自工会正副会長会議サポートチーム第2回勉強会

日本自動車工業会では、正副会長を軸にオールジャパンで自動車産業の課題解決に向けた活動に注力しています。活動の一環として2月に続き、正副会長を支援する「正副会長サポートチーム」を対象とした勉強会を、関東エリアに拠点を置く本田技研工業いすゞ自動車日産自動車の3社主催により開催しました。
5月からの自工会新体制で副会長を務める6人のうちの3人を交えた車座での座談会を行うとともに、エンジン工場や各社の歴史・文化に触れることができる代表的な展示施設、ユーザー向けの教育施設などを見学・体験。大変革期に立ち向かう正副会長を支援するための知見を増やし、同時に活動の方向性を確認しました。

■新体制3副会長とサポートチームが本音で語り合う

日産自動車のグローバル本社で開催した車座での座談会には、副会長の三部敏宏(本田技研工業取締役代表執行社長)、片山正則(いすゞ自動車代表取締役社長)、次期副会長の内田誠(日産自動車取締役代表執行役社長兼CEO)が参加しました。

初めにお互いの印象を問われた内田は、「三部さんは技術バックグラウンドあるので真っ直ぐに発言され、飾った言い方はしない方。片山さんは議論ヒートアップしたときに周りを和ませる発言する印象」と答えました。三部は、「内田さんは若くてカッコ良い。また正副会長をサポートするクロスファンクションチームの設置という提案いただき今回のサポートチームに繋がり感謝している。片山さんは実直で手堅い印象。大型車の代表として実直」と述べました。また、片山は「内田さんはタフなイメージ。三部さんは社長になられて色々と発信されている。発信力に感服している」と答えました。座談会は当初想定の1時間半を超えて行われ、たびたび笑い声もあがる和やかな雰囲気の下で行われました。

■サポートチームへの期待

チームに対する期待を問われた内田は「本当にお願いしたいのはソリューションをつくってもらうことではなく、気づき」と答えました。内田はサポートチーム発足の提案者であり、メンバーたちから会社の垣根を越えてフレッシュな目で見た意見が出てくることへの期待を示しました。

三部は「表層的な議論では意味がないなと思っています。場合によっては熱くなるくらい、突っ込んだ議論をしていただき、会社間の壁を打ち破って、ぜひ核心を突いた提案を期待しています」と話しました。今の自動車産業を守ることよりも今後のモビリティを成長させていくための提案が、サポートチームに求められていることを強調しています。

片山は各社の舵を握る社長たちの連帯感を高めていくための役割をサポートチームに期待し「各社長が理解しあうために必要なのは原体験。サポートチームにも原体験を共通にしてほしい。いろんなことを共有し、経験して、お互いの言葉への理解力を高めてほしい。それには素のままでやってもらうことが一番大事」と、メンバーたちにアドバイスしました。

■メンバーの悩みにアドバイス

メンバーからは「(サポートチームとして)何を取り組むのか、悩み始めています」と、アドバイスを求める質問もありました。内田は「まずは、おかしいと思うことを全部書きだしてみればよい。『なんでできないの』というようなことをいろいろ書いてみて、その親和性を見ていけば、やっぱりこれだよねというのがある」と、三部も片山もすべて書き出してみるというやり方に頷き、メンバーたちを応援しました。

質問は、カーボンニュートラルおよびCASEにおける競争領域と協調領域、日本の成長・産業の今後、グローバル市場で電動化を進めていく上での課題や危機感、各社の直近の経営課題など多岐にわたりました。3副会長は一つ一つ丁寧に答え、時にはメンバーへの逆質問も交えながら、本音で意見を交わしました。座談会後、サポートチームのメンバーは、2月に開催した豊田会長、日髙副会長、鈴木次期副会長との第1回そして今回の座談会を通じて、「正副会長が今、実際に感じている課題やサポートチームへの期待を直接確認でき、今後の活動検討の礎になる」との感想でした。

■施設見学と座談会を実施

3月16~18日の3日間にわたって開催した第2回勉強会では、日産の横浜工場(神奈川県横浜市)と座間事業所(同座間市)、いすゞのいすゞプラザ(同藤沢市)、ホンダのモビリティリゾートもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町)などの見学を実施しました。これらの施設間の移動には大型バスのいすゞ「ガーラ」を利用しました。

