- 2022/05/18
- CASE, JAMAGAZINE, 電動車
CASE時代に挑む自動車メーカーのEV戦略 乗用車編
自動車産業の「100年に一度の大変革期」といわれるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に向けた動きが活発化しています。日本自動車工業会の会員企業では、地球温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)の排出削減を目的に、CASEの「E」にあたる自動車の電動化に取り組んでいます。「電動化」とひと口に言ってもハイブリッド車(HV/HEV)から燃料電池車までさまざまありますが、欧米や中国で市場が急拡大しているのが電気自動車(EV/BEV)です。今回は日本でも注目度が高まっているEVを取り上げ、会員企業の最新の動きを紹介します。
EVは文字通り電気だけで走るクルマです。エンジンを搭載しないため、走行中にCO2や排出ガスを一切出しません。同様に水しか排出しない燃料電池車(FCV/FCEV)と並び「ゼロエミッションビークル(ZEV)」とも呼ばれます。
そのEVの新型車が今月、相次いで発売されました。トヨタ「bZ4X」、日産「アリア」、スバル「ソルテラ」です。さらに日産と三菱自動車は、両社で共同開発した軽自動車のEVを発売する予定です。2020年にはホンダとマツダがコンパクトクラスのEVを発売しており、国産のラインアップが増強されることになります。国内のEVシェアはまだわずかですが、車種が増えることで販売台数の増加が予想されます。
欧州や中国では、政府が主導してEVの拡大を図っています。エンジン搭載車を将来的に販売禁止にする方針を打ち出したり、購入補助金を支給したりするなど、ユーザーや業界にEVシフトを促す政策を展開しています。これにより販売台数は急増しており、特に中国では安価なEVの販売が大きく伸びました。
こうした世界の動きを背景に、自工会会員企業もEVの強化に動いています。トヨタ自動車は21年12月、30年までに商用車を含めEV30車種を投入し、同年のEV世界販売見通しを350万台に設定すると発表しました。レクサスブランドは35年にEV専用ブランドにします。豊田章男社長は「カーボンニュートラルの多様な選択肢を提供したい」とし、「リーズナブルな商品をフルラインアップし、あらゆるお客さまのニーズに応えていく」と語りました。
日産自動車は21年11月に発表した長期ビジョン「日産アンビション2030」で、30年度までにEV15車種を投入することを表明しました。今後5年間に総額2兆円を投資し、EVや電池の開発・生産体制を強化します。内田誠社長は「従来進めてきた事業構造改革から、未来の創造へとギアシフトするタイミング」と述べています。
本田技研工業はソニーグループとの協業、ゼネラル・モーターズ(GM)との協業拡大を発表しました。ソニーとは共同出資会社を立ち上げ、新型EVを共同開発して25年に発売します。GMとは量販価格帯のEVを共同で開発・生産します。ホンダは40年にEV専業メーカーになる方針を掲げています。ソニーやGMとの協業を含め、30年までに30車種のEVを投入し、同年には200万台を超えるEVの生産を計画しています。
このように会員企業でも積極的な取り組みに動き出したEVですが、本格的な普及のためには、「充電時間が長い」「価格が高い」といった課題を克服する必要があります。カギを握るのは電池です。そこで将来の電池として期待されているのが、電解質を液体から固体に置き換えた「全固体電池」です。
全固体電池は液体電解質を使った従来のリチウムイオン電池に対し、安全性の高さ、温度変化への強さなどのメリットに加え、充電時間が短縮できるといわれており、トヨタ、日産、ホンダ等が実用化を目指して開発を進めています。
トヨタは20年代前半、まずはHV用として全固体電池を実用化する計画です。日産は28年半ばまでに生産を始めるとしており、試作用の生産設備の映像を4月に公開しました。ホンダは24年春、栃木県さくら市にパイロットラインを立ち上げる予定で、20年代後半に発売する車種への搭載を目指しています。
全固体電池は世界中の自動車メーカー、電池メーカーが開発にしのぎを削っています。日本の自動車メーカーが実用化で世界をリードできるかどうか、大きな期待がかかるところです。