましたが、冷蔵など品温管理がそれほど厳しくない用途で使われることが多いようです。なお、温度管理仕様に対してドライ品を運ぶ通常の仕様をドライウイングと呼びます。

ドライウイング車。側面が大きく開くため積み下ろしがしやすいのが特徴

トラックには平ボディのイメージが強いかも知れませんが、大型のカーゴ系で現在人気が高いのはドライウイング車です。架装は車体メーカーが行いますが、自動車メーカーが標準仕様の荷台を載せた状態で顧客に販売する「メーカー完成車」も設定され、納期の短縮や仕様の集約化による低価格が好評を博しています。

・トラクター
トラクター(Tractor)は英語で「牽引する」という意味があります。荷台などが無く頭の部分だけで走っている車両をトラクターヘッド(フルトラクターには荷台があります)といい、逆に「牽引される」側の非自走式の荷箱をトレーラー(Trailer)と呼びます。トラクターヘッドは「トレーラーヘッド」と呼ぶこともあります。

トラクターはトレーラーをけん引する車両なので、シャシー後部に被牽引車のトレーラーを連結する機構を備えます。連結によってセミトレーラーの前側の荷重を分担する「セミトラクター」と、自立する被牽引車のフルトレーラーを車体後端部の連結器で牽引し、基本的にトレーラー側の荷重を分担しない「フルトラクター」に大別されます。「セミトレーラー」「フルトレーラー」はそれぞれ連結車全体も示し、「セミトレ」「フルトレ」と略して呼ばれることもあります。

フルトレーラーは自立したトレーラーをトラクターが牽引します

・セミトレ
セミトラクター/セミトレーラーの連結器はトレーラー側のキングピンを第5輪と呼ばれるトラクター側のカプラーが挟み込む構造で、トラクターとトレーラーはキングピンの中心を連接点として旋回します。トレーラー前部の荷重はカプラーのプレート上面に掛かります。これを第5輪荷重と呼び、許容量はセミトラクターの最大積載量に該当します。数値としては2軸車で最大11.5t、重量運搬用の3軸車では最大20~25tに及びます。

セミトラクターの連結用カプラー。上面でトレーラー側の荷重を受けます

・フルトレ
一方、フルトラクター/フルトレーラーには前軸部にドリーと呼ばれるターンテーブルで操向する台車を配するドリー式と、いわゆるリヤカーのように車体の中央部に(複数の)車軸を配置することで操向装置を持たないセンターアクスル式があります。ドリーはトラクター後部の連結装置につながっており、この連結点を中心に旋回します。ドリーのターンテーブルも自由に旋回するため、トラクター/トレーラー間で首を振る「連節点」が2箇所になり、ドリー式の後退操作を難しくしています。センターアクスル式はトレーラーのフレームから前方に伸びるドローバでトラクターとの連結装置につながる構造のため、連節点はセミトレーラーと同じ1箇所のみ。後退時の誘導の仕方もセミトレと同じで比較的容易です。なお、ドリー式の一部にはセミトラクターと同じカプラーを備え、セミトレーラーを連結する汎用性の高いタイプもあります。

連結部にカプラーを備えたドリーの例

【キャブ&シャシー】

・キャブ
トラックの前部にある運転者の居住部分のこと。乗用車と同じくプレス鋼板で組み立てられ、現在のものは衝突安全にも配慮した構造となっています。エンジンを収めたボンネットの後方に配置するものをボンネットキャブ、エンジンの上部に配置するものをキャブオーバー(正確にはキャブ・オーバー・エンジン=COE)と呼びます。車体や連結時の全長に対する規制が厳しい地域ではキャブの前後長が荷台長に直接影響するためキャブオーバー型が主流。一方、全長規制が緩く、橋梁保護のために長大なホイールベースが求められるアメリカではキャブオーバーの必然性が低く、特装車以外はほとんどがボンネット型となっています。キャブが前後軸の中間に位置するボンネット型は、スペース効率で不利な半面、前軸の真上の高い位置に置かれるキャブオーバー型に比べて乗り心地に優れ、空気抵抗の抑制でも有利といった特徴を持ちます。

日本のトラックはキャブオーバー型が主流。奥側が大型のフルキャブ、手前がベッドスペースを省いたショートキャブ

国内向けの小型トラックのキャブは小型車枠の1700mm幅(標準・4ナンバー)と2000mm幅(ワイド・1ナンバー)、これに中間的な大きさとなる標準キャブの拡大版もしくはワイドキャブの縮小版(1770mm幅)を加えた3種類が基本。中型車は2100mm幅(標準)と2300mm幅(ワイド)にベッドスペース付きのフルキャブとベッドスペースのないショートキャブを組み合わせた4種類、大型車は2500mm幅でフルキャブ/ショートキャブの2種類となっています。もちろん2列シートのダブルキャブなども特殊用途向けに設定されています。キャブは積極的な部品共用化を図るため、標準とワイドの間はもちろん中型と大型、小型と中型、さらに大型と広い範囲で骨格や艤装品の共用化や部品のモジュール化も進んでいます。

・キャブ幅段差
日本独自の規則としてはキャブ幅段差が存在します。キャブの外縁から大きくはみ出した荷台によって発生する接触事故を抑制するのが目的で、現在は片側100mm以内となっています。この規制のもとで幅の広い荷台を架装するために生まれたのが小型と中型のワイドキャブで、小型のワイドは中型の標準幅並みの荷台幅を、中型のワイドは大型車並みの荷台幅をもたらします。

