日米関税合意 首相・経産相、自動車産業との意見交換

日米間による自動車および自動車関連部品を含む関税合意を受け、7月31日に石破茂総理大臣と武藤容治経産大臣が自工会を訪問し、自動車産業との意見交換を実施しました。自動車業界を代表して自工会会長の片山正則(いすゞ会長)のほか、トヨタ佐藤恒治社長、日産イヴァン エスピノーサ社長、Honda三部敏宏社長、SUBARU大崎篤社長、マツダ毛籠勝弘社長、三菱自動車中村達夫副社長が参加。また自動車部品業界を代表し部工会の茅本隆司会長(日本発条会長)、豊田合成齋藤克巳社長、トヨタ紡織白柳正義社長が参加しました。

1時間を超える会談では、石破総理および武藤大臣からは日米関税交渉の報告や、今後の国内経済への支援策などの説明が、業界からは困難な交渉が合意に漕ぎつけたことへの感謝を表明するとともに、国内自動車市場活性化やサプライチェーン維持のための支援、米国との未来志向の対話継続への要望など、活発な議論が交わされました。以下冒頭発言をご紹介します。

石破茂 内閣総理大臣

ご案内の通り7月22日、米国の関税処置に関する日米協議は合意を見たところです。本年2月の日米首脳会談の際、私からトランプ大統領に対して、関税より投資ということを提案して以来、一貫して米国も開始このように主張し、働きかけを強力に続けてまいりました。皆さま方に色々なご示唆、お知恵をいただき、自動車および自動車部品については、25%の追加関税率は半減することで、既存の税率を含めて15%で運用したところです。これは世界に先駆けて数量制限のない自動車、自動車部品関税の引き下げを実現することができたもので、繰り返しになりますが、皆さま方の多大なご協力に心より感謝申し上げます。

今回合意した内容を日米双方が着実に実施すべく、今後とも米国に対して継続的に働きかけるとともに、米国の関税措置に関する総合対策タスクフォースの機能を強化し、合意の履行状況の進捗を確認をしてまいります。自動車産業は言うまでもなく550万人の雇用を有し、中小企業を含む、広範なサプライチェーンによって成り立っている我が国の基幹産業でして、賃上げや投資に明るい兆しが見えている中、この動きを止めてはならないと考えております。

本日は皆さまの声を直接、聞くために伺ったもので、全国に1000カ所の相談窓口を作っている主旨もそうでございますが、「何かあったら言ってください」ではなく、こちらから出向いて、ご要望をお伺いする。これ以上なく早く、これ以上なく丁寧にやる。私の方としては対応したいと考えるところでございます。去年の輸出品目は6,000位あるようですが、対米の輸出品目が4,318品目あるそうでございます。

私も一つ一つまだ確認したわけではございません。主に武藤大臣の下で確認をしている所でございますが、例えば8月6日、広島の原爆記念日です。もちろん自動車のマツダさんのお話もお聞きできればいいなと思っていますが、例えて言えば、広島のお酒も輸出しているのではないかと思います。 あるいは、埼玉県さいたま市の植木というか盆栽というか。これは一体どうなるのか。ひょっとしたら長岡から錦鯉、輸出しているかもしれません。あるいは、奈良から金魚を輸出しているかもしれません。そうしたものを全て足すと、4,318になるそうでございまして、これは中小の事業者の方々が多いと承知しております。

プッシュ型で私ども対応しますことで、事業者の方々、中小企業の皆さま方のご不安がないようにしてまいります。 このため、本日の自動車産業が皮きりでございますが、私、また経産大臣を始めといたしまして、関係省庁の閣僚、幹部、こちらから直接出向き、今般の合意について、事業者の皆さまに懇切丁寧な説明を行わせていただきますと共に、影響を正確に把握し、資金繰り支援等々、我が国産業や雇用に与える影響の緩和に万全を尽くしたいと考えているところです。 どうぞよろしくお願い申し上げます。

武藤容治 経済産業大臣

今回の日米間の合意は、守るべきものを守った上で、日米両国の国益に一致する形で合意されたものと考えます。皆さまのご理解、ご協力にこの場を借りて感謝申し上げます。

一方で、自動車及び自動車部品などの分野別関税や相互関税に、一定の税率が残っているのは事実です。中小企業を含めた賃上げや国内投資を進めていかなければならないと思っています。

