【今さら聞けない】シリーズ ラリー/ラリーレイド用語

複数の競技区間を1台ずつタイムアタック形式で走行し、その合計タイムで勝敗を競うラリーは、国内では2024年も「全日本ラリー選手権」が各地で開催されているほか、11月には世界ラリー選手権(WRC)の最終戦「ラリージャパン」が予定されています。また、毎年1月に開催される「ダカールラリー」(通称「パリダカ」)をはじめラリーレイドもとても楽しめる競技です。モータースポーツを楽しむために知っておくと役立つラリー/ラリーレイド用語をご紹介しましょう。

【「ラリー」と「ラリーレイド」】
走行ルートや通過地点、移動区間などがきちんと定められているラリーに対し、ラリーレイドはより長距離を走行し広大で自然豊かな環境が舞台となるケースが多いです。また、ラリーは1台ずつがタイムアタックしますが、ラリーレイドは二輪車・四輪車、トラック、バギーなど複数のセグメントが同時に走ります。

ラリーレイドは冒険を自動車競技にしたようなカテゴリーといわれ、アフリカや中東、中央アジアなど広大な土地で行うことが多かったため、参加者数の制限がなかった時代もありました。進化の途中で誕生したのが、パリ・ダカールラリー(現ダカールラリー)やサファリラリーとされています。

レイド(Raid)とはフランス語で「耐久力を試すイベント」のような意味もあります。ラリーとは共通点が多く、両者の境界線はかつて曖昧でした。砂漠やジャングル、山岳地帯などの自然環境を走破する、冒険レース的要素が強い耐久競技で、「クロスカントリーラリー」とも呼ばれます。ラリーレイドが国際的にメジャーカテゴリーとなったのは、つい最近の1990年代のことです。

【競技方法】
・セレモニアルスタート
1台ずつ、大勢のファンが見守る中でスタートする形式のイベントのこと。ラリー・モンテカルロのカジノ前広場のように、人が多く集まる場所で実施されることが多く、ラリーやラリーレイドのスタートを華やかに彩ります。

セレモニアルスタート

・スペシャルステージ(SS)
SSは一般道のうち他の交通を完全に遮断し、ラリーカーが全開走行でタイムを競う区間のことです。ラリーでは、基本的にSSタイムの合計が少ないドライバーが優勝することになります。ラリーのコースには複数のSSが設定され、ラリーカーは1台ずつ走行してタイムを競います。3-4日間を通じて何本ものSSを走り、その合計タイムで順位が決まります。同じSSを1日に2回走る事もあり、2回目の走行は「リピートステージ」などと呼ばれます。

SSを攻めるラリーカー

SSでタイムを競い、リエゾンで移動するのはラリーと同じですが、ラリーレイドは1日に長距離のSSが1か所だけ。SSとリエゾンを合わせた工程をエタップと呼びます。

大自然の中を激走するラリーレイド

ダカールラリーでの日野チームスガワラ

・スーパースペシャルステージ(SSS)
通常のSSとは異なり、ラリーでスタジアムや市街地などの距離が短い特設ステージでタイムを競うのがSSSです。2台のラリーカーが併走して競うこともあり、サーキットのように目の前で競り合いを見ることができます。

ラリージャパン2023のスーパースペシャルステージ(豊田スタジアム)

・ウエイポイント(WP)
ウエイポイントは、区間タイム計測のため、走行中に通過しなければならない地点のことです。ラリーレイドでは、SSやリエゾンの途中に数カ所のウエイポイントがあり、オフィシャルから通過確認印をもらうほか、GPSで通過をチェックされるウエイポイントも設置されています。

・リエゾン
リエゾンは、SSとSSの間を移動する区間のことです。ロードセクションとも呼ばれ、一般道を交通法規に従って走行します。ラリーは、移動区間のリエゾンと競技区間のSSに分かれます。ラリーレイドの約半分は移動区間(公道含む)ですが、交通規則や現地の住民や構造物の安全には注意を払いつつ移動します。

