日進月歩!自動車業界の水素・電動化技術(スマートエネルギーWeek)

カーボンニュートラル(CN)の実現に欠かせない「水素」と「電気」。自動車業界でもその利活用に向けた技術開発が日進月歩で進んでいます。2月28日~3月1日の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「スマートエネルギーWeek」(主催=RX Japan)には、自動車業界からも、川崎重工業、トヨタ自動車、本田技研工業、三菱自動車工業が出展しました。各社の出展内容を紹介します。

川崎重工業

川崎重工業が展示したのは、カワサキモータースが手掛ける水素エンジン搭載の大型二輪車です。「Ninja H2 SX」をベースに、水素エンジンと水素タンクを搭載した研究車両で、今後、試験走行を通じて走行データを蓄積し、実用化に向けた研究を進める考えです。

カワサキモータースの水素エンジン二輪車(研究車両)

カワサキを含む二輪車メーカー4社は、2023年に水素エンジンの要素技術を研究する「水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE)」を設立しています。今回、出展したカワサキだけではなく、業界が協調し、二輪車やさまざまなモビリティに水素を活用する道を探っています。このほかブースには、すでに世界の海を航行している小型液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」による液化水素国際間輸送実証事業(※)が紹介されました。さらに実用化に向けて取り組む大型液化水素運搬船の模型が展示され、来場者の高い関心を集めていました。
※川崎重工を含む「技術研究組合 CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」がNEDO事業として実施

川崎重工業が実用化に向けて取り組む大型液化水素運搬船の模型

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、千代田化工建設と「大規模水電解システム」の共同開発を進めています。今後、水素の需要が拡大するのに合わせ、水素の供給力も高める必要があります。水素の製造方法にはいろいろありますが、両社が開発中のシステムは、水を電気分解することで、水素を製造するというものです。展示会では、この装置を披露しました。

トヨタと千代田化工で開発中の水素製造システム

展示した水素製造システムは、2.5m×6mの設置面積で、毎時約100kgの水素を製造できます。この設備を複数組み合わせることで、用途に合わせて、さまざまな規模のシステムを構築することができます。両社によると、一般的な設備の約半分の設置面積に抑えており、世界最小レベルのサイズでありながら、製造効率が高いシステムとなっています。まずはトヨタの本社工場(愛知県豊田市)に25年度から導入を開始し、製造量を段階的に増やすとともに、外部へのシステム販売も進めていく方針です。

本田技研工業

本田技研工業は、新型燃料電池車「CR-V e:FCEV」を世界初公開しました。ゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発した燃料電池(FC)スタックを搭載したモデルで、24年夏に国内での販売を予定しています。このクルマの大きな特徴は、水素に加え、外部から充電した電気も動力源に使用できることです。家庭のACコンセントに接続して、気軽に車両の充電を行うことができます。

ホンダが24年夏に発売する「CR-V e:FCEV」

ホンダがGMと共同開発した新型FCシステム

ホンダはこのほか、着脱式可搬バッテリー「モバイルパワーパック」の多様な使い方として、電動カートタイプのモビリティや、建設機械などの事例を紹介しました。洋上風力発電のメンテナンス用として、「作業用ROV」(遠隔操作車両)のコンセプトモデルも世界初公開しました。水中作業に活用可能な遠隔操作型の無人潜水機で、二足歩行ロボット「ASIMO」をはじめとするロボティクス技術が活用されています。

三菱自動車工業

三菱自動車工業は、「ミニキャブ EV」「eKクロス EV」の軽自動車のEV2種類を出展しました。ミニキャブEVはワンボックスタイプの軽商用EVで、23年12月に大幅改良し、1充電当たりの航続距離を180km(WLTCモード)に向上するとともに、安全装備や機能装備を拡充しました。eKクロスEVは、EVならではの、なめらかで力強い走りを実現した軽乗用EVです。

三菱自動車は軽自動車のEV2車種を展示

短距離用途で使われることが多い軽自動車は、電池の容量が小さくても済むため、ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点からも、環境性能に優れる利点があります。今回のイベントでは、法人や自治体向けに、維持費の安さや静粛性の高さ、企業ブランディングへの貢献など、EVのメリットを紹介するとともに、補助金やリースプランを活用したEVの最適な活用方法を提案しました。

説明パネルでもEVの魅力を紹介(三菱自動車)

自動車メーカーは、電動化や水素の活用によって、自動車のCNを推進しています。その技術は、自動車以外への活用も可能です。CNの実現に向け、各社の技術が多様な分野に広がっていくことが期待されています。

関連リンク

スマートエネルギーWeek公式サイト

ブログ:カーボンニュートラルを目指す自工会

自工会カーボンニュートラルデータベース