- 2024/09/11
- JAMAGAZINE, その他, 社会貢献
全国に広がる道の駅 その生い立ちと役割とは
1993年の制度創設から約30年が経過した「道の駅」。全国103カ所からスタートし、以降は毎年新たな登録を重ねて、2007年4月に東京都八王子市に道の駅「八王子滝山」がオープンしたことで、47都道府県すべてに道の駅が設置されました。その後も設置・整備が進み、今年8月7日時点で全国1,221ヶ所を数えるまでに増えました。はじめは一般道路の利用者へのサービス提供が主たる役割でしたが、利用者ニーズの多様化や社会情勢の変化などを背景に、道の駅が目指す役割や期待される役割も増しています。それがどういったものなのかを知ることで、これからの道の駅訪問が楽しくなるはずです。
まずは、道の駅の約30年間の歩みを辿ってみましょう。
道の駅の制度創設の背景には、一般道路で昼夜関係なく誰でも気軽に立ち寄ることができる休憩空間がほぼなかったことがあります。そうしたことから、官民連携で道路利用者に安全・快適な道路交通環境を提供することに加えて、地域とともに個性豊かな賑わいの場も創出しようとの狙いから考え出されたものが、道の駅の制度でした。
道の駅は、自治体と道路管理者が連携して設置・整備し、国土交通省(制度開始時は建設省)によって登録された道路施設です。道の駅の基本コンセプトは、①24時間無料で利用できる駐車場・トイレを備えた「休憩機能」、②道路情報、地域の観光情報、緊急医療情報などを提供する「情報発信機能」、③文化教養施設、観光レクリエーション施設などの地域振興施設を持つ「地域連携機能」の3つです。
制度創設20年目の2013年からは、道の駅が目指す役割として「地方創生の拠点」と「防災拠点」という新たな機能が加わりました。地域の創意工夫により、道の駅自体を観光の目的地や地域の拠点として発展させていこうとのコンセプトが基本にあります。また、2011年3月11日の東日本大震災をはじめ、相次ぐ自然災害の教訓から災害時の防災機能を備えることの重要性も高まっていたためです。
この言わば「第2ステージ」以降、道の駅が提供する利用者サービスは多様化が進みます。独自の特色を打ち出すほかにも、スタンプラリーなど近隣の道の駅同士での連携企画などネットワークを生かす動きも各地で生まれ始めます。象徴的な動きが2012年に発足した「全国道の駅連絡会」です。全国の道の駅を楽しむためのお役立ち情報を集めた「道の駅」公式ホームページを運営しており、ドライブ前にぜひチェックしておきたいものです。
そして現在は、「地方創生・観光を加速する拠点」を目指す「第3ステージ」の取り組みを2020年から進めているところです。このステージでは、2025年にありたい道の駅の3つの姿として「世界ブランド化」「防災拠点化」「地域センター化」を示しています。
世界ブランド化は、インバウンド需要の高まりを背景に目指すもので、キャッシュレス対応や多言語対応は必須対策です。また、日本の道の駅モデルは、海外からも注目されており、世界6カ国に展開されています。
道の駅では従来以上に防災拠点化に向けた取り組みの重要性も増しています。都道府県の地域防災計画などで広域的な防災拠点に位置付けられ、災害時に備えてBCP(事業継続計画)の策定、災害協定の締結や防災訓練を実施している道の駅も多くあります。また、2021年に国交省が新たに広域的な防災拠点機能を持つ「防災道の駅」制度を創設しました。災害時には広域的な災害支援の基地や避難場所としての役割などが期待されます。
こうして道の駅の移り行くステージを見ていると、道の駅に単なる「休憩施設」から、第2ステージで「地方創生」や「防災拠点」という機能が加わり、さらに第3ステージでは「まちの発展」の役割を果たす場所に変化していっていることがわかります。
進行中の第3ステージでは、道の駅が主体的に、戦略的に地域を巻き込んで「道の駅の安定運営」と「地域全体の発展」の実現を目指すモデルプロジェクトも始まっています。目指す地方創生の姿は「まちぐるみで地域の価値を再定義し、来訪者だけでなく、その地域に住む人にとっても幸せを感じられ、持続可能な仕組みであること」。
今はまだ、一部の地域で始まりだした道の駅の新たな挑戦ですが、そうした動きやその輪が広がっていくことを知っていれば、道の駅を訪ねることが楽しくなるのではないでしょうか。
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