第2回 経団連「モビリティ委員会」開催

モビリティ産業の国際競争力の強化を通じ日本経済全体の成長を目指す経団連「モビリティ委員会」(十倉雅和委員長、豊田章男委員長、有馬浩二委員長)の第2回会合が2月8日に開催されました。東京・大手町の経団連会館でオンライン含めて510名が参加し、カーボンニュートラル(CN)実現に向けて意見交換が行われました。
あわせて、特別講演ではトヨタ・リサーチ・ インスティテュート最高経営責任者のギル・プラット氏を講師に招き「リーン生産方式の教訓を気候変動問題に活用」と題し、具体的なCO2削減目標に向け、客観的なデータや事例を踏まえた「多様な選択肢」の必要性について説明がありました。冒頭の挨拶および講演の概要は以下の通りです。

モビリティ委員会委員長 十倉雅和 氏(経団連会長 ・住友化学会長)

本委員会は、裾野の広いモビリティ産業の国際競争力の強化こそが日本経済全体の持続的成長のカギを握るとの認識の下、昨年6月に発足し、9月にはキックオフ会合を行い、モビリティを軸とした成長ビジョンなどについて意見交換を行いました。その後、委員を対象に関心分野 や政府への要望事項についてアンケートを実施しております。

その後11月には、岸田総理をヘッドに官邸主催による政府関係閣僚との懇談の機会をいただきました。そこでは、アンケートで示された委員の皆さまからのご意見を踏まえ、各省の縦割りを排して、政府・与党のリーダーシップのもとに省庁横断的な取組みを進めていくことへの期待等について、岸田総理に要望いたしました。また、自民党の各種勉強会におきましても、本委員会の問題意識をご説明して おります。

本年、広島ではG7サミットが開催され、2025年には大阪・関西万博を控えています。そうした機会を捉えて、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、わが国が責務を果たし、国際的に発信を行っていくためには、モビリティ産業をはじめ、様々な産業が一緒になって社会実装を加速していくことが必要です。

そこで本日は、米国国防総省国防高等研究計画局での キャリアを経て、AIの大家としてご高名なギル・プラット博士より、世界の潮流を踏まえ、カーボンニュートラルに向けた選択肢に関するお話をお伺いするとともに懇談する機会をいただきました。御礼申し上げます。

モビリティ委員会委員長 豊田章男(日本自動車工業会会長・トヨタ自動車社長)

最初に個社の話で恐縮ですが、先月トップ交代を発表いたしました。 私自身、社長職をおりますので、自工会会長職についても 辞任届を提出させていただきました。

次期会長につきましては現在、自工会で検討いただいております。正式な決定が出るまでは、モビリティ委員会の委員長としての役割をしっかりと務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

先ほど、十倉会長からもお話がありましたが、今年は日本でG7が開催され「日本らしいカーボンニュートラル」について、各国首脳の皆さまにご理解いただく 良い機会になると思います。

日本は、世界トップレベルの省エネ国です。ご覧いただいておりますように、グローバルで比較しても、日本は同じ価値を産み出すのに必要なエネルギーが 主要国で最も低いという実績があります。

これはエネルギー効率で言うと、世界平均の2倍以上です。そしてそれを支えているのが、各企業の優れた省エネ技術です。

一方で、エネルギーを「つくる・運ぶ・使う」一気通貫での取り組みは、まだ始まったばかりです。

例えば、日本で1年間に販売している480万台の新車をすべて電気自動車(EV/BEV)におきかえようとすると、その電力をまかなうために毎年原子力発電所を1基新設することが必要となります。

それに対し、欧米やアジアはすでに官民一体となって、自国の未来の絵姿を描き、具体的な産業政策に繋げています。このままでは日本は世界から取り残されかねない、日本をなんとかしたい、そんな危機感を強くしております。

このモビリティ委員会には、200社の企業の皆さまにご参加いただいております。私たち企業の強みは「行動力」と「実現力」だと思います。そして、その大前提は「今、何がおこっているのか」事実を正しく理解することだと思っております。

本日は、環境やモビリティの分野でグローバルに研究を進めているギル・プラットより、科学者の見地から「日本らしいカーボンニュートラル」を進めるうえでベースとなる「事実」を共有する場にしたいと思っています。

皆さまと共通認識をもち、日本の未来、地球の未来のために、どのような行動を起こすべきか、皆さまと議論させていただければと思います。

特別講演「リーン生産方式の教訓を気候変動問題に活用」

ギル・プラット 氏(トヨタ・リサーチ・インスティテュート 最高経営責任者)

1.島国の日本は限られた資源を活用する経験を蓄積

  • TPS(トヨタ生産方式)が日本で発明され、ムダを減らし品質を上げることで世界に貢献したことは不思議でない
    限られた資源の中でCO2を今すぐに減らす、という日本の手法は重要

2.BEV製造におけるリチウム資源の制約

  • 電池工場は2〜3年で建設できるが、鉱山開発には10〜15年が必要なため、電池の需要に供給が追い付かなくなる
    リチウムは今後10〜20年で30〜50%不足が見込まれる

3.大気中に長期間蓄積するCO2を減らすために、今すぐ排出を減らさなければならない

  • 世界の自動車全てを電気自動車(EV/BEV)とするのでなく、プラグインハイブリッド(PHV/PHEV)、ハイブリッド(HV/HEV)も合わせて置き換えるべき
    • BEV1台分のリチウムで、PHEV6台あるいはHEV90台を製造可能
      HEV90台の方が自動車全体のCO2排出量は少なくなる
    • 電池が大きくなると、リチウムの単位当たりCO2の削減効果は減少
      リチウムの使用量を単位とすれば、CO2削減効率が最も良いのはHEV用電池
    • BEVのリチウム使用単位当たりのCO2削減効果は、再エネ電力量に左右される 
      豊富なスイスでは高いが、化石燃料発電の米ワイオミング州では大きく低下
      限られたリチウムを有効に使うことが必要
  • HEV用の電池工場は年間21万台分の電池を製造するが、
    BEV用電池工場は、HEV用の10倍の電気を消費し、半分以下の電池量しか製造できない

4.敵は炭素であり内燃機関ではない

  • ムダを減らし、資源を有効活用することがカギ
    ダボス(世界経済フォーラム)で同様の説明をしたが、世界のリーダーもメディアも、同じ見方をし始めている
  • お客さまに多様な電動車の選択肢を提供することで、地域の事情に関わらず、誰もがCNに貢献でき、電池資源や充電インフラの制約があっても、CO2の総排出量を最も削減できる
  • G7に向けては、新車ゼロエミッション車(ZEV)目標値などではなく、足下での具体的なCO2削減目標が必要

講演資料

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関連リンク

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