2023年はトラックのEV元年に

日産自動車と三菱自動車が普及価格帯の電気自動車(EV/BEV)を発売した2022年は乗用車の「EV元年」と言われましたが、23年はトラックのEV元年になりそうです。すでに小型EVトラックを発売している三菱ふそうトラック・バス日野自動車に加え、3月にいすゞ自動車が「エルフ」の新型車にEVを設定しました。3社のEVトラックが出そろったことにより、物流事業者などによるEVトラックの活用拡大が期待されます。
 
小型EVトラックの活用が見込まれるのが、「ラストワンマイル」と呼ばれる短距離用途での物流です。現在の電池の技術で長距離を走行しようとすると、大容量の電池を使用することになり、荷物の積載量に制限が出たり、コストが大幅に上昇したりする可能性があります。しかし、1日当たり100キロメートル程度の用途であれば、こうした問題は少なく、トラックをEVに置き換えることが可能です。17年に三菱ふそうが国内初の量産EVとして「eキャンター」を発売し、カーボンニュートラルの機運が高まるにつれ、トラックでもEVへの注目度が高まってきました。
 
日野といすゞの追随で、いよいよ出そろった3社のEVトラックですが、その商品性はさまざまです。例えば、日野「デュトロZ EV」の特徴は、ウォークスルー構造であることです。プロペラシャフトがないことを前提にしたEV専用のプラットフォームを採用したことで、床面に電池を敷き詰める構造とし、車室内の床面の平面化と低床化を実現しました。宅配ドライバーの負担を軽減できるため、大手の宅配事業者が導入し始めました。

日野「デュトロZ EV」はウォークスルー構造で低床化を実現

 
一方、いすゞは、商用車に求められる多様な使い方に対応するEVを発売しました。ディーゼルトラックと共通のプラットフォームを採用することにより、従来の使われ方を損なうことなく、幅広い用途の架装に対応できます。
 

いすゞは「エルフ」にEVを設定

先行する三菱ふそうも、新型のeキャンターを発売しました。初代を使用してきた顧客の要望を踏まえ、航続距離や総重量の異なる28型式をラインアップし、多様なニーズに応える考えです。
 

今春発売した三菱ふそうトラック・バスの新型「eキャンター」

商品の開発もさることながら、小型EVトラックで各社が力を入れるのが、EV導入にあたっての物流事業者の困りごとを解決するための提案です。EVを初めて導入する物流事業者が大半を占める中、充電器の設置やEV用のリース、電欠時に発生した費用を補填する保険などのサービスを通じて導入への不安解消を図ります。
 

充電器の設置など、EV導入に当たっての各種提案にも力を入れる

産業部門別の二酸化炭素(CO2)排出量のうち、約2割を運輸部門が占めており、その大半は自動車から排出されています。物や人の輸送に使用されるトラックやバスは、台数こそ乗用車に及びませんが、稼働率が高いため、環境性能が高い車両を1台導入することの効果は、乗用車よりも大きいものがあります。

もちろん、乗用車同様に、充電インフラの整備や電池のコストなどの課題がまだまだ残るのも事実です。30年に小型商用車で20~30%とする政府のEV比率の目標達成に向け、23年は重要な1年になりそうです。