4年ぶり海外チームも参加 学生フォーミュラ日本大会2023

学生たちが自作したフォーミュラカーの性能や設計思想などを競う「学生フォーミュラ日本大会2023」(自動車技術会主催)が8月28日(月)~9月2日(土)の6日間にわたり、静岡県小笠山総合運動公園(エコパ、静岡県袋井市)で開催されました。21回目となる今回は65チームが競技に進み、電気自動車(EV)での参加チームは21チームと全体の3分の1となりました。4年ぶりに海外チームを迎えたこともあり、会場では学生らの交流が盛んに行われました。

21回目となった学生フォーミュラ日本大会

学生フォーミュラは、次代の自動車産業を担う若手エンジニアの育成を目的として開催されているもので、学生たちが自ら構想・設計・製作した車両を実走させ、タイムや走行性能などを競う動的審査に加え、設計思想やコストなどの静的審査の両方で競い合います。2003年に第1回が富士スピードウェイ(静岡県小山町)で行われ、06年の第4回以降、エコパで開催しています。

参加車両はタイヤを覆う部品や運転席の屋根がない「フォーミュラスタイル」と呼ばれる四輪車とすることなどが要件として定められています。学生たちは実際の車づくりと同じように、部品の調達やコスト管理などを行います。ものづくりの基本と、1台の車を作り上げるまでに必要な工程を学ぶことができ、自動車産業で働くことの楽しさや醍醐味を感じられる機会にもなっています。第1回の開催から20年以上が経ち、のべ27,000人以上のOB・OGが自動車産業をはじめとしたものづくり産業の第一線で活躍しています。

今年は77チームがエントリーし、会場であるエコパでの競技には事前審査を通った65チームが参加しました。このうち3分の1に当たる21チームがEVクラスでのエントリーでした。ガソリンエンジン車クラスへのエントリーが中心ではあるものの、EVクラスの参加チームは年々増えており、電動化の潮流がここにも表れてきているようです。

新型コロナウイルス感染拡大以降、昨年までは参加を国内チームに絞っていましたが、今年からは海外チームも大会に復帰。タイやバングラデシュ、中国、台湾、インドネシアからエントリーがあり、エコパでの競技には4チームが参加しました。

海外の大学も参加した

競技は「車検」「静的審査」「動的審査」の3項目で審査します。静的審査は、車両設計の適切性を評価する「デザイン(設計)」種目、市場要求に合ったビジネスモデルプランを提案できるかを評価する「プレゼンテーション」種目、生産活動におけるコストの妥当性を評価する「コストと製造」種目の3つです。動的審査は、コーナリング性能を競う「スキッドパッド」種目、直線やターンなどがある周回コースを約20km走行する「エンデュランス」種目など5種目を競います。速さだけでなく、ものづくりの総合力を審査する内容となっていることが特徴です。

期間中は6日間とも晴天に恵まれ、気温30度以上の真夏日が続いたこともあり、最終日の審査では日焼けした学生たちの姿も多くありました。各チームが全員で力を出し切って競技に臨む姿に、観戦に訪れた人たちも暑さを忘れて声援を送りました。中でも、75mの区間をどれだけ速く走れるのかを競う「アクセラレーション」競技では、EVクラスに出場した名古屋大学EVチームが3.649秒という圧倒的な速さを見せ、周囲を驚かせていました。

炎天下での競技、チーム全員が力を出し切った

バングラデシュのクルナ工科大学チームの競技車両は、競技前夜に日本に到着しました。無事に日本に届いた際は、周囲から歓声と拍手が起きたそうです。しかしながら、到着後に競技に必要なドライビングスーツを忘れてしまったことが発覚。日本のチームがスーツを貸してくれたことで、無事出場することができました。ライバル同士でありながら、同じ競技に出場する同志としての絆が生まれました。

レース後、喜びを爆発させる学生

優勝は昨年に続き、京都工芸繊維大学チームでした。通算5度目の優勝で、歴代最多の上智大学チームと並びました。準優勝は日本自動車大学校チーム、3位は岐阜大学チームでした。EVクラスの優勝はアクセラレーション競技で唯一、3秒台を記録した名古屋大学EVチームでした。

優勝した京都工芸繊維大学チーム

2位日本自動車大学校チーム

3位岐阜大学チーム

EVクラス優勝の名古屋大学EVチーム

大会最終日に会場を訪れた自技会の大津啓司会長は、「学生フォーミュラはものづくりの基礎に加え、リーダーシップやチームワークを学ぶ機会にもなります。それが社会に出た後も生きてくると思います」と参加した学生たちにエールを送りました。

来年からは会場を愛知県常滑市の「アイチスカイエキスポ」(愛知県国際展示場)に移して開催します。17年間、エコパで培われてきた学生フォーミュラは、次代を育成すべく新会場に受け継がれていきます。

学生フォーミュラを支えてきたエコパへの感謝の寄せ書き

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