- 2024/08/21
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【撮影のコツ】スマホ写真をいつもよりカッコよく!バイク編
好評いただいている「スマホ写真をいつもよりカッコよく」撮影するコツをご紹介するシリーズ第2回となる今回はバイク編です。
今回も、レースカメラマンとして活躍する日本レース写真家協会副会長の赤松孝さん(以下、赤松さん)に、スマホでバイクをカッコよく撮影するために知っておきたいことやテクニックなどを教えてもらいました。
【講師】日本レース写真家協会 赤松 孝 副会長
1956年、東京生まれ。上智大学理工学部電気電子工学科卒業。サラリーマン生活を経て、1986年からレースカメラマンとしての活動を開始。以降、2輪ロードレース専門誌での仕事を中心に、全日本ロードレース、鈴鹿8耐、MotoGPなどを撮影。
◆スマホについて
レンズ数や機能、処理能力など、機種によってカメラ性能も様々なスマホ。今回の撮影は「iPhone 15 Pro」を使用しました。特殊な機能などは使わずに撮影し、機種を問わずスマホできれいな写真を撮るための基礎知識やテクニックを紹介します。
◆愛車撮影にあたって気を付けたいこと
バイクの撮影を始める前の下準備として、以下をチェックしておくだけで仕上がりは変わります。ここはバイクを撮りなれたプロでもうっかり忘れがち。あとで写真を眺めてがっかり…なんてことのないよう、事前の確認がおすすめです。
〈チェックポイントその1〉
停め場所の足場は大丈夫か?
バイクの場合、近年のスポーツモデルなどではセンタースタンドの装備が省略されていて、サイドスタンドを使って駐車するケースも少なくありません。こうした場合は駐車位置に急勾配がないかをまず確認。バイクが傾きすぎたり、立ちすぎたりしていると安定せず危険です。また前後の勾配がきつい場所での駐車時にはギアを1速に入れておく、AT車の場合ならパーキングブレーキをかけておくことを忘れずに。ギアをニュートラルにしたままだと最悪の場合、勝手にバイクが坂道を動き出して転倒してしまうケースもありますので、くれぐれもご注意を。
さらに、サイドスタンドで駐車する際は足場にも気を付けたいところです。柔らかな土が露出した場所、特にぬかるんだ場所にサイドスタンドを立てると、地面にスタンドがめりこみ転倒に至ることがあります。撮影に限らず愛車でのツーリングなどの際は、土の上にサイドスタンドで駐車する場合を想定して市販のサイドスタンドパッド、あるいはホームセンターなどで購入可能な円柱タイプのゴム(上写真・右。外径や高さは各種あります。しっかりコシのあるものを選びましょう)をバッグに忍ばせておくといざというときに便利です。
〈チェックポイントその2〉
荷物がバイクに残っていないか、タンデムステップは畳まれているか
愛車の上にグローブやウエスが乗ったままだったり、タンデムステップが出しっぱなしだったり…。撮影を始める前には愛車をグルッとひと周りし、車体全体をしっかりチェックしておきましょう。
また、タイヤに付着した汚れも、濡らしたウエスなどで拭いてから撮影に臨むのも、美しい愛車写真を手に入れる第一歩となるはずです。
◆バイクの置き方・角度
バイクを撮影するにあたっては撮影する場所はもちろん、車両の置き場所とその角度は重要なファクターになります。被写体であるバイクをどこに置き、どの角度から撮影するか。太陽の光の当たり具合や、背景に写りこむモノなどを意識し、車両の駐車位置や撮影角度を決めましょう。
〈良い例〉
まずはバイクを主体とした撮影例です。背景は落ち着いた色味の木々や緑を選んでいます。撮影角度は、車両撮影としては最も定番の7:3(サイドビューとフロントフェイスの比率)です。ほどよく斜めから当たる光により、バイクのフォルムやプレスラインもうまく表現できています。なお、バイクを背景から少し離して置くこともポイントです。被写界深度(ピントが合った部分の前後のピントが合っているように見える範囲をいいます)が深くなりがちなスマホのカメラでは一般のデジタルカメラのように背景のボケは期待できませんが、それでも奥行き感を出すことで、バイクはより立体的に映えます。
〈悪い例〉
