【今さら聞けない】多様な車型の呼称 その意味や由来は?

クルマやバイクにまつわるコトバは身近にあふれていますが、「実は本当の意味を知らない」「由来はなんだろう」と思ったことはありませんか?【今さら聞けない】シリーズとして不定期に取り上げていきたいと思います。

「車の基本はセダンだよね」「次はSUVにしようかな」。普段の何気ない会話やニュースなどで耳にする車型の呼称は、実はさまざまな由来や区分に基づいています。日本工業規格(JIS)や、自動車検査証(車検証)上の区分もありますが、これは主に企業や行政が用いるもの。私たちが日常で使う車型の呼称の意味や、その由来をご紹介しましょう。

セダン/クーペ
シンプルで分かりやすいのが、ドアの数やシートの数を由来とする呼称でしょう。「2ドア」「4ドア」、2人乗りの「2シーター」といった具合です。似たような呼び方に、「ワンボックス」も含まれます。この場合の「ボックス」とは、車内の空間を指しており、「エンジンルーム」「車室」「トランク」と分かれている車は3ボックス、独立したトランクがない車は2ボックスと呼ばれます。3ボックスを指す「セダン」は、17世紀頃の欧州にあった貴族婦人の乗り物「セダンチェア」に由来します。

セダン(日産「スカイライン」)

同じ3ボックスでも、セダンよりスタイリッシュな2ドアを「クーペ」と呼びます。2人乗りの箱型馬車が由来ですが、4ドア、5ドアでも、クーペと呼ばれるクルマが登場したこともあり、今やスポーティーな車全般に使われています。クーペという呼称は、「切られた」という意味のフランス語「クペ」を語源としています。

クーペ(トヨタ「GR86」)

ハッチバック
2ボックスは「ハッチバック」とも呼ばれます。ハッチとは、上に引き上げる戸やフタのことで、後部にこうしたハッチ(バックドア)を備えた車のことです。

ハッチバック(ホンダ「フィット」)

ワゴン
同じ車の形でも、国によって呼称が変わる場合もあります。例えば「ワゴン」は別名「ステーションワゴン」と呼ばれるように「馬車」、とくに米国で「駅馬車」として活躍したことにちなみます。イギリスでは「エステート」、フランスでは「ブレーク」とも呼ばれます。

ワゴン(スバル「レヴォーグ」)

オープンカー
屋根のない「オープンカー」は、イギリスでは「ロードスター」ですが、イタリアやフランスでは「スパイダー」でも通じます。折りたたみ式のソフトトップ(幌屋根)もしくはハードトップ(金属や樹脂製の硬い屋根)を持つオープンカーは、「コンバート(変換)」をもじって「コンバーチブル」と呼ばれますが、フランスでは1軸式馬車が語源の「キャブリオレ」、ドイツでは「カブリオレ」と呼ばれます。

オープンカー(マツダ「ロードスター」車型が車名になったケースです)

SUV
オフロード走行性能などが売りの四輪駆動(4WD)車は、日本では「四駆」、「クロカン(クロスカントリー)」「RV(レクリエーショナル・ビークル)」など、時代によって呼称が変化してきました。ちなみにRVは、米国では「キャンピングカー」のことを指しますが、過去の日本ではすっかり4WD車の代名詞になってしまいました。今は「SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)」と呼ぶのが一般的でしょう。日本の新聞などでは、「スポーツ多目的車」と呼ばれたりします。もともとはアメリカが発祥とされ、ピックアップトラックに屋根をつけた車がルーツとされます。また「クロスオーバー」は、「ワゴン+SUV」「クーペ+SUV」といった具合に、複数の車体デザインとSUVを融合させたような車を指します。

SUV(三菱「アウトランダー」)

ミニバン
荷台が金属で囲われた商用車を「バン」と呼び、「ミニバン」はもともと、小型バン派生の乗用車(”ミニ”とはいえ8人乗りです)を指しましたが、今では日本でもすっかり一般的な呼称になりました。欧州では「モノスペース」「MPV(多目的車)」とも呼ばれ、日本ではミニバンの呼称が定着する前は「ワンボックス」として親しまれていました。

ミニバン(ホンダ「ステップワゴン」)

軽自動車
日本独自の軽自動車は、車体寸法の制約からハッチバックが主流でした。今では軽自動車規格の全高(車体の高さ)を有効活用し、広い車室空間を確保した全高1550mm以上の「トールワゴン(ハイトワゴン)」が人気です。トールワゴンのうち、全高が1700mm超の車を「スーパーハイトワゴン」と呼びます。一方で全高1550mmの軽自動車を「従来型」を意味するコンベンショナルから「コンベ」として区別することもあります。

軽自動車ハイトワゴン(スズキ「ワゴンR」)

軽自動車スーパーハイトワゴン(ダイハツ「タント」)

このほか、A~Fの英記号によるセグメント区分もありますが、これは主に車格(車体の大きさ)による欧州発の区分で「Cセグメントセダン」「DセグメントSUV」といったように、他の呼称と組み合わせて使う場合もあります。

このように、車型の呼称は、国や地域によって異なり、時代とともに変化していきます。