会長 豊田章男

会長の豊田章男による記者会見を実施

本日、日本自動車工業会会長の豊田章男による記者会見をオンラインで実施いたしました。

前回(3/11)に引き続き、自動車産業だけでなく全産業や私たちの生活の喫緊の課題である「カーボンニュートラル」についての方針をお伝えいたしました。合わせて、東京モーターショーについてのご報告もございます。

会長 豊田章男

見逃した方は、アーカイブ(中継録画)をぜひご覧ください。

【記者会見および質疑応答】

【スピーチ】

カーボンニュートラルの正しい理解が必要

振り返りますと、昨年12 月には、自工会としてカーボンニュートラルに全力で取り組むことを申し上げ、一方で、エネルギー政策ぬきには語れないことをお伝えいたしました。先月は、カーボンニュートラルによって、クリーンエネルギーを調達できる国や地域への生産シフトが進み、日本の輸出や雇用が失われる可能性があるということをご説明いたしました。

いずれも、根底にあるのは、カーボンニュートラルの本質を正しく理解したうえでみんなで対応することが必要だということです。こうした考えをもとに、これまで私が申し上げてきたことを整理して、漫画のように分かりやすくカーボンニュートラルを解説するコンテンツを作成し、近日中に公開する予定をしております。これをスタートポイントに、自工会としてデータベースを整備・充実させてまいります。
メディアの皆様の日々の報道にもご活用いただけますと幸いです。

CNを「正しく理解」するための取り組み

「自動車産業ど真ん中」 — 日本の技術でCN を実現

こうした「正しい理解」に取り組む中で私自身が感じておりますのは、日本らしいカーボンニュートラル実現の
道筋があるのではないか、ということです。日本には、優れた環境技術、省エネ技術がたくさんあります。何よりも個々の優れた技術を組み合わせる「複合技術」こそが日本独自の強みであると思っております。

今、エネルギー業界では水素から作る「e-fuel」やバイオ燃料など、「カーボンニュートラル燃料」という技術革新に取り組まれております。日本の自動車産業がもつ高効率エンジンとモーターの複合技術に、この新しい燃料を組み合わせることができれば大幅なCO2 低減というまったく新しい世界が見えてまいります。そうなれば、既存のインフラが使えるだけでなく、中古車や既販車も含めた、すべてのクルマで、CO2 削減を図れるようになります。そして、この考え方は、船や飛行機など、自動車以外の様々な産業にも応用できます。船舶を中心に、輸送のカーボンニュートラル化が進めば、輸出入に支えられている日本のビジネスモデルのグリーン化にもつながります。

日本の強みは「複合技術」

私たちのゴールはカーボンニュートラルであり、その道はひとつではありません。
カーボンニュートラルな燃料技術、エンジンの燃焼技術、モーターや電池などの電動化技術、それらを組み合わせる複合技術。こうした強みをもつ日本だからこそ選べる道があるのではないかと考えております。
カーボンニュートラルは、「つくる」「運ぶ」「使う」「廃棄する」というすべてのプロセスでのCO2 削減を実現しなければなりません。つまり、全国民、全産業が足並みを揃えながら取り組むことが不可欠になります。そこには「ペースメーカー」が必要だと思います。自動車は、エネルギーや素材など多くの産業と深く関わる「総合産業」ですので、産業界の「ペースメーカー」としてお役に立てるのではないかと思っております。

自動車は「総合産業」

そして、もうひとつ。
自動車は、多くのお客さまとの接点を持つ「B to C」の産業です。お客さまのニーズに向き合ってきた結果、日本の自動車産業には「電動車フルラインナップ」というアドバンテージがあります。どんなに優れた技術でも、お客さまに選ばれ、使われなければ意味がありません。お客さまのライフスタイルをカーボンニュートラル化していくという意味でも私たちはペースメーカーの役割を担えると思っております。
私が「自動車産業をど真ん中においてほしい」と申し上げているのは「自分たちの産業を守りたい」からではありません。母国である日本がカーボンニュートラルを実現するために、そのペースメーカーとしてお役に立ちたいからです。

自動車は「B2C」の産業

先日の日米首脳会談では、菅総理が「2030 年」というマイルストーンを置いて、カーボンニュートラルに向けた取り組みを加速するという強い意志を示されました。今、日本がやるべきことは技術の選択肢を増やしていく
ことであり、規制・法制化はその次だと思います。最初からガソリン車やディーゼル車を禁止するような政策は、その選択肢を自らせばめ、日本の強みを失うことにもなりかねません。政策決定におかれましては、この順番が逆にならないようお願い申し上げます。

自動車業界としてはこれまで同様EV技術にも着実に投資をしてまいります。30 年前は、EVやFCVはおろか、ハイブリッド車もありませんでした。しかし、そこには、黙々と技術開発を続けてきた人たちがいました。こうした努力の積み重ねが、持続可能で、お客さまに使っていただける実用的な技術を生み出してきたと思っております。
私たちは、これからも「サステイナブル&プラクティカル」をキーワードに、日本ならではの道を切りひらいてまいりたいと思っております。

サステイナブル&プラクティカル

東京モーターショーについて

最後に、東京モーターショーについてご報告させていただきます。
前回のモーターショーでは、モビリティの楽しさを体感できるプログラムを数多くご用意し、130万人を超えるお客様にご来場いただきました。

東京モーターショー2019

今回、オンラインも使ったより魅力ある企画を検討してまいりましたが、多くのお客様に、安全・安心な環境で、モビリティの魅力を体感いただけるメインプログラムのご提供が難しいと判断し、開催中止を決定いたしました。
次回はさらに進化した「東京モビリティショー」としてお届けしたいと思っていますので、今後ともご支援をよろしくお願いいたします。

会長 豊田章男