#自工会 2022年重点テーマ発表(1/27記者会見)

1月27日、日本自動車工業会は今年初となる記者会見を実施しました。今回は11月に発表した次期副会長も含め6名が登壇し、年頭にあたり今年活動する上での重点テーマを発表しました。

■会長 豊田 章男(トヨタ自動車 代表取締役社長)

新しい年がスタートしてから早くも1か月が経とうとしております。ウィズコロナの暮らしも3年目となりましたが、足元では、変異株の感染が急拡大しております。医療従事者の皆様をはじめ、経済・社会を回し続けるために日々奔走されているすべての方々に、心より感謝申し上げます。

また、足元では、部品の供給不足やコロナ影響により新車の納期が長くなっております。楽しみにお待ちされているお客さまに対しまして、ご迷惑をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。そして、このような状況の中で、日々、生産対応をしてくださっているすべての皆さまに、深く感謝申し上げます。

今年の年始は、関係の皆さまのご尽力により「東京オートサロン」が2年ぶりに開催されました。私も、クルマ好きの一人として会場に足を運びましたが、パーツメーカーの皆さまがカスタマイズやクルマの新しい楽しみ方を思い思いに提案しておられました。そこにクルマファンが集まり、まさに「クルマ好きのためのお祭り」という雰囲気でした。私が現場で実感いたしましたのは、たくさんの仲間がつながり、支え合いながらやっているのが自動車産業だということ、そして何よりも

「やっぱりクルマって楽しい!」

ということでした。

どんなに時代が変わっても、楽しい未来をつくっていく。
みんなでやれば、もっと楽しくできる。
改めて、大切な原点を肌で感じ、新年をスタートいたしました。

本年1回目の理事会では、自動車業界の今年の重点テーマについて議論をいたしました。私たちが目指しているのは、自動車を軸にみんなが幸せになる社会づくりのお役に立つことです。そのために、この5つのテーマを設定いたしました。

  1. 成長・雇用・分配への取り組み
  2. 税制改正
  3. カーボンニュートラル
  4. CASEによるモビリティの進化
  5. 自動車業界のファンづくり

この中でも、すべての背骨となるテーマが「成長と分配」です。
来月には春季労使交渉も控え、岸田総理も政策の中心に据えておられますので、本日はこの点について私の考えを申し上げたいと思います。

自動車産業はこれまで、すべてのステークホルダーへの還元や分配を進めてまいりました。コロナ禍の2年間で雇用は22万人増やしております。平均年収が500万円とすると家計に1兆1000億円のお金を回した計算になります。近年の平均賃上げ率は2.5%と全産業トップの水準であり、自動車メーカーの12年間の累計納税額は10兆円、株主還元は11兆円です。従業員だけではなく、取引先、株主など幅広いステークホルダーに持続的に還元をしてまいりました。

これをさらに広げていくには、その「パイ」を増やしていくこと、つまり成長が必要です。私は、成長とは、一部が富を独占するのではなく、その果実が広く行き渡り、みんなの幸せにつなげていくために必要なものだと思っております。

その成長をどう実現するのか。

バブル崩壊以降、日本の経済成長は停滞し、先が見えないデフレ社会の中で、金融資産や個人貯蓄、様々な「保有」が滞留しております。これを動かし、大きく回していくことが必要ではないかと思っております。

自動車で言っても「保有の回転」がカギになります。いま日本には、8000万台の保有母体があります。この平均保有年数は
非常に長期化しており、現在15年以上になっています。これが10年で回るようになれば、市場規模は現在の500万台から、800万台になってまいります。これにより自動車出荷額は7.2兆円増え、新たな雇用が生まれ、バリューチェーン全体にもお金が回ってまいります。税収も、消費税1%分に相当する2.5兆円の増収になります。

自動車だけの話をしているわけではありません。
「CASE」の時代は人々の暮らしを支えるすべてのモノやサービスが情報でつながり、クルマは単なる移動手段ではなく、蓄電池や情報通信デバイスとして社会インフラの一部になってまいります。自動車は社会全体ともっと密接につながる存在になると思います。だからこそ、自動車を軸にすれば経済・社会の好循環を生み出すことにもつながっていくと思っております。
より良い社会づくりの「ペースメーカー」として役割を果たしていくこと。
これは基幹産業である私たちの責任であり、使命です。

今年はぜひとも「成長と分配」の実現に向けて、保有の回転を促す政策を政府の皆様とも一緒に議論させていただきたいと
思っております。

今は、何が正解かわからない時代です。

大切なことは「とにかく、何かを決めて、まず動いてみること」だと思います。自動車業界が動くことで仲間を増やし、みんなで一緒に前に進んでいく1年にしてまいりたいと思っております。

今年も皆さまのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。