■自動車の量産発祥地やDNAを伝える拠点などを訪問

日産横浜工場は日産創業の地であり、日本の自動車量産工場発祥の地でもあります。敷地内のエンジンミュージアムや、エンジンとモーターの組立ラインなどを見学。エンジンの組立では、「NISSAN GT-R」の高出力エンジンを組み立てる「匠」の作業見学や質問の時間もあり、熟練技能者のこだわりに触れていました。また、モーターの生産ラインでは、モーターに用いる銅線が素早く複雑に巻かれていく様子などを、「どうやっているのか」とメンバーたちは熱心に見ていました。

翌日の座間事業所では日産の歴史を物語る数多くの記念車や名車が保管されている日産ヘリテージコレクションを訪問し、1フロアに並んだ展示車300台に圧倒。展示車を見ながら入社後に販売店に出向した経験を思い出すメンバーもみられました。その後、隣接する隣接するエンビジョンAESCジャパンの電気自動車向け電池の生産工程も見学しました。生産工程と共に部品メーカーによるカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを学んでいました。

■地域の教育を支える情報発信拠点のあり方の好事例

いすゞプラザは藤沢工場の隣接地に開館した体感型施設で、実車・模型などの展示や製造・販売のバーチャル体感コーナーなどで商用車の世界を紹介。いすゞのトラック・バス・産業エンジンなどのミニチュアモデルが自動走行する国内最大級のジオラマもあり、メンバーたちは「すごい、こんなに細かなものまで動いている」と驚いていました。

また、社会貢献の一環としてものづくり教室や施設のガイドツアーなども行われ、地域のコミュニティーを繋ぐ役割も担っています。子どもたちに「くるまづくり」への関心を抱いてもらおうと、社会科見学を行う小学校5年生の目線で制作したエリアもあり、コロナ禍においてはいすゞプラザと小学校の教室をオンラインで結んだバーチャル社会科見学を行っています。これらの展示は、モビリティと地域の共生の観点でメンバーたちの大きな参考となりました。

■モノづくりの夢やレースへの情熱、安全運転などを体感

モビリティリゾートもてぎ(旧ツインリンクもてぎ)は1997年8月、人と自然とモビリティの融合をテーマにオープンしたリゾート施設です。国際規格のサーキットやホンダの歴史を紹介したホンダコレクションホール、交通教育施設、自然体験施設、ホテルなどを備えています。

サポートチームは、まず、ホンダコレクションホールを副会長の三部と共に見学しました。三部は「サポートチームの今後の活動の参考にしてほしい」と、思い出の車に触れながら開発者としての経験談を披露。さらに、1947年発売の原動機付自転車であるホンダAや1965年発売のS600、同時期の初期F1マシンのホンダRA271等のエンジン音体験の用意があり、サポートチームメンバーはそれぞれ特性のある音を体感していました。

また、交通教育センターもてぎではスキッドリカバリーや降雨悪路での車両制動を学び、サーキット場を見学した後、オーバルコースで「NSX」試乗に挑みました。各自オーバルコースを1周自分で運転した後、プロドライバーの助手席同乗体験がありました。雨天のため、時速200キロメートルまでの走行速度となりましたが「120キロメートルからの加速がすごい」と、ハイブリッド4WD車の走行性の高さに驚いていました。

 

■各社の違いを再認識し、チーム活動に対する意欲は上昇

サポートチームのメンバーたちは、今回の勉強会で各社の歴史や文化、技術、こだわり、社会貢献、安全思想、自動車の楽しさなど、さまざまな角度から知識を深め「歴史ある会社ごとの文化や社風の違い」に面白さを感じ、各社の「考えを一つにまとめていくことの難しさを痛感しました」としています。

また、「これまでの自動車づくりにかける思いを、実際のモノを通して共通体験できたことが大きい」とし、今後も「大きなチャレンジとして挑みたい」とサポートチームの活動に対する意欲をメンバー全員が高めています。
座談会で副会長から応援やアドバイスを得たこともあり、メンバーたちは熱い思いを持って今後のサポートチームの活動を進めていくことを確認しあいました。