そしてこちらが悪い例。上の写真と同様に7:3で撮影してはいますが、背景に建物や看板、ごみ箱、トイレなどが写りこむことで、写真が散漫な印象となり、大事なバイクの存在感が薄れてしまいました。バイクを主体とした写真が撮りたい場合、いかに背景を整理するかが大事なポイントです。
◆レンズの違い
近年のスマホは、複数のレンズを持つ複眼タイプが主流になりつつあります。とはいえ、単眼レンズのスマホでも、ピンチアウト・ピンチインの操作により広角や望遠の写真を撮影することができます。次はバイクの撮影における、広角と望遠の特徴や使い方などを紹介していきましょう。
(1)広角側
その名の通り、広い角度で撮影できます。その特性は引きのない場所で背景を入れて幅広い範囲を撮影したいケースなどに有効です。ただし、車両に寄っての撮影ではクルマと違って小さな被写体となるバイクでは極端な歪みが出てしまいます。あえてデフォルメ感を出したい場合などを除き、スマホを使ってきれいにバイクのフォルムを撮影したい場合には、広角レンズではなく、標準から望遠レンズを選択するのが無難でしょう。
(2)望遠側
バイク撮影の基本は、離れた場所から望遠で撮ります。バイクが歪むこともなく、本来のフォルム・デザインを撮影できます。また、背景を圧縮して写しこめること、広角~標準レンズよりも被写界深度が浅くなる望遠レンズの特長を生かせば背景の整理も容易です。上の写真では、スマホに内蔵されることの多い背景ボケをコントロールする外部アプリケーション(以下アプリ)を使用しています。
〈アプリを使用しての失敗例〉
撮影時にたまたま撮れた、背景ボケをコントロールするアプリを使用しての失敗例も、載せておきます。アプリによるボケのコントロールはスマホに内蔵されるAIの判断によるもので、時として撮影者の意図とは違った写真になってしまうことがあります。アプリを使用する際には、撮影後に写真の仕上がり具合を必ずチェックしておきましょう。
◆構図の取り方
A. カメラの位置(高さ)
バイクの撮影は、カメラをどの高さで撮るかによっても印象が大きく変わります。
(1)ローアングル
しゃがみこんで地面に近い位置から撮影しました。バイクの迫力が出てカッコよく見えるため、雑誌などの撮影ではよく使われる撮り方です。クルマと違って被写体の小さなバイクでは、より迫力を出そうとプロカメラマンは状況によってですが地面に寝転がって見上げるように撮影することもしばしばです。
(2)ハイアングル
頭より高い位置からの撮影では、普段は見ることのないバイクの違った表情を写し取ることができます。また、どうしても背景が整理できない場所では比較的単純な路面を背景とすることで、愛車を切り取ることができます。階段に段差、スロープなど高低差のあるところからバイクを狙ってみましょう。
B. 構図
被写体である車両を、写真の中にどのようにレイアウトするか。写真の雰囲気を大きく左右します。
(1)日の丸構図
バイク(メインとなる被写体)を真ん中に配置することで強調する構図です。デジカメやスマホなどオートでピントが合う場合には意図せず被写体を真ん中にして撮影してしまうことが多いため、多くの写真がこの構図で撮影され、平凡なイメージとなってしまうことがあります。
(2)三分割構図
画面を縦横に三分割し、その線上や交点に撮影したい被写体やポイントになるものを配置する構図です。絵画などでみられる技法ですが、この写真でいえば背景の占有率をあげて強調することで、撮影場所の状況説明のほか、深い森から出てきたといったように写真自体に物語性を持たせる効果も期待できます。写真の撮り方に決まりはありません。いろいろな構図にチャレンジしてバイクの魅力を惹きだしましょう。
(3)正方形
SNSの定番でもあるスクエア。縦写真でレイアウトを決めると撮りやすいです。また、アイコン画像用などで撮影対象物を画角いっぱいに撮影するときにもよく使われます。この写真ではサイドビューとフロントフェイスの比率を1:9として画面いっぱいにバイクを配してみました。こうしたレイアウトでも、車体は中心に置くのではなく車両の前後どちらかにやや余白を設けることで、写真にアクセントが付けられます。
◆天気について
外で撮影する場合は、天候が写真の出来栄えを大きく左右します。とはいえ、外出時の撮影となれば、天気は運任せですよね。ここでは晴れと曇りの撮影の特徴を紹介します。
〈晴れ〉
太陽の光が多く、光の向きによって被写体の表情も様々な変化を見せます。「光の当たり方」の項目で紹介した、光が当たる向きを意識しながらバイクを置く場所や角度を調整して撮影しましょう。
なお、朝日や夕日の斜光線はバイクにより陰影を付け表情が豊かになるほか、昼間と比べ色温度が変わり、車体が赤みがかったり青みがかったり(時間帯により変わります)と、より個性的な「絵になる写真」が撮りやすくなります。ただし、昼間と比べ光量は減少しますので、シャッタースピードやISO感度をチェックした上で、手ぶれには注意して撮影しましょう。
〈曇り〉
曇り空の下では太陽の光も柔らかく、車体に陰影が付きにくく晴れていると影となり潰れる部分も比較的起こしやすくなります。つまり、光の影響を最小限に車体のフォルムやプレスラインなど車両本来のデザインを表現しやすいため、きれいな写真が撮りやすいのも曇りの特徴といえます。
◆応用編
ここからは応用編として、赤松さんが撮影時によく使うテクニックをいくつか紹介します。
(1)ハンドルを切って写真に動きを出す
バイク撮影時は、ハンドルは車体に対して真っすぐな方が格好良い写真に見えるものです。赤松さんもあくまでも好みと前置きした上で、特に必然性は感じないので基本はタイヤを曲げないで撮影するそうです。一方で、動きのある表現をしたい時などにはステアリングを切る場合もあるそうです。上の写真とは逆にこちら側にハンドルを切る場合もあります。
(2)トリミングで見せたい部分を強調する
特長的なエッジの効いたサイドビューを見せるため、あえて車体後半をトリミング(不要な部分を除いて構図を整えることを言います)処理した例です。水平にこだわらず、ハンドルを切ってフロントホイールを見せたことで、写真に動きも出せました。前述の通り、写真の撮り方に決まりはありません。じっくりとお気に入りの構図を探してみてください。
こちらはヘッドライトまわりに寄った作例です。特徴的なフェイスを強調するため、ヘッドライトはハイビームを点灯、アクセントにウィンカーのオレンジが欲しくてハザードランプを点灯し、タイミングを計りながら撮影しています。ヘッドライト上やカウルサイドのロゴで車名も分かります。
(3)そのバイクならではの形状を利用する
撮影に使用した、ホンダCBR250RRにはスクリーンが付いていましたので、そのスクリーン越しに風景を写しこんでみました。多少のゆがみはご愛敬です。スクリーンのないネイキッドバイクならメーター越しに風景を取り込むのもよいでしょう。「訪れた目的地」を表現する際などに有効です。高原に海辺、新緑、紅葉など四季折々のドラマチックなシーンの撮影に挑戦してください。なお、派手なキーホルダーは絵作りに違和感が出るケースもありますから、不要と感じたら撮影時には外してしまいましょう。ただし、キーホルダー自体が“大切な思い出”ならその限りではありません。
(4)車体左側から撮るときには
バイクの左側、すなわちサイドスタンド側からの撮影は、バイクがカメラ側に寝てしまうために綺麗にそのディテールが出しにくいもの。ここでは『まずは愛車撮影にあたって気を付けたいこと』の項で紹介した、円柱タイプのゴムを使って車体を少し起こせば撮りやすくなります。ただし、バイクが反対側に倒れてしまわないようにその高さには注意しましょう。
◆最後に
赤松さんにスマホでのバイクの撮影について、改めて伺いました。
「バイクで出かける場合、大きなカメラを持ち歩くことを考えれば、スマホでの撮影は便利なものです。特に最近のスマホは高性能になって写真がよりきれいに、そして自然に撮れるようになりました。その分、やはり背景には余計なものが写りこまないように注意も要ります。写す範囲を決めたら、シャッターを押す前にもう一度、スマホのモニター上に写りこむ背景を確認する余裕を持つことで、失敗は少なくなります。
とはいえ、難しく考えることはありません。そして、気になる景色を見つけたら、とにかくシャッターを押す。写真はなにより記録ですから、シャッターを押した分だけ楽しい思い出も写真として残ります。ぜひ、楽しみながら最高の1枚を手にしてください」とアドバイスをいただきました。
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