幅の広い荷台に合わせキャブ幅段差を規定内に収めるためにキャブのドア部分を拡幅したトラック

・シャシー
車体の骨格部分にあたるシャシーは少量多品種生産のトラックにおいてはシンプルな構造で、ホイールベース違いにも対応しやすいラダーフレームが大勢を占めます。積載量の小さい軽トラックや小型トラックの一部にはキャブとシャシーを一体化した車体も見られますが、通常のトラックはシャシーとキャブ、荷台がそれぞれ別体の構造を採ることで、広範なバリエーションや架装に合理的に対応しています。

サイドレールとクロスメンバーを組み合わせたラダーフレームは堅牢性に優れるとともにシンプルな構造で、ほとんどのトラックが採用しています

・リフトアクスル
複数ある後軸、もしくはトレーラーの車軸の一部を荷重の少ない空車時に地面から浮かせる機構です。転がり抵抗とタイヤ摩耗の軽減を図ることが出来、省燃費効果が確認されています。エアサスペンションをベースにリフトアップ用のエアバッグを追加し、エア圧によって作動させるのが一般的です。リフトアップさせるのは通常は游輪(非駆動軸)ですが、一部には駆動をカットする機構を内蔵した駆動軸用のリフト機構も存在します。なお、空荷の際に車輪を浮かせて軸数を減少させることによって高速道路の通行料金が減額されるという経済的なメリットもあります。

リフトアクスルにより、ころがり抵抗やタイヤ摩耗を軽減できるほか、通行料が安くなります

・あおり
荷台を囲う板で、通常は蝶番(ちょうつがい)による開閉機構を持ちます。平ボディの側面、後面のほか、ウイング車の側面下側の構造部もアオリと呼びます。平ボディでは鋼鉄製の枠の外側に鉄板、内側に床面と同様の木材を張った「木製アオリ」が一般的。床面と同じく木材の上から鉄板を張って強化することもあります。一方、ウイング車のアオリ部分は角型断面のアルミ押し出し材を積み重ねた構造です。なおアオリの側面と荷台床下に取り付けて開閉操作の省力化をもたらすスプリング式の開閉補助装置も普及しています。

小型トラックの平ボディに使われている木製あおり。キャブと荷台の間の枠組みが鳥居

・鳥居
平ボディの荷台前面、前立ての上部に配置される鋼鉄製の枠組みを「鳥居」と呼びます。鳥居は積み荷からキャブを守る役目とともに長尺の荷物を積む際に上面に立てかけるのに使われます。

・角だし
その際に積み荷を固定し、落下を防ぐのが左右端部の角だし(ツノダシ)です。鳥居の上面よりも高い位置に置かれるため、とりわけ軽自動車や小型車では全高が2mを超えないよう、角だしは折り畳み式、あるいは脱着式となっているものが多く見られます。

ダンプの鳥居上部枕木/角出し

【重量区分】

・GVW
トラックには用途に応じて多くのサイズがあります。「GVW」とは、グロス・ヴィークル・ウエイトの略称で、車両総重量を意味します。車両(キャブ、シャシ、架装を含む)に燃料や油脂類、冷却水を満たした状態の「車両重量」に、一人当たり55㎏で算出する定員分の乗員の重量と、最大積載量を加えて算出するものです。なお、トラクター+トレーラーの連結総重量はグロス・コンビネーション・ウエイト(GCW)と称します。

最大積載量で約13~14t、最も一般的なGVW25tの長尺カーゴ車

トレーラーの連結状態の総重量はGCW

・最遠軸距
軸距とは、車軸と車軸の距離のことを指し、車軸が3軸以上ある場合は最も長い車軸間の距離を「最遠軸距離」と言います。保安基準に於けるセミトレーラー以外の車両のGVWは軸距を基準に、車軸が3軸以上ある場合は車体の全長に応じて定められ、最大25tとなっています。ただし、道路法の車両制限令では高速自動車国道および「重さ指定道路」以外でのGVWの最高限度は20tとされており、保安基準で認められたGVW25t車でもGVW20tを超える積載状態では全ての道路を自由に通行出来るわけではありません。

一番前の車軸から一番後ろの車軸までの間隔が最遠軸距

最遠軸距と全長が長いほど大きなGVWを認めるのは荷重の集中を避けて道路や橋梁を保護するのが目的。アメリカでは長大なセミトレーラーが多いことなどから、連邦ブリッヂフォーミュラにおいて最遠軸距と車軸数などに応じたGVW/GCWが細密に定められています。

・軸重
一つの車軸に掛かる重量のこと。保安基準では1軸10t、トラクターのうち告示で定めるものについては11.5tを超えてはならないと定めています。具体的には、バン型等のセミトレーラー特例8車種を牽引する2軸セミトラクターの駆動軸が該当します。

2軸セミトラクター

また、隣り合う車軸の距離が短い場合には道路への荷重集中を避けるために両軸の荷重が制限されます。これが「隣接荷重」の規制で、軸距が1.8m未満の場合は荷重の合計が18t、軸距が1.3m以上で、一つの車軸に掛かる荷重が9.5t以下の場合は19tまでに制限。軸距1.8m以上の場合は合計20tまでとしています。

小径タイヤによって床面高を下げ、荷室容積を稼ぐ低床車

実際の車両において、軸重の許容値よりも1つの軸に装着するタイヤの最大負荷能力の合計が小さければ、それが車軸に掛けられる荷重の最大値になります。

関連リンク

今さら聞けない アーカイブ- JAMA BLOG 一般社団法人日本自動車工業会