- 2024/08/30
- JAMAGAZINE, モータースポーツ, レース, 撮影のコツ
【撮影のコツ】いつものスマホでちょっとカッコよくレース写真を撮ろう!
スマートフォン(スマホ)で、愛車をカッコよく綺麗に撮る秘訣を紹介してきた【撮影のコツ】シリーズ。第3回となる今回はサーキットでの「レース写真」を撮影するコツをお届けします。
今回の撮影場所として選んだのは、8月3日~4日に静岡県の富士スピードウェイで開催されたスーパーGT第4戦。スーパーGTは国内でも最大の人気を誇る「ハコ」(市販の自動車に近い外観の車両で競う)レースで、今回も5万2000人を超える観客が来場しました。ここではかつてレースカメラマンとして長年活躍し、現在は日本レース写真家協会(JRPA)特別会員である小宮岩男さん(以下、小宮さん)に、レース写真をスマホでカッコよく撮影するための知識やテクニックなどを教えていただきました。
ダイジェスト動画
【講師】日本レース写真家協会 特別会員 小宮 岩男
・プロフィール
1953年 東京生まれ。写真専門学校からモータースポーツにあこがれ、クルマ雑誌の写真部でアルバイト後フリーランスに。雑誌やクルマ関係の撮影をしながら日産/ニスモで20年間のオフィシャル写真を担当し、2013年にモータースポーツフォトグラファーを引退。現在は東京都府中市で観光農園「爺ヤンのブルーベリー畑」を経営している。
◆スマホについて
レンズ数や機能、処理能力など、機種によってカメラ性能も様々なスマホ。今回の撮影は「iPhone 15 Pro」を使用しました。特殊な機能などは使わずに撮影し、機種を問わずスマホできれいな写真を撮るための基礎知識やテクニックを紹介します。
◆ズーム機能を使う
サーキットでマシンを撮影する際に問題となるのが、観客席からコースが遠いということです。そのため、スマホのズーム機能を使って撮影するのがいいでしょう。最近のスマホは複数のレンズを持つ複眼タイプも増えてきていますので、その場合は倍率が高いレンズでさらに拡大するとマシンも大きく撮影できると思います。
〈3倍ズーム〉
〈6倍ズーム〉
◆「流し撮り」をマスターする
まずサーキットでマシンを撮影する際にポイントとなるのが、「流し撮り」という撮影方法です。これは走行するマシンを動く方向にスマホを移動させつつシャッターを切るというテクニックで、慣れるまでは練習が必要です。
これをマスターすると、背景が流れたスピード感ある写真が撮影できるようになります。ただしスピードが速いレーシングカーを撮影するのは最初は難しく、画面のフレームの中に入れることができないこともあるでしょう。またiPhoneの場合、液晶パネル内のシャッターボタンは「指を離した際に撮影される」ことはあまり知られていません。慣れるまでは遅れることがあるので注意が必要ですが、サイドボタンでシャッターを切る方法もあります。
〈流し撮りの成功例〉
マシンが画面のほぼ中央に収まっており、背景も流れていてスピード感ある写真になっています。タイヤも回転していて、躍動感も伝わってきますね。
〈流し撮りの失敗例〉
スピード感はありますが、マシン後部が画面に入り切っておらず、全体が撮影できていません。また「ピンぼけ」と思われるケースのほとんどは「手振れ」によるものです。タイミングに気を付けるとともに両脇をしっかり締めて撮影しましょう。
◆構図を工夫
レースは非日常感のあるイベントですから、現場ならではの雰囲気や臨場感が伝わるカットを撮影するのもおススメです。それには、構図を工夫すると上手に撮影することができるでしょう。
〈サーキットらしい要素を入れる〉
こちらはピットアウトするマシンを撮影したものですが、左側のゼブララインを多めに入れることで、これから加速していくような雰囲気のあるカットになっています。
〈画面に角度を付ける〉
コーナーを通過しているマシンは、水平ではなく外側に画面を傾けて角度を付けることで、荷重を受けている側のタイヤが踏ん張っているような印象を与えることができます。
〈余白をうまく使う〉
