SIP自動運転プロジェクトを振り返る、最新技術を集めた試乗会が開催

日本の自動運転開発の旗振り役といえるのが、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「自動運転プロジェクト」です。2014年にスタートした同プロジェクトですが、現在は18年4月から23年3月までの第2期の取り組みを進めています。同プロジェクトでは、9月29日から10月1日まで3回目となる「SIP-adus 実証実験プロジェクト試乗会」を東京臨海部で開催。これまでの9年間の活動を振り返るとともに、自動車メーカーやサプライヤー各社の最新技術を搭載した自動運転車両が一堂に集まりました。

14年にスタートしたSIP自動運転プロジェクトですが、第1期では自動運転の実用化に向けた法整備や、高精度三次元地図の実用化などに取り組みました。その結果、高精度三次元地図を提供するダイナミックマップ基盤の設立をはじめ、安全技術ガイドラインの策定、道路運送車両法改正、さらにレベル3および4の自動運転車の基準を策定し、世界で初めてレベル3の型式指定を実施するなど、自動運転分野において日本が世界をリードするまで存在感を高めました。

さらなる自動運転の進化に向けて、現在取り組みを進めているのが第2期です。22年までの第2期の主な研究テーマとして「実証実験」「技術開発」「社会的受容性の醸成」「国際連携」を掲げています。

試乗会ではこれまでの活動を振り返り、狙いや成果などを解説した

実証実験は19年10月から22年2月まで東京臨海部の3地域で実施しました。目的としては、協調領域での技術仕様の決定や標準化の推進、研究開発の活性化による自動運転の実用化やインフラ整備の加速、情報発信やイベントへの活用による自動運転に対する社会的受容性の醸成などです。SIPが交通環境情報の配信や利活用など実証実験環境を構築し、参加者が実験車両や要因を提供するマッチングファンド方式を採用して国内外でオープンに参加者を募った結果、延べ30の国内外の自動車メーカーやサプライヤー、大学などが参加して、実際の交通環境下を実験車両で走行しました。

9月29日から3日間開催した試乗会では、試乗車20台と展示車10台の計30台の車両が集まりました。実証実験での試験車両のほか、自動車メーカーやサプライヤーなどが自動運転関連の技術開発で使用している車両も持ち込むなど、会場はさながら最新の自動運転技術のお披露目会といった様相となりました。SIP-adusプログラム・ディレクターの葛巻清吾氏は「このような試乗会の開催で自動運転への理解を広げることが社会的受容性の醸成につながります」と説明します。

自動車メーカーやサプライヤーの開発車両や実証実験車両などが揃った

第二期では、仮想空間での安全性評価環境の構築にも取り組んでいます。様々な交通環境において再現性の高い安全性の評価を行うために、産学10団体が参画するコンソーシアム「DIVP」を発足。リアル環境における実験評価と代替え可能な実際の現象と一致性の高いシミュレーションモデルを開発しました。そのほかにもサイバー攻撃に対する監視・検知能力の評価基準の策定や、モビリティ分野の多種多様な交通環境情報を一元的に集約して新たなビジネス創出のためにビジネスマッチングを支援するポータルサイト「MD communet」を立ち上げました。

これまで将来的な自動運転社会の構築に必要な基盤の整備を進めてきたSIP自動運転プロジェクトですが、葛巻氏はこれまでの活動を振り返り「産官学や国際連携が進んだのが最大の成果」と説明します。これまで日本が苦手とされてきた産官学の立場を超えた連携の成功事例がSIP自動運転プロジェクトと言えそうです。

SIP-adusプログラム・ディレクターの葛巻清吾氏

一方で、自動運転開発は道半ばです。国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏も「自動運転開発は、箱根駅伝的には往路で頂上に来たところ。復路にバトンタッチしていかなくてはいけない」といいます。日本の産業競争力にもつながる自動運転開発。23年3月に終了する第二期以降の取り組みに関心が高まっています。

国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏

 

2021年SIP自動運転試乗会