BICライブラリに「くるまコレクション」が開設

自動車や自動車産業に関わる書籍、雑誌、写真などの資料を数多く所蔵してきた「自動車図書館」が機械振興会館(東京都港区)内の「BICライブラリ」に統合され、新たに「くるまコレクション」として11月1日にオープンしました。11月21日にはオープンセレモニーが開催され、記念講演も行われました。

機械振興会館内のBICライブラリ入口

地下鉄神谷町駅や御成門駅から徒歩約8分、東京タワーの向かい側にある機械振興会館の地下1階にあるのがBICライブラリです。機械産業の専門図書館として、これまでも自動車産業に関する書籍や資料などを数多く所蔵してきました。くるまコレクションは、このBICライブラリの会議スペースだった場所に設置されました。自動車図書館が所蔵していた図書1万2千冊以上、雑誌237種類・2万8千冊の合計4万点以上をここに移管しました。

自動車図書館は1970(昭和45)年8月当時、「東京モーターショー」の主催団体だった自動車工業振興会(自工振 )が収集していた図書や資料などを、外部からの問い合わせや閲覧希望者に対して公開するサービスとして開設しました。自工振が日本自動車工業会(自工会)に統合したのを機に、2002年からは自工会の運営となり、04年には自工会とともに、東京・大手町から芝大門の日本自動車会館に移転。国内外の自動車に関する文献や映像資料などを所蔵する、国内でもユニークな自動車専門図書館として、多くの研究者やマスコミ、一般の方々に利用されてきました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により20年から休館していました。その間に自動車図書館の在り方を検討し、BICライブラリに蔵書を統合いただくことで、自動車以外の産業も含めた幅広い情報や知識を1か所で得ることができるよう見直しをしました。BICライブラリにとって、スペースの確保など受け入れは簡単ではありませんでしたが、「利用者の方に、より多くの情報を発信したい」「自動車図書館のコレクションを散逸させてはならない」(BICライブラリ担当者)という思いで、くるまコレクション設置をかなえることができました。同館の司書は、「これから自動車のことをさらに勉強し、来館される方に有益な情報を提供したい」と話します。

新設されたくるまコレクションのコーナーには、団体や調査会社の統計資料、自動車メーカーの社史、自動車雑誌、自動車部品の専門書など、自動車図書館にあった資料がずらりと並びます。収まりきらない蔵書は、地下2階の書庫にスペースを確保して収めました。棚やキャビネットは、自動車図書館で使用していたものをそのまま使用しています。1954年に開催された「第1回全日本自動車ショウ」の写真など、貴重な写真やカタログ類が保管されています。

くるまコレクション 各自動車メーカーやディーラーなどの社史が並ぶ

スクラップ帳などの資料も移管


写真やカタログは書庫に収納

11月21日に開催された、くるまコレクションオープン記念セレモニーには、多くの関係者が出席し、くるまコレクションの開設を祝いました。会場には、過去の「自動車ガイドブック」やカタログなど、くるまコレクションの蔵書の一部を並べ、出席者に紹介しました。


セレモニー会場では、くるまコレクションの一部を紹介した

機械振興協会経済研究所所長で一橋大学特任教授の森川正之氏がセレモニーの開会に当たり挨拶し、「図書館は経済において貴重なインフラ。くるまコレクションが加わったことで、規模も大きくなった。多くの人にますますBICライブラリを活用していただきたい」と呼びかけました。

セレモニーで挨拶する機械振興協会経済研究所の森川正之所長

講演には、機械振興協会経済研究所特任フェローで名城大学経済学部准教授の太田志乃氏と、電気通信大学産学官連携センター(ベンチャー支援部門)客員教授の竹内利明氏が登壇しました。

名城大学准教授 太田志乃氏の講演

太田氏は、「グローバル『自動車』産業の動向」と題し、電動化やモビリティ産業への変革期にある自動車産業と、それに伴うものづくりの変化について講演しました。太田氏は、「グローバルな自動車産業が大きくEVにシフトもしくはプラグインハイブリッド車やハイブリッド車を含め、電動化していくことは当然のこと」とし、「これに加え、自動車産業がモビリティ産業に移行していく現在、完成車メーカーや大手部品メーカーだけでなく、中小も含めたサプライチェーンが大きく変容していく」との見通しを示しました。

さらに、大手自動車メーカーが電動化やモビリティ産業への移行を踏まえて投資配分を変化させていることや、スタートアップ企業を含めた仲間づくりが特に欧州で進んでいる事例を挙げました。そして、こうした動きによって、「自動車の造り方にも変化が出てきている」と指摘。「工作機械や金型産業を含め、周辺産業にも影響が出てくることは自明。自動車ないしモビリティ産業をどのように見ていくのか、あるいはどのように研究していくのか、というテーマにおいて、くるまコレクションにもぜひ足をお運びいただきたい」と話しました。

竹内氏は、「学生ベンチャー支援における図書館情報の活用」と題し、全国にある公立や民間の特徴ある図書館の数々を紹介しました。中でも、BICライブラリなどの専門図書館には、資料に精通した専門の司書がいるとし、「相談できる司書がいることが非常に重要なポイント。自分で探すのも良いが、司書に相談すると、自分では気付かなかったことに気付くこともある」と、図書館の活用方法について解説しました。

電気通信大学 産学官連携センター客員教授 竹内利明氏の講演

その上で、電気通信大学が取り組む学生ベンチャー支援の取り組みを紹介し、「企業が学生の取り組みを評価してくれるケースが増えている。少額でもお金をつけて実証してみると、花が咲くものもたくさんある」と、豊かなアイデアを持つ学生を支援する意義を語りました。竹内氏は、「学生はインターネット上にある情報がすべてだと思っているが、ネット上に無い情報もたくさんある。学生ベンチャー支援においては、ネットで入手できない、出典の明らかな情報を、図書館を通して伝えていきたい」と話しました。

BICライブラリは、広々とした閲覧スペースのほか、個人で利用できるブースも備えています。所蔵の確認をインターネットで行えるほか、貸出サービスも行っています。くるまコレクションが加わり今まで以上に利便性が増したBICライブラリをぜひ利用してみてください。

BICライブラリの広々とした閲覧室

個人利用できるブース

関連リンク

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