自動車産業は広範なサプライチェーンを有することから、地域経済への影響は大変大きいものがあります。経済産業省では引き続きプッシュ型で、国内産業・雇用への影響を把握し、追加的な対応が必要であれば、躊躇なく実施します。
賃上げや国内投資を継続して実施していくには、今、総理からも話がありましたが、この貴重な時間で皆さまから関税措置の影響や、政府に関する期待などについて、率直なご意見を伺いたいと考えています。

本日いただいた意見を踏まえ、国内の産業・雇用に生じる影響の対応に万全を期すと共に、日米の経済環境がさらに発展するよう、全力で取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

自工会会長 片山正則(いすゞ自動車(株)代表取締役会長)

米国のトランプ大統領は、今年1月の就任以来、さまざまな通商政策を打ち出しております。4月には、全世界から輸入される自動車に対して25%の追加関税を課す措置を発動し、5月からは自動車部品にも適用され、自動車・自動車部品産業のみならず、世界経済に大きな影響を及ぼし始めておりました。

そのような中、日本政府におかれましては、石破総理の強いリーダーシップの下、国益を守るために粘り強く精力的な交渉を続けていただきました結果、先週、米国政府と合意いただきましたことに心より感謝申し上げます。
合意に至るまでの日米両政府関係者の多大なるご尽力に敬意を表するとともに、交渉の俎上に上がる項目が多岐にわたる中、自動車分野を含む形で妥結いただいたことに、深く御礼申し上げます。

本合意により、サプライチェーン全体を含めた日本の自動車産業への壊滅的な影響が緩和されただけではなく、米国のお客さまにとっても日本車を買いたくても買えないというような、最悪の状況は避けられたことを歓迎いたします。

自由貿易体制が変わろうとしている中、今回の関税交渉はそうした変化の始まりに過ぎないかもしれませんが、我々自動車産業としては、開かれた自由な貿易に基づくビジネス環境を引き続き希望することに変わりはございません。
このような状況だからこそ、最大の同盟国である米国との信頼関係をさらに強固なものとすべく、引き続き、更なる関税の軽減も含めた米国との未来志向の対話を継続していただきたく存じます。

また、世界の政治経済・地政学的リスクが不確実性を増す中、日本の自動車産業を維持していくための一層のサプライチェーン支援や、国内需要喚起に向けた恒久的な措置等を切望いたします。

我々は、常にお客さまを第一に考え、地域の皆さまに支えていただきながら、日米両国に根差した事業活動を通じ、日米自動車産業の持続的な発展と国際競争力の更なる強化に資するよう尽力してまいりますので、引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

部工会 茅本隆司会長(日本発条(株)代表取締役会長)

まずは日本政府、武藤大臣、そして赤沢大臣をはじめ、交渉にご尽力いただいた皆さまに、心より感謝申し上げます。また石破総理には「自動車は国益であり、関税が下がらなければ合意できない」との力強いご発言を繰り返し頂きましたこと、さらに中小企業支援のための相談窓口を早期に設けていただいたことなど、迅速な対応に深く感謝しております。

15%という水準は他国のメルクマールとなり、早速、EUも追随するなど、他国に先駆けての合意は大変意義深いものとなりました。その一方で今後、価格と数量の両面で影響が出てくるでしょうし、それに備える必要があります。短期的には、特に体力のない中小企業に対する、資金繰りのご支援等が必要です。

そして、中長期的には、自動車メーカーが米国に生産移管を進めることになると、国内の自動車生産数量が低下することになります。中小企業が米国に生産移管することは簡単ではなく、中小企業にとっては死活問題になりかねません。日本の中小企業の技術はたいへん高く貴重で、日本のモノづくりの基盤です。その力を守り、育てていくためにも、税制の見直しや国内需要の喚起、新たな輸出市場の開拓など、自動車生産の維持・拡大に向けた政策的なご支援をお願い申し上げます。

さらに、米国の動向に影響される形で、他国でも保護主義的な傾向が強まることを懸念しております。自由貿易の枠組みを守るためにも、国際的な連携と協調をぜひ進めていただきたくお願いいたします。

今後も部工会といたしましては、自工会と連携しながら、日本の自動車産業の競争力の維持・強化、そしてサプライチェーンの強靱化に取り組んでまいります。日本政府におかれましては、引き続き裾野の広い自動車産業の自動車メーカーから中小企業に至るまで、サプライチェーン全体へのご支援をよろしくお願いいたします。

冒頭コメント動画

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関連リンク

【自工会会長コメント】日米関税交渉の合意について(7/23)
【首相官邸】日米交渉の合意に関する自動車業界との意見交換(7/31)