理系応援イベントを開催

現役女性エンジニアが語る女子中高生向けイベント

自工会は8月21〜22日、女子中学生・高校生を対象にした理系女性向けイベント「Drive for the Future」を開催しました。社会で活躍の場が広がる理系女性ですが、文理選択する前の中高生にとって理系への道は「興味はあるけど大変そう」「女性が少なくて心配」と不安材料も少なくありません。自動車メーカーの第一線で活躍する女性エンジニアが自身の経験も踏まえ、参加した約100人の中高生に理系の勉強や仕事の魅力を伝えました。

自工会広報誌「JAMAGAZINE」9月号より

昨年に続いてオンラインの開催に

 理系の世界に進む中高生を応援したい―。「Drive for the Future」はそうした思いから自工会が2015年に開始した取り組みです。自動車業界では、女性をはじめ多様な人材が活躍できる環境整備を進めていますが、まだまだ男性の比率が高いのが現状です。その理由の一つにはそもそも理系学部に進む女性が少ないことが挙げられます。自動車業界の魅力だけではなく、理系の面白さを伝え、まずは間口を広げる狙いで取り組んできました。
 2019年までは会場で行ってきたイベントですが、残念ながら今年も新型コロナウイルスの影響でオンライン開催になりました。内容はパネルディスカッションと少人数制フリートークの2部構成で、2日間それぞれ午前、午後の2回ずつ開催しました。

「『ガリレオ』に憧れて」 

(左から)河野麻里菜さん(ホンダ)、藤本麻由美さん(マツダ)、横山知世さん(ヤマハ)

 21日午後の部のパネルディスカッションに登壇したのはホンダで燃料電池を担当する河野麻里菜さん、マツダで音響性能の開発を担当する藤本麻由美さん、ヤマハ発動機で船外機の先行開発を担当する横山知世さんの3人です。3人は理系の世界への第1歩となる高校での文理選択にどのような考えで臨んだのでしょうか。
 河野さんは「中学の頃から暗記よりも少しずつ式を覚えてゴールに向かってパズルを組み立てる理系の方が好きだった」と話し、理系を選んだ理由を振り返ります。
 一方、理系に進む人の全てが始めから理系科目を得意としていた訳ではありません。「(中1で勉強する)マイナスとマイナスをかけてプラスになる所でつまずくくらいに数学が苦手でした」と話すのは藤本さんです。「初めから深い所を理解しようとして苦手になってしまいました」といいます。それでも「最初は簡単な問題から繰り返しやっていくうちに理解が進むことに気づきました」と中学2年生のころから理系に進むことを意識し始めたそうです。
 人生のターニングポイントともいえる文理選択ですが、時には思い切りも必要かもしれません。横山さんは「中学の時は考古学に興味を持っていましたが、ドラマ『ガリレオ』の福山雅治さんがカッコよくて理系に進もうと決めました(笑)」と冗談まじりに話します。理系にも文系にもそれぞれ良い所や面白さがあり、どちらが正解ということはありません。横山さんは「皆さんには自分が進んだ道を正解と思えるポジティブな考えを持ってほしいです」と学生にアドバイスをおくりました。

 

自動車だからこそ感じられるやりがいも

 女性が理系の道に進んだ場合、大学で同性の同級生が少なくなる点も気になるポイントです。実際、藤本さんの場合は「学科の100人の一割しかいなかった」そうです。ただ、女性の少なさはメリットにもなるといいます。藤本さんは「女性同士で結束力が高まり、仲良くなれる」と振り返りました。
 引く手数多の理系女性ですが、その中から自動車業界を選んだ理由は何だったのでしょうか。河野さんは「父が自動車メーカーのエンジニアで憧れていたことと家族でのドライブの思い出がきっかけです」という幼少期の原体験がきっかけになったそうです。一方、「大学に入って免許を取ってから車に興味を持ちました」(藤本さん)と大学進学後に自動車に関心を向けるケースもあり、理由はさまざまです。
 ただ、3人ともそれぞれの職場でやりがいをもって働いていることは共通です。「社会的役割が大きい仕事です」(横山さん)「自分が開発に関わった物を周囲の方がつかっている所を見ると不思議な感覚と責任感を感じます」(藤本さん)、「新しいことに挑戦することが楽しいです」(河野さん)と語り、自動車業界の魅力を発信しました。自工会では、550万人が働く自動車業界に一人でも多くの理系女性が仲間入りしてもらえるように今後もこの活動を継続していきます。

 

めざせ!未来のエンジニア ~理系女子・男子応援プロジェクト~

自工会は理系への進学意欲や職業意識の醸成に向けたサポートを行うべく「訪問授業」や「理系応援プロジェクト」を実施しています。

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