メーカー各社、最新技術を競う「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」

自動車技術会(中畔邦雄会長)は5月22~24日、パシフィコ横浜(横浜市西区)で「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」を開催しました。3日間合計で7万5972人(前年は6万3810人)もの人が来場しました。環境や交通安全、サプライチェーンといった社会課題に直面する中、自動車メーカーも出展し、こうした課題を解決する技術を紹介しました。

◇いすゞ自動車
いすゞ自動車は、普通免許で運転できる電気小型トラック「エルフミオEV」やカーボンニュートラル(CN)への取り組みを紹介するパネルを展示しました。
パネル展示では、内燃機関車を活用したCNの取り組みで、リニューアブルディーゼルや、合成メタンなどを活用した輸送分野での実証実験を紹介。電動化では、エルフミオEVの実車のほか、2023年に発表したバッテリー交換式ソリューションや、ホンダやCJPT(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ)と行う燃料電池車(FCV/FCEV)の取り組みを紹介しました。

普通免許で運転できるエルフミオEV

大勢の来場者でにぎわった

◇スズキ
スズキは、マルチパスウェイでのCN対応として、インドでの展開を検討している「ワゴンR」CBG(圧縮バイオメタンガス)車を展示しました。同社は、牛が多いインドの特徴を生かし、牛糞に含まれるメタンを燃料として提供することを考えています。ブースでは、インドでのバイオガス事業の取り組みを紹介するパネルも展示しました。また、「ジャパンモビリティショー2023」で展示した次世代四脚モビリティ「MOQBA(モクバ)」や水素エンジンを搭載した二輪車も展示しました。

インドで取り組むバイオガス事業をプレゼン

次世代四脚モビリティ「MOQBA」も展示しました

SUBARU
スバルは昨年発売した「レヴォーグ レイバック」のほか、CN燃料によるレース活動といった「安全と愉しさ」に関する取り組みを紹介しました。
安全性では先進安全機能「アイサイト」のカメラやレーダー類を展示し、「死亡交通事故ゼロ」に向けた取り組みを解説しました。また再生炭素繊維を使ったレースカーのフロントフードも展示しました。ブース自体も自然エネルギー由来電力とし、再利用前提の設計にするなど、環境に配慮しています。

SUBARUブース

アイサイトを構成するカメラやセンサー類

トヨタ自動車
トヨタ自動車は、新型「クラウンセダン」のハイブリッド車(HV/HEV)と燃料電池車(FCV/FCEV)のカットモデルを展示しました。 HEVは「2.5リットルマルチステージハイブリッドシステム」と10段変速制御を組み合わせ、燃費・動力性能を訴求しました。
このほか、サーキュラーエコノミーを実現する技術では、水素タンクの製造過程で発生する炭素繊維強化プラスチックの端材をコンクリートの補強材に利用する技術も展示。また自動車で培った技術で安眠できる空間を提供する「トトネ」といった一風変わった取り組みも注目を集めました。

クラウンセダンのHV

CFRPの端材でコンクリートを補強する「リカボクリート工法」

日産自動車
日産自動車は20年代半ばの実用化を目指す次世代LiDARを活用した運転支援技術、グラウンド・トゥルース・パーセプション技術を搭載した試作車「ProPILOTコンセプトゼロ」を公開しました。次世代LiDARなどの高性能センサーと高い認識技術により、交差点などにおける極めて判断が難しい複雑な状況において、危険を回避することを可能とします。
このほか、「日産アリア」「エクストレイル」などに搭載する電動駆動四輪制御技術「e-4ORCE」や、構成部品を一体化した電動パワートレイン「X-in-1」などのモデルを展示し、電動化と知能化に向けた独自の技術をアピールしました。

