- 2021/07/08
- JAMAGAZINE, SDGs, パラリンピック
共に生かし合える社会 自動車業界も支援
— 日本自動車会議所会員研修会「パラリンピックを通して考える共生社会」 —
自工会広報誌「JAMAGAZINE」6月号より
自動車関連業者による団体「日本自動車会議所」は、 日本パラリンピ ック委員会の河合純一委員長を日本自動車会館に迎え、「パラリンピックを通して考える共生社会」と題して講演を実施しました。河合委員長はパラリンピックの競泳選手として日本人初の殿堂入りを果たし、教師、 研究者の職歴もあります。 この経験と立場から、 東京パラリンピ ック大会開催の目的である 『共生社会』 の実現を熱く語られました。 パラリンピ ック大会は最終目標ではなく、 手段と位置付け、”共に生かし合える社会”の実現という大きなテーマを目指されています。
「人間の可能性」を追求
オリンピック、パラリンピックは、世界記録、金メダル、優勝などスポーツ競技の方に目が奪われがちですが、本来の開催目的はオリンピックが「平和の祭典」、パラリンピックが「人間の可能性」です。
特にパラリンピックは大会を通して「パラリアンの足の速さ、遠くまで飛ばせる力など、想像を超えたパフォーマンスに、改めて人間の可能性を感じます」と競技や選手の魅力を伝えるとともに、もう一つ重要なポイントとして「見ている側にも、秘められた可能性を気付かせる」と観客を奮い立たせる効果もあります。河合さんは「メダルの数、記録やタイムも大切ですが、大会の開催、成功を通して世界平和、人間の可能性を知ることが重要なことなのです」と強調されました。加えて“出来ない”ことを、“出来る”ようにするのがパラリンピックと考え、「インポッシブルを、工夫でアイムポッシブルに変えられる」という信念で取り組まれています。
4つの価値観
人々に感動を与えるパラリンピアンとは何者か。国際パラリンピック委員会(IPC)は、パラリンピアンの原動力として「勇気」、「強い意志」、「インスピレーション」、「公平」の4つの価値を掲げています。「公平」の英語表記は「Equality」で、一般には平等と邦訳しますが、河合さんは「平等」には多様な価値観や個性に即した「公平」が不可欠と、敢えて「公平」と表現しています。
国際パラリンピック委員会(IPC)では「パラリンピックムーブメントの推進を通して、インクルーシブな社会を創出すること」をゴールにしています。単にスポーツイベントではなく、より良い社会づくりを目指した施策の一環です。
誰もが住みやすい
具体的な施策として、東京大会は「アクセスビリティガイドライン」を策定。これに基づき、競技場や関連施設を設計、建設しています。エレベーターの大きさ、廊下の広さ、スロープ設置など、「障がいのある」パラリンピアンが使いやすい施設になっています。ただ、これは障がい者用の特別な施設ではありません。これらの施設は健常者にもやさしく、利便性のあるものです。結果、誰もが住みやすい環境をつくり、公平な社会づくりに近づきます。
認識を変える
世間一般には、障がい者の方たちに対して特別な見方をしてしまうことも多々あります。この点に関して、河合さんは「認識を変えてほしい」と力説されていました。河合さんがトヨタ自動車を訪問された際に、最新モデルの福祉車両の見学、試乗を勧められ、「福祉車両よりレクサスに乗りたいのですが」と応えると、担当者は大変驚きつつも、「そういうことですね!」とすぐに河合さんの想いに気付かれたそうです。もちろん、福祉車両の開発、販売も重要ですが、それ以上に誰でもが乗れ、運転できるクルマの開発、販売が重要なことです。全盲の河合さんは今、「自らも運転したい」と自動運転に興味を持たれています。最近では年齢、能力に関係なく、誰でも使いやすい「ユニバーサルデザイン」の製品、施設が増えてきました。自動車業界も前向きに取り入れています。
障がいへの理解
「障がい」というと、身体的な機能障がいで一括りにされがちです。しかし、視野を広くして見渡すと、機能障がいの「インペアメント」、能力的な「ディスバビリティ」、社会的不利益の「ハンディキャップ」の3つから構成されています。各障がいの対処法は様々です。「インペアメント」は医療、医学。「ディスバビリティ」は教育・訓練、パソコン等の活用。「ハンディキャップ」は国、自治体による就職の支援や法整備です。インペアメントとハンディキャップは、人々の理解や社会制度の改革で改善が図れるということです。実は意外に、個人というより、社会の側に障がいが多いのです。この理解を促すためにも、パラリンピック大会の開催は重要といえます。
フルーツポンチ目指す
最後に、河合さんは「ハードのバリアはハートで超えます」と言い、共生社会を「共に生きる」から「共に生かしあえる社会」と唱え、特に多様性と調和を重視しています。飲物を例に「ミックスジュースではなく、フルーツポンチ」と説明されました。「個性を磨り潰して、混ぜ合ったら共生社会とは言わない。お互いの良さ、食感や味わいを変えずに、しっかりと混ぜあわせる。これからは、このような社会を目指すべきだ」というのです。
そしてパラリンピックの「レガシー」は、「フルーツポンチ型の社会を作って行くこと」と話され、「大会からインスピレーション
を感じてもらい、態度が変わり、日常も変わる。そのアクションに期待しています」と出席者に行動を呼びかけられていました。
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