ラリージャパン2023のリエゾンの光景

・セクション
セクションはコースの区間のこと、複数のステージ(SS)やリエゾンで構成されます。
ラリーレイドでは1つのSSとリエゾンの組み合わせを指します。

【コース形態】
・グラベル
グラベルとは未舗装路のことです。ダートとも呼ばれます。ひとくちにグラベルといっても岩盤質の硬いものから、砂漠地帯が多いダカールラリーのように砂地のやわらかい路面まで千差万別です。このため、天候次第では路面の状態も大きく変化します。やわらかい路面では滑りやすいため、砂ぼこりを巻き上げながら走るダイナミックな走行もみられます。

岩盤質のグラベル

砂漠での激走

砂塵を巻き上げながらの迫力ある走り

全日本ラリーでのSUBARUワークス

・ターマック
ターマックとは舗装路のことをいいます。グラベル同様に、舗装路も滑らかなアスファルトから簡易舗装、荒い路面のブロークンターマックなどさまざまな種類が存在します。グラベルよりも大径のホイールを装着し、車高を下げたセッティングとします。

【その他】
・ナビゲーター(コ・ドライバー)
ナビゲーターとは、ドライバーと同乗するクルーのことです。指示書のチェックやコマ図に沿った正確なルートの検索など、ドライバーをサポートし、区間の減点を最小限に抑える役割を担います。多くのモータースポーツはドライバー1人で行いますが、ラリーはドライバーとナビゲーターが2人1組で戦います。

ドライバーとナビゲーターの二人三脚が見ものです

ただし、四輪車のようにコマ図を読みあげてくれるナビゲーターがいない二輪車では、巻紙状のコマ図を収めたマップホルダーをハンドル前方に装備します。

・ペースノート
ペースノートは、レッキと呼ばれるコース下見走行時にコースの詳細を記したものです。コース内の直線距離や注意すべきジャンプポイント、路面の障害物などを記録します。ラリーではコ ースのすべてを覚えることは難しいので、ナビゲーターが本番でノートの内容を読み上げ、ドライバーに情報を提供します。

コース下見時に把握した情報を記録し、ナビゲーターはドライバーに伝えます

一方、コースが整備されているところが多いラリーとは違い、大自然の中で行われるラリーレイドでは、前日にレッキをしてペースノートを書き上げることはなく、本番直前に主催者から与えられる「ロードブック」にあるコマ図で指定されたルートを通ります。ドライバーとナビゲーターは、トリップメーターやGPSを駆使してルートを探します。

・ラリーカー
ラリーカーは、より早く走るためのチューニングやセッティングを行った車両です。世界自動車連盟(FIA)や日本自動車連盟(JAF)が定める車両規則に従って制作されます。

・スイーパーカー
スイーパーカーは、ラリーのSSですべての参加者が走行を終えた後、コースを確認するために最後に走らせる車両のことです。スイーパーカーが走行した後にコースの通行止めが解除され、SSが終了します。

・サービスカー
サービスカーは、スペアパーツや修理に必要な工具などを搭載する車両のことです。その場で調整や修理を行うための装備や照明、発電機などを用意するケースもあります。

補修部品や整備機器などを備えるサービスカーは、競技に不可欠なサポート役

・サービスパーク
サービスパークは、車両の修理や調整などを行うための場所です。このほかにチーム内でのミーティングや休息をとるためのスペースとしても活用されます。原則として、ドライバーとコ・ドライバー以外のクルーが車両に触れることができるのは、このサービスパーク内と、リモートサービスだけと決められています。 ラリー開催中、サービスパークには各チームのブースが設営されます。

・リモートサービス
競技車両の整備は、基本的にサービスパーク内に限定されています。しかしコースの都合で長時間サービスパークに戻れない場合、リエゾン区間の途中にリモートサービスという簡単な整備のみができるエリアを設けることがあります。

ダカールラリーでの日野チームスガワラのサービスパーク

全日本ラリーのSUBARUサービスパーク

クルマにもラリーストにも、オアシスとなるサービスパーク

関連リンク

今さら聞けない アーカイブ- JAMA BLOG 一般社団法人日本自動車工業会