ProPILOTコンセプトゼロ試作車

e-4ORCEのモック

日野自動車
日野自動車は電気トラック(EVトラック)「日野デュトロZ EV」のキャブシャシモデルなどを展示し、カーボンニュートラルの取り組みをアピールしました。EV専用シャシーによる低床構造が特徴です。ブースでは来場者にキャンピングカーや移動販売車などの活用案を提示し、どんなアイデアが良いか投票を呼びかけていました。
また「日野標準電池パックイメージモデル」を初展示しました。同社はこれを複数個組み合わせ、さまざまな車型での電動化を進める考えです。

日野ブース外観

「日野デュトロZ EV」は専用シャシーによる低床設計が特徴

本田技研工業
ホンダは循環型社会の実現に寄与する技術や、2050年の「交通事故死者ゼロ」に向けた取り組みを紹介しました。特に今夏の発売を予定する「CR-V e:FCEV」が注目を集めました。
再生エネルギー由来電力の活用拡大に向けて「Honda Mobile Power Pack e:」と、これを動力源とする電動二輪コミューターなども紹介しました。また資源循環に向け、車由来の再生アクリル樹脂を車両外板パネルに用いる提案もし、塗装不要の独特の色味が関心を呼んでいました。

ホンダブーズ全景

「ホンダ モバイルパワーパック e:」と活用事例を示した

マツダ
マツダ「 MX-30 Rotary-EV 」をブース中央に置き、カーボンニュートラルや電動化、「人とITの共創による価値創造」を紹介しました。同車は発電用ロータリーエンジンを搭載したプラグインハイブリッド車(PHV/PHEV)です。また新旧ロータリーエンジンの構造も展示され、人だかりができていました。
環境配慮型材料や、燃料採掘から使用までのサイクルでの脱炭素化に向けたビジョン、モデルベース開発(MBD)といった、ものづくりについてもアピールし、時代に合わせた「走る歓び」を訴求していました。

マツダブース全景

新旧ロータリーエンジンの比較

三菱自動車
三菱自動車は、「三菱自動車らしさ」をテーマに出展。ブース中央に展示した新型「トライトン」と壁面に設置したパネルを使い、同社が近年訴求している三菱らしさを象徴する「電動化技術」「四輪制御技術」「耐久信頼性技術」「快適性技術」「安全技術」の5つの技術を紹介しました。
また三菱自動車は近年、「人とクルマのテクノロジー展」への出展をリクルートにも活用しており、学生や自動車のエンジニアらに自社で働く魅力を発信しました。

同社らしさを象徴するモデルとしてトライトンを展示

同イベントを人材採用にも活用している

ヤマハ発動機
ヤマハは、開発中の新たな技術「感覚拡張HMI」とライダーの感情をセンシングするアプリ、知能化技術・自立機能を搭載した二輪車「MOTOROiD2」などを展示しました。同社は技術ビジョン「『楽しさ』の追求と社会課題の解決で新しい価値を創る」を掲げており、それを具現化した製品や技術を展示しました。
来場者の注目を集めたのは、感覚拡張HMIです。ヘルメット内に搭載した7つのスピーカーから音を発して、後方車両の位置や距離などの認知を支援する技術です。死角を音で自然に伝えることで、交通事故の防止などに役立てます。ブースでは、二輪車のシミュレーターを用意し、来場者が実際に体感しました。

後頭部に搭載しているスピーカーから音を発して後方認知を支援します

専用のベルトを体に装着すると感情がわかるアプリも開発

UDトラックス
UDトラックスはオンラインイベントに出展し、スマートロジスティクスの実現に向けた取り組みを紹介しました。中でも緊急性が高い環境問題や物流業界の課題に対するソリューションを重点的に発信しました。
その一つが運転を支援する「UDアクティブステアリング」で、さまざまな走行条件下で最適な操舵支援を行います。2021年の初採用以降、搭載車種を拡充していますが、制御技術をさらに進化させ自動運転の実現につなげていく考えです。オンラインページでは神戸製鋼加古川製鉄所の構内で実施した自動運転の実証実験も公開しました。

オンラインで出展

自動運転の実証実験の動画も公開

関連リンク

人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA