- 2022/05/25
- JAMAGAZINE, カーボンニュートラル, モータースポーツ
日本のモータースポーツ最新事情 カーボンニュートラルとファンづくりへの道 ②「スーパーGT」
国内最高峰のGTレース「スーパーGT」では、カーボンニュートラルの実現を視野に入れた持続可能なレースカテゴリーへと変革を進めています。スーパーGTを運営するGTアソシエイション(GTA、坂東正明社長)は4月17日、原材料に化石成分を一切しない燃料「カーボンニュートラルフューエル(CNF)」を採用すると発表。2023年シーズンから全参戦マシンが使用することを明らかにしました。エンジンの燃費性能やタイヤのライフ性能を高める取り組みも進める予定です。GTAの坂東社長は「社会に対する義務と責任を果たし、10年後も音のあるレースを行いたい」と意気込みます。
スーパーGTは、トヨタ、ホンダ、日産がワークス参戦するGT500クラスと、国内並びに海外メーカーの市販レースマシンなどを使ったGT300クラスが混走する、世界でも珍しい日本が世界に誇るGTレースカテゴリーです。
GT500では、今シーズンから日産が新型「フェアレディZ」をベースにしたニューマシン「Nissan Z GT500」を投入。トヨタは「GRスープラ」、ホンダは「NSX」をさらに進化させたマシンを開発し、例年にも増して激しい三つ巴の戦いを繰り広げています。
GT300は、FIA(国際自動車連盟)が定める「GT3」規格の車両をはじめ、JAFが定める規則に沿って制作された「JAF-GT」規格車両や、GTAが企画した「マザーシャシー」という独自規格のマシンが参戦しています。 BRZ/86、GT-R、スープラ、NSX、プリウスなどの国産車種だけでなく、メルセデス・ベンツやアウディ、BMW、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェなど世界の名立たるスポーツカーが参戦する多彩なカテゴリーです。
熾烈なタイヤ開発競争が繰り広げられているのもスーパーGTの特徴です。現在、ブリヂストン、横浜ゴム、住友ゴム工業(ダンロップ)の国内メーカー3社、フランスのミシュランを加えた4社が参戦しています。
ユニークなレースフォーマットをもつスーパーGTですが、GTAはシリーズの持続可能な発展に向けて、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みに乗り出します。皮切りとなるのがCNFの導入です。CNFは光合成で二酸化炭素(CO2)を吸収した植物由来の原材料を用いることで、燃焼してもCO2排出量を相殺することができます。
GTAが23年シーズンから採用するのは、ハルターマン・カーレス製の「ETS Renewablaze GTA R100」です。セルロース(植物ごみ)から生成された炭化水素と酸素含有物から作られます。GTAによると、性状やオクタン価は日本の自動車ガソリンの要求品質「JIS K2202:2012」規格に適合し、性能は既存の無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)と同等だとしています。
カーボンニュートラルに向けては、マシン走行時のCO2排出量の低減につながるレギュレーションの見直しも進めます。自動車メーカーには低燃費を意識したエンジン開発、タイヤメーカーにはロングライフ化に焦点を当てた開発を促すため、「より長く走れるタイヤ、より燃費の良いマシンが勝てるレギュレーションに見直す」(坂東社長)方針です。
スーパーGTにおけるカーボンニュートラルの取り組みでは、ファンにも協力を求めます。身近な環境対策として観客席のゴミ削減やリサイクルの促進などを呼び掛ける考えです。
カーボンニュートラルに実現に向けた取り組みとともに、継続的に強化しているのがファン層の拡大です。今年はスーパーGTを取り上げた地上波のテレビ番組が終了。このため一般ユーザーへのアピールが希薄になってしまうのではないか、という懸念の声が関係者から上がっていました。
そこでGTAはプロモーターとして広くスーパーGTを知ってもらうため、公式動画サイト「 SUPER GT VIDEO Online 」を4月4日に新たに立ち上げました。坂東社長は「GTAとしてアップする動画だけでなく、自動車メーカーや各チームが上げる動画も一緒に提供していきたい」と動画サイトの効果に期待を寄せています。