レジャーだけでなく災害時も活躍 電動車による給電

近年は巨大地震や記録的大雨など甚大な被害をもたらす自然災害をはじめ、アウトドアやリモートワークなど多岐にわたって電源確保の需要が高まっています。ハイブリッド車(HV/HEV)、電気自動車(EV/BEV)、プラグインハイブリッド車(PHV/PHEV)、燃料電池自動車(FCV/FCEV)といった電動車の多くは給電機能や電源コンセントを備えており、災害時には「緊急用電源」として活用できます。今回は〝移動できる電源〟として、電動車の給電機能を正しく利用するポイントについて紹介します。

災害の影響で停電など、さまざまな場面でライフラインが長期間使用できなくなる事態が想定されます。特に冷暖房などの家電製品や、災害情報を得るスマートフォンなどの通信機器は、高齢者・障がい者や乳児、ペットなどの命や健康を守る重要な手段となります。

ここでは、最も手軽で簡単な電動車内のコンセントから給電する仕組みに関して説明します。

電動車は、災害時の緊急用電源として、駆動用電池またはエンジン作動で発生した直流電力を車載インバーターで交流電力(AC100V、最大消費電力1500W以下)に変換してコンセントから供給する「AC給電機能」を持っています。ただし、AC給電機能の使い方は自動車メーカーや各車種によって異なりますので、使用前に取扱説明書などで十分な確認が必要です。

電動車ユーザーが給電で注意しなければならないのは、電気製品は一般的にAC100Vの商用電源コンセントに接続して使用することを前提に設計されている点です。このため、➀商用電源コンセント以外からの給電を想定していない、➁住宅コンセントから供給される商用電源とは完全に同じではないことから、電気製品を使う場合、家庭と全く同じ安全・性能が保証されないというリスクについて理解が必要となります。

電動車の走行中も、電気製品が振動・急停止などで転倒・落下する恐れがあるほか、粉塵の多い場所や直射日光の当たる場所、雨・水のかかる場所では使用しないことが重要です。
一方、クルマの室内温度・屋外温度は極寒地や炎天下ではマイナス30~80度までにもなるケースも見込まれ、作動不良や故障につながる可能性がありますので、電気製品は車内や屋外に放置しないようにしましょう。

使用の際は自工会の電気製品への給電に関する注意をまとめたページや、各車の説明書を確認の上、ご使用ください。

出典・トヨタ自動車

東京電力エナジーパートナーが7月に実施した全国の20〜59歳の男女500人を対象とした「防災対策に関する意識調査」によると、災害時に不安を感じることに「電気が使えなくなる(停電)」を挙げた人が72.6%に上り、電動車が不安解消の一助になる可能性も示されています。

電動車には、フロントコンソールやラゲッジルームなどにコンセントが標準またはオプション設定で装備されています。コンセントがあれば特別な機器を用意する必要がなく、車両のみで給電できます。「非常時給電システム」が付いた電動車では、災害など非常時に車両の走行機能を停止した状態で、コンセントから給電可能です。

給電の種類(一例)

なお、ガソリン車でもAC電源が標準またはオプションで装備されている車種があるほか、カー用品店でシガーソケットをACに変換する商品もありますが、これらは最大でも容量が120W程度であるため、故障や火災防止のためにも接続する電気製品の消費電力をよく確認しましょう。

ここ数年はコロナ禍を背景に、アウトドアやリモートワークなどに取り組むクルマユーザーも急増中です。公私の〝ツール〟のひとつとして、クルマの価値が見直され、給電機能を搭載した電動車の必要性も一段と高まっています。アウトドアでは給湯器など電気製品、リモートワークでもノートパソコンなどモバイル端末が欠かせません。

自動車メーカー各社も、暮らしを支える生活インフラとして電動車の投入や給電機能の採用を積極化しています。例えば、日産自動車EV「サクラ」、スバルHV「フォレスター」、三菱自動車「アウトランダーPHEV」、マツダPHV「CX-60」、トヨタ自動車HV「ヤリス」など、国内では給電機能搭載車の市場投入が相次いでいることを知るクルマファンも多いでしょう。

大規模災害の多発化を受け、自動車メーカー各社や系列販売店は災害発生時における電力の確保を目的として、全国の自治体と連携を図り、各地で電動車を被災地・避難所へ派遣する「災害時協力協定」などを結ぶ動きを活発化させています。

クルマは日常生活に欠かせない移動手段ですが、〝災害への備え〟の一環として、ユーザーには電動車の給電方法を改めて確認しておくだけでなく、使用時の注意点も十分理解することが求められます。自工会も電動車ユーザー向けにウェブサイトにて給電方法や注意事項について詳しく情報発信していますので、ぜひ参照してください。

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各社の給電車紹介情報まとめ | JAMA – 一般社団法人日本自動車工業会

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2022/10/05 電動車による給電の最新事情