ダート走行でクルマの楽しさを再確認。メンバーの絆も深まった

自工会正副会長を支援するサポートチームが発足 #JAMAGAZINE

自工会は2022年5月より新体制とすることを発表しました。新たに副会長に3名が就任し、乗用車から大型車、軽自動車、二輪車と全方位で自動車産業が抱えるさまざまな課題に取り組みます。これに先立ち各社トップが議論を深める場として「正副会長会議」をスタート。正副会長の連携を密に、一枚岩となって活動を加速させていきます。同時に最前線で活躍する現役社員で構成する「正副会長サポートチーム」も立ち上げました。新体制の自工会では、車種の垣根を越えて、日本の基幹産業としての役割を果たすべく、幅広く柔軟な視点で自動車産業550万人のあるべき未来を模索していきます。
(この記事は自工会広報誌「JAMAGAZINE」の記事をオンラインで先行公開するものです)

車種の垣根を越える新体制

「100年に一度の大変革期」といわれる自動車産業では、カーボンニュートラルやCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応など、取り巻く環境が刻々と変化しています。自工会ではこれらの山積した課題に迅速に対応するためには、従来以上に車種の垣根を越え、同じベクトルで議論を深めていくことが不可欠と考えており、2022年5月から正副会長を中心とした新体制を発足します。

新体制では、会長の豊田章男(トヨタ自動車代表取締役社長)の任期を2年間延長するとともに、新たな副会長として日産自動車代表執行役社長兼最高経営責任者の内田誠、スズキ代表取締役社長の鈴木俊宏が就任します。2020年10月から副会長を務める日髙祥博(ヤマハ発動機代表取締役社長執行役員)、片山正則(いすゞ自動車代表取締役社長)、2022年1月就任の本田技研工業取締役代表執行役社長の三部敏宏と合流することで、乗用車、大型車、軽自動車、二輪車とそれぞれの分野のエキスパートを正副会長に配置し、自動車産業が抱える課題に取り組む体制を整えました。

2022年5月から新体制を始動する

2022年5月から新体制を始動する

正副会長会議とサポートチームが発足

新体制は2022年5月からですが、すでに動き始めています。これは待ったなしの環境変化の中において、スピード感を持った取り組みが重要となるためです。具体的には、正副会長の意思疎通や課題の共有などを目的とした「正副会長会議」を2021年12月にスタート。2022年2月には第二回目となる会議も実施しました。

一方で、正副会長は、多忙な自動車メーカーのトップという立場で、自工会として活動する時間に限りがあるのも事実です。その中で次期副会長の内田は「この待ったなしの状況下で議論を加速させ、車種の垣根を越えた活動をより具体的にしていくためには、若手の起用でフレッシュな意見を入れる必要がある」と(1月の会見で)指摘しました。これを受けて自工会では、正副会長を支援する「サポートチーム」という新たな組織を立ち上げました。

若手の起用を提案する次期副会長の内田誠(日産自動車株式会社取締役代表執行役社長兼CEO)

若手の起用を提案する次期副会長の内田誠(日産自動車株式会社取締役代表執行役社長兼CEO)

サポートチームは、正副会長会社の代表として第一線で活躍する中堅社員8名で構成しています。自工会の2022年度の5つの重点テーマ①成長・雇用・分配への取り組み②税制改正③カーボンニュートラル④CASEによるモビリティの進化⑤自動車業界のファンづくり―を軸として、自動車産業550万人の困り事(事実)を把握し、正副会長の判断に繋げていくことが狙いです。

第1回勉強会を東海地区で開催

スピード感のある取り組みを実現すべく立ち上げたサポートチームは、早速動き始めています。第一弾の活動として、東海エリアに拠点を置くトヨタ・ヤマハ・スズキの3社主催の勉強会を開催しました。今回の目的は、まずはクルマやバイクを今まで以上に好きになり、ユーザーの立場で理解することです。また、日本の自動車産業の競争力を高めるために、企業や自分の立場を超えて活動できる基盤を作ることも重要なテーマです。

このためダート走行の同乗体験を行いました。会長の豊田自らハンドルを握り、ラリー車両による迫力満点の走りを体感したメンバーは「想像もしない方向に曲がったり、急加速したり、クルマってすごく楽しい。しかも人が操っているというのが凄い」と盛り上がり、クルマの持つポテンシャルの高さや楽しさを改めて感じていました。

会長の豊田章男自らハンドルを握り、ラリー車両を体感

会長の豊田章男自らハンドルを握り、ラリー車両を体感

ダート走行会に参加した正副会長の3人

ダート走行会に参加した正副会長の3人(左から:会長豊田章男(トヨタ)、副会長日髙祥博(ヤマハ)、次期副会長鈴木俊宏(スズキ))

ダート走行でクルマの楽しさを再確認。メンバーの絆も深まった

ダート走行でクルマの楽しさを再確認。メンバーの絆も深まった

本音で語り合う座談会

勉強会では会長の豊田、副会長の日髙、次期副会長の鈴木を交えた座談会を開催しました。活発な意見交換が行われたほか、サポートチームメンバーからも正副会長へ次々と質問が上がりました。

サポートチームへの期待について問われた会長の豊田は「それぞれの出身の会社の社長の代わりになって、自分の目や耳、足で、現在の自動車産業のあり方、課題、問題点をどんどん吸収して勉強していただきたい」と期待を込めます。同時に「サポートチームというと、何かしらのアウトプットを出さないといけない、という風になりがち。でも、ソリューションというよりは、問題発見や課題発見してほしい」と説明します。

また、副会長の日髙は、「まずはユーザー目線で考えていただきたい。いくら自工会として一つになってもメーカーの集まりだと、どうしてもメーカー目線になりがちなので、一人のドライバーやライダーの目線で、実際に乗って感じたこと、CASEで変わることなどを自分なりにイメージしてもらえるといいのではないか」と正副会長とは異なる立場での活躍に期待を寄せます。次期副会長の鈴木も「将来の姿をユーザー目線で道筋を描くとどう変わっていくか、どういうモビリティが必要なのか、というところを対話していただければありがたい」とユーザー目線での議論の重要性を訴えます。

正副会長が本音で語り合いアットホームな雰囲気に

正副会長が本音で語り合いアットホームな雰囲気に

正副会長のお互いの印象とは?という質問では、会長の豊田が副会長の日髙に対して「ヤマハという会社とはこれまでも長い縁があったが、最近は特に泥臭さや体温といった人間味を感じるようになりました」とコメント。次期副会長の鈴木に対しては「スズキさんは世間からライバルというイメージを作られたけど、実は昔からメチャクチャ親しい。軽という本当に大切な国民車を発展させて守るという役目を貰ったと思っている」と述べました。

会長 豊田章男(トヨタ自動車株式会社代表取締役社長)

会長 豊田章男(トヨタ自動車株式会社代表取締役社長)

副会長の日髙は会長の豊田に「きちんと発言されて、スッと腑に落ちる。そうだよな、と共感できる」といい、次期副会長の鈴木に対しては「嘘が言えない本当に誠実な方。迷ったら相談させてもらい、鈴木さんが協力しないと言ったら、それはやめる」と全幅の信頼を寄せていることを明かしました。

副会長 日髙祥博(ヤマハ発動機株式会社代表取締役社長)

副会長 日髙祥博(ヤマハ発動機株式会社代表取締役社長)

チームづくりに関する質問では、副会長の日髙が「人間は十人十色で一人ひとり考え方が違う。そこは適材適所で、その人は何がしたいか。何が好きで、好きなところで活躍してもらうのが良いと思う」とアドバイスしました。

次期副会長 鈴木俊宏(スズキ株式会社代表取締役社長)

次期副会長 鈴木俊宏(スズキ株式会社代表取締役社長)