こちらはコーナーを立ち上がっていくマシンを後ろから捉えたカットですが、敢えて画面の右側に置くことで、左コーナーから右の縁石に乗り上げている雰囲気に加え、上下に路面を入れることで、マシンが登っていく様子を表現することができます。
◆レースの雰囲気を収める
スーパーGTのようなセミ耐久レースでは、走行時間も長いため、好きなコーナーに移動したり、ピット作業やパドックなどのさまざまなシーンを撮影することもできます。
〈スタートシーン〉レースで最も緊張感が高まるのがスタートシーンです。数十台ものマシンがエンジン音を轟かせ、一気に目の前を通り抜けていくのは迫力満点ですが、スマホでもこのような臨場感あるカットを撮影することができます。
〈ピット作業〉
耐久レースでは、給油やドライバー交代、タイヤ交換などを行うピット作業も醍醐味のひとつです。メカニックが迅速に作業している様子が伝わってきますね。
〈観客の盛り上がり〉
多くの観衆が集まるスーパーGTには、グランドスタンドに各チームの応援席も用意されています。毎周ホームストレートを通過するたびにフラッグをたなびかせる様は圧巻です。こうした観客も入れたカットはレースらしくていいですね。
〈コンディションの変化〉
40台以上のマシンが走行するスーパーGTでは、このように路面にタイヤのブラックマークが残ります。こういった部分も耐久レースらしい雰囲気があっていいですね。また、日の向きが変わることによって、あえて逆光にしたり、西日を入れたりするのもおススメです。
〈パドックの雰囲気〉
スーパーGTでは追加のパスを購入しなければなりませんが、「ピットウォーク」中にパドックエリアでマシン以外のカットを撮影するのもよいでしょう。チームのトランスポーターや交換用のタイヤ、ピット内の雰囲気にピットウォークのドライバーなど、様々なシーンが楽しめます。
◆レース写真撮影時の注意点
サーキットおよびレースの撮影は、現場の状況や環境ならではの注意したいポイントがあります。ここではそれらを紹介していきたいと思います。
〈金網が入りやすい〉
前述のとおりサーキットは観客席からコースが遠いところが多く、安全のため金網も高い位置まであるため、それを避けて撮影するのがポイントです。
〈マシンの後側を空けない〉
マシンの前方を空ける構図は加速感があっていいのですが、反対に後方を空けてしまうとやや先詰まり感のあるカットになってしまうので注意しましょう。
〈動きのあるカットを意識〉
こちらは右コーナーを抜けて、左コーナーへと進入するところを撮影したものですが、切り返しの場所ですとやや中途半端のように見えます。この場合は次の左コーナーの縁石に乗っている時に撮影すれば、動きのあるカットになるでしょう。
〈バランスを考える〉
2台が接近してバトルをしている場面なのですが、マシンが右側に寄りすぎていてバランスが悪くなっています。なるべく中央に配置して撮影するほうが良いでしょう。
〈撮影ポイントは早めに確保〉
スーパーGTの場合、観客席から撮影するアマチュアカメラマンも多く、例えばこちらの観戦エリアですとスタート前にこれだけ多くの人でにぎわっています。そのため撮影ポイントは早めに確保しておくのがおススメです。
◆まとめ
最後に、小宮さんにレース写真をスマホで撮影するポイントについて改めて伺ってみました。
やはり観客席からコースが遠いので、走行中のマシンを撮影するにはズーム機能が優れた機種のほうがいいですね。そうすると解像度があまり落ちることもなく綺麗な写真が撮れると思います。
また流し撮りをする際には、シャッタースピードが調節できるアプリを使用するのもひとつの方法だと思います。そうすると一層躍動感がある写真に仕上がるでしょう。
サーキットは撮影するシーンがある程度限られてしまいますが、その中でも構図や日の光、背景などを工夫して撮影するのも楽しみのひとつです。今回は雲がかかって撮影できませんでしたが、例えば富士スピードウェイでは富士山を背景にしたカットも可能だったりします。
スマホでレース写真を撮影するのは難しい部分もありますが、皆さんもいろいろな方法で是非トライしてみてくださいね。