クルマの多様な楽しみ方提案!東京オートサロン・大阪オートメッセに自動車メーカーが出展

クルマ好きの祭典「東京オートサロン」「大阪オートメッセ」が今年も開催されました。自動車メーカーも市販間近の新型車やレース車両、カスタマイズカーなどで参加し、来場者の目を楽しませました。今年は「東京モーターショー」が「ジャパンモビリティショー」へと一新する年に当たります。メーカー各社にとって、オートサロンやオートメッセはどのような位置付けのショーになっていくのか、各社のブースで探りました。

■「クルマ好き同士の新年会」

東京オートサロンの始まりは、1983年に始まった「東京エキサイティングカーショー」です。回を重ねるごとに、クルマに個性を求めるクルマ好きのためのイベントとして発展してきました。来場者数は右肩上がりに伸び、2023年は1月13~15日の3日間で、前年を上回る17万9434人が来場しました。自動車メーカーも2000年代以降、本格的に出展を開始しました。今年も幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催し、乗用車メーカー8社が3年ぶりに揃って出展しました。

トヨタ自動車の佐藤恒治執行役員( LEXUS International Co. PresidentおよびGAZOO Racing Company Presidentを兼任。 23年4月1日付で社長に就任)は、オートサロンを「クルマ好きな人がクルマ愛を確かめ合う、クルマ好きの新年会」だと表現します。「クルマ愛にあふれ、いろいろなお客さまのニーズや期待値を分かっている人達と交流することで、クルマを盛り上げるために、われわれができることや、共に汗をかくところが見えてくる」と言います。

今年のオートサロンには341社・団体が789台の車両を展示しました。これほど多くのカスタマイズショップやパーツメーカーが一堂に会する場所はほかにありません。佐藤氏は「3日間歩き回って(出展者の方々と)『最近どうなの?』と会話することが大切」と話します。

トヨタのブースで最も注目を集めたのは電気自動車(EV/BEV)と水素エンジン車にコンバージョンした「AE86」のコンセプトカーです。旧車を脱炭素の時代にも長く乗り続けられるようにする提案は、クルマ好きが集まるオートサロンならではのものです。豊田章男社長(23年4月1日付で会長に就任)は、「新車をBEVにするだけでは、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)は達成できない。保有車、つまり誰かの『愛車』にも選択肢を残していくことが大事だ」と述べ、旧車のコンバージョンによる脱炭素化の可能性を示しました。

トヨタ自動車はAE86をカーボンニュートラルに

出展者もクルマ好きなら、来場者もクルマ好きばかりなのがオートサロンです。三菱自動車の担当者は「ディーラーへの来店機会が減る中で、オートサロンはお客さまとの重要なタッチポイントになる」と話します。

多くのクルマ好きが集まるからこそ、「新しいサービスや商品のテストマーケティングに最適なイベント」(日産自動車)にもなります。その日産がテストマーケティングの一環で出展したモデルが「キューブ リフレッシュド&レトロコンセプト」です。

日産の「キューブ リフレッシュド&レトロコンセプト」

「キューブ」は19年に販売を終了したモデルですが、実際に市場に流通している中古車を購入し、傷や色あせなどが気になる内外装パーツを新品に交換するとともに、レトロな意匠に変更しました。今回の出展でユーザーの反応を探り、中古車向けのサービスとして事業化を検討しています。

日産はGT-Rの最新型を展示

■アウトドア関連の提案も

今回特に目立ったのは、コロナ禍でブームになったアウトドアを取り入れた提案です。ダイハツ工業は、「困難が多い世の中だからこそ、〝楽しい〟ことが大事。来場された方に楽しんでもらいたい」(奥平総一郎社長)と、「夢ふくらむ、はじけるダイハツ」をテーマに出展しました。

中でも注目されたのが「動く探検基地」をコンセプトにした「アトレー」ベースのコンセプトカーです。実際に使用できるボートをルーフに着脱できることが特徴で、独創的なカスタマイズに来場者は興味津々でした。担当者は「ジャパンモビリティショーは先の未来を示すショーであるのに対し、オートサロンはもっと身近でお客様とクルマの距離が近いイベント」と話します。だからこそ、その時々の世相が出展内容に大きく反映されるのもオートサロンの特徴と言えるでしょう。

冒険心をくすぐられるボート付きのダイハツ「アトレー」

例年はモータースポーツを中心としたブースを展開するSUBARUも、「SUVを使って、アウトドアの楽しさを表現するブースを作った」(広報部)と言います。アウトドアでの楽しみ方をイメージしたアイテムを「クロストレック」に施し、来場者の関心をひいていました。

SUBARUはアウトドアをイメージする演出も

三菱自動車は、23年5月に発売する「デリカミニ」のカスタマイズカーを中心に展示しました。 担当者は「当社を象徴するブースづくりを目指し、『デリカワールド』をつくった」と言います。

三菱自は新型車「デリカミニ」などを出展

スズキの「スペーシア ベース」の車中泊仕様車は、「若者に興味を持ってもらいたい」(開発担当者)と、人気アイドルが車室内をクッションやブランケットなどでデコレーションしました。

スズキは人気アイドルとコラボした「スペーシア ベース」を展示

モータースポーツ関連の展示も盛りだくさんでした。日産は、厳しい騒音規制をクリアした「GT-R」の24年モデルを発表したほか、ホンダは「NSX」に代わりスーパーGTに参戦する「シビック タイプR-GTコンセプト」を公開しました。ホンダの担当者は「ホンダの走りへのこだわりをテーマにブースを展開した」と説明しました。

ホンダの「シビック タイプR-GTコンセプト」

デザイン本部の監修のもと、ガレージやピットをイメージしたブースを作ったマツダは、モータースポーツを身近に感じてもらおうと22年4月に始めた「倶楽部 MAZDA SPIRIT RACING 」の活動を紹介しました。担当者は「マツダにモータースポーツのイメージを持っていない人も多い。マツダが持っているスピリットは、モータースポーツにもあることをクルマ好きの人たちに知ってもらいたい」と出展の狙いを話しました。

バイオ燃料で走行する「マツダ3」

■地域のクルマ文化支えるイベント

2月10~12日までインテックス大阪(大阪市住之江区)で開催された大阪オートメッセには260社が出展し、560台の車両が展示され、来場者は20万5462人と前年を大きく上回りました。

大阪オートメッセ会場入り口

大阪が地元のダイハツ工業は、アウトドアをテーマにしたコンセプトカーなど8台の車両を展示しました。担当者は、「地元大阪で、もっと車の面白さや楽しみ方、そして元気を届けたい」と語ります。ホンダのブースでは、カスタマイズした市販車が人気でした。担当者は「関西圏のユーザーに走りの楽しさを訴求したい」と出展の目的を話しました。

三菱はデリカミニ、スバルは新型「インプレッサ」をそれぞれ関西で初披露しました。トヨタもAE86をBEVなどに改造したコンセプトカーで来場者の関心を集めました。

大阪でも注目されたAE86ベースのBEV

スズキの担当者は「ユーザーと距離が近いことが大阪オートメッセの良さ」と強調します。日産も「地域色を意識した展示」(担当者)を行いました。ユーザーが車の魅力を間近で堪能できる大阪オートメッセは、地域の車文化を支えるイベントとして定着しています。

東京ビッグサイト(東京都江東区)で10月26日~11月5日までの11日間にわたり開催されるジャパンモビリティショーは、未来のモビリティ社会の姿を示すショーへと生まれ変わります。それだけに、「クルマ好きのためのイベント」というオートサロン、オートメッセの役割は、さらに明確なものになっていくかもしれません。

 

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