このほかにも「クルマの所有と使用」や「ファンづくり」といったテーマが上がり、限られた時間の中で、世代や立場を超えた議論が交わされました。

サポートチームからは次々と質問が上がった

サポートチームからは次々と質問が上がった

座談会を終えたサポートチームのメンバーからは「豊田会長がサポートチームは問題解決やソリューションではなく、事実を把握する活動してほしいと述べていたのが印象的だった」、「メーカーの視点ではなくお客さまや外部からの目線で、どういうことが起きているのか。第三者目線で分析して提案することを期待されていると感じた」、「ユーザー目線での率直な疑問や感じたことを伝えてほしいというメッセージと受け取った」と感想を述べます。同時に今後の活動の方向性について「自工会の重点テーマに沿って、サポートチームの活動を議論するところがスタートポイントになる」と説明します。

正副会長からはファンづくりに関する意見も多数上がり、「正副会長の熱い気持ちを感じた。クルマをもっと好きになってほしいというのが一貫した軸であり、ファンづくりが最終的には競争力につながるのでなはいか」と考察します。

また、サポートチームメンバーは「日本の自動車工業の代表として課題意識を持ち寄る場なのだと感じた」といい、座談会はサポートチームの役割や期待の高さを改めて認識する機会となったようです。

企業理念を知るために

勉強会では各社の施設も見学しました。サポートチームの活動には、自動車メーカーの歴史や考え方などを学ぶことも重要となるためです。初日と2日目は、トヨタ産業技術記念館トヨタ博物館トヨタDNA継承館を見学しました。メンバーは「『自分以外の誰かのために』という創業の原点を学んだ。説明員の方が自分の言葉で説明していて、気持ちがこもっていた、熱い思いを感じた」と感想を述べます。

トヨタの施設では創業の歴史や考え方などを学んだ

トヨタの施設では創業の歴史や考え方などを学んだ

3日目は場所を変え、ヤマハコミュニケーションプラザスズキ歴史館の見学を行いました。ヤマハコミュニケーションプラザは、「感動創造企業」というスローガンを掲げるヤマハ発動機を体現した施設で、二輪車をはじめ、電動アシスト自転車、マリン製品、四輪バギー、産業用ロボットなど、同社ならではの幅広い製品を展示しています。また、「取引先などみんなで見て触れて、仕事ができるスペースが一体となっているのは興味深い」(サポートチームメンバー)と関心を寄せます。

事業領域が広いヤマハらしく幅広い製品が並ぶ

事業領域が広いヤマハらしく幅広い製品が並ぶ

スズキ歴史館は、同社の根幹ともいえる「お客さまの立場になったものづくり」を体験できる施設で、創業時代から現在までのクルマづくりまでの歴史を詳しく学ぶことができます。サポートチームが見学した当日は、次期副会長の鈴木のほか、スズキの鈴木修相談役もサプライズで駆け付けました。次期副会長の鈴木は「会社の代表ではなく、日本の自動車産業のために動いてほしい。お客さまのために、より良い日本のために、一人ひとりの対等な人間として対話してほしい」と激励しました。鈴木相談役も訪れたメンバーと対話し、サポートメンバーからは「鈴木相談役は自工会のことを気にかけており、今回足を運んで頂いた。『やらまいか』の精神や、机上の空論ではなく、まずは行動してみる大切さを教えていただいた」と、貴重な機会を通じて得たアドバイスに感謝の声が聞かれました。

サプライズで鈴木修相談役が激励に

サプライズで鈴木修相談役が激励に

今後サポートチームは、関東エリアでも第2弾の勉強会を開催する予定で、今回の3社以外のメーカーの歴史や考え方も学んでいく考えです。さらに正副会長とサポートチームがリアルタイムでコミュニケーションを図れるツールも導入します。これによりスピード感を持ちながら、より密な関係を構築し、課題解決に向けた取り組みを加速させていきます。自動車産業が一枚岩で難局を乗り越えるための新たなチャレンジに期待が高まります。