旧車展示イベントで振り返る「昭和の車」

4月29日は「昭和の日」です。60年以上続いた昭和の時代は、日本の自動車産業が大きく発展した時代でもありました。マイカーブームの先駆けとなった車や、機能美あふれるスポーツカーなど、個性的なデザインの車が数多く登場し、今でも名車として語り継がれています。今回は2つの旧車展示イベントの模様から、この時代の車を振り返ります。

今年で14回目となった「Nostalgic 2days」(ノスタルジック・ツー・デイズ)が、2月18、19日にパシフィコ横浜(横浜市西区)で開催されました。数多くの旧車が展示されるこのイベントは、見て楽しむだけでなく、展示車両を購入することもでき、毎年、旧車ファンが大勢集まります。今年は自動車メーカーや旧車販売店など150社が出展。特別展示や各種イベントも開催し、特別展示を含め合計230台の車両が展示されました。来場者数は昨年(2万9892人)を22.1%上回る3万6513人と過去最高となりました。

開幕を待つ来場者の列

昭和の車を懐かしむ人たちで賑わった会場内

展示車を購入することもできる

会場内で特に目を引いたのは、イベントのイメージ車両となった「トヨタ2000GT」(後期型)です。1967年10月の第14回東京モーターショーに登場したショーカーをイメージさせる金色の車体が異彩を放ちました。特別展示「日産スポーツカーの変遷」では、「NISSAN GT-R 」(2023年式)と「フェアレディZ」(22年式)の日産の2大スポーツカーが並びました。

今回のイベントのイメージ車両「トヨタ2000GT」

特別展示「日産スポーツカーの変遷」

日産モータースポーツ&カスタマイズ(横浜市鶴見区)のNISMO(ニスモ)は、「スカイラインGT-R(R34型)」のチューンアップ車を出展しました。ブースにはヘリテージパーツも展示し、旧車を乗り続けたいファンの心を捉えました。マツダは「マツダRX-7」と、そのレストア途中のボディを展示し、来場者の関心を引いていました。また、いすゞ乗用車専門店のブースには、「ベレット1600GTR」が登場しました。

NISMOはチューンドカー「NISMO R34 GT-R Z-tune」を展示

マツダブースでは「RX-7」を展示

RX-7のレストア途中のボディも

いすゞ乗用車専門店のブースには「ベレット1600GTR」

会場には1980年代のハイソカーブームをけん引したトヨタ「マークⅡハードトップ グランデ ツインカム24」(1986年式)や、スキーブームで人気となったトヨタ「セリカ2000GT-FOUR」(1987年式)など、数多くの昭和の車が展示され、会場は車が若者の憧れだった時代にタイムスリップした雰囲気に包まれました。

80年代のハイソカーブームやスキーブームで人気となった車も(上:トヨタ マークⅡ ハードトップ グランデ ツインカム24、下:トヨタ セリカ2000GT-FOUR)

4月14~16日には「AUTOMOBILE COUNCIL 2023」(オートモビルカウンシル)が幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催されました。外国車を中心としたヘリテージカーが100台以上並ぶこのイベントですが、最近では自動車メーカーが新型車を披露することも増えました。その結果、半世紀以上前に生まれたクラシックカーから1980年前後~2000年代初頭のいわゆる「ヤングタイマー」、そして最新のモデルまでが会場に揃います。今年は過去最高の102社が合計170台の車両を展示し、3日間の来場者数は前年を29.4%上回る3万4993人となりました。

過去最多の出展者数となったオートモビルカウンシル

16年に始まったオートモビルカウンシルは今年で8回目を迎えました。今年のテーマは「Classic Meets Modern and Future」(クラシック・ミーツ・モダン・アンド・フューチャー)で、自動車メーカーも4社が計16台の車両を展示しました。
 
日産自動車は2022年発売の軽自動車EV「日産サクラ」とともに、1989年式のコンパクトカー「パオ」や98年式のスポーツカー「フェアレディZ」を展示し、若年層からシニア世代まで幅広い年齢層の車好きが共に楽しめる空間をつくりました。

日産は最新のEVから懐かしの名車までを展示

「マイカーへの愛情」をテーマとしたトークイベントも開催しました。パオとフェアレディZの2人のオーナーとともに、日産がレストアした90年式「セドリック シーマ」のオーナーでもある女優の伊藤かずえさんが参加。3人は愛車との出会いやオーナーだからこそ気付ける魅力について語りました。

「シーマ」のオーナーでもある女優の伊藤かずえさん(右から2番目)らが登壇したトークショー

マツダが国内初披露したのが、発電用にロータリーエンジンを搭載したプラグインハイブリッド車(PHEV)「MX-30 e -SKYACTIV R-EV」です。マツダのシンボルでありながら、2012年に生産を終了したロータリーエンジンですが、プレスカンファレンスで青山裕大取締役専務執行役員が「ロータリー車のお客さまやファンの方々を裏切ってはならない使命感がある」と話したように、顧客との絆のためにマツダの技術陣が強い意思で蘇らせたモデルです。

ロータリーエンジンで発電する「MX-30」のPHEVを国内初披露

新型車は小型で高出力なロータリーエンジンを発電専用に使用し、PHEVの性能を高めました。日本でも発売する予定で、青山取締役は「電欠を心配することなく、モーター駆動ならではの、意のままの走りを楽しんでいただける」と紹介しました。

マツダのブースはロータリーエンジン車の歴史がテーマ

このほか、マツダブースでは水素ロータリーエンジンの「RX-8ハイドロジェンRE」や、性能を維持した上で燃費を40%改善し、昭和51年度排出ガス規制をクリアした「コスモAP」も展示し、ロータリーエンジンならではの拡張性を生かした、さまざまな可能性に挑戦してきた歴史を伝えました。

1948年の創業から75周年、そして1963年の四輪事業進出からは60年目を迎えたホンダは、この頃の開発者や会社を支えてきた人々の情熱を未来に伝えようと、「1962年、ホンダ四輪車進出前夜」というテーマ展示を行いました。ブースでは当時の車両開発風景や62年の「第9回全日本自動車ショー」の写真を展示するとともに、四輪開発の源流となる「第3研究課」誕生秘話や、四輪事業参入にかけた思いをパネル展示でつづりました。

ホンダは四輪事業参入60周年をテーマに出展

開発を行いながらも発売には至らなかった「スポーツ360」と、翌年にホンダ初の四輪車として発売した「T360」の車両2台も展示し、当時を懐かしむ来場者の関心を引きました。広報部 商品・技術広報課の三浦元毅主任は、「当時の四輪事業参入に向けた会社の勢いや車両開発に携わったエンジニアたちの思いを来場者に伝えたかった」と話しました。

ホンダ初の四輪車「T360」

初出展となった三菱自動車は、PHEV「アウトランダーPHEV」や軽EV「eKクロスEV」といった最先端の電動車や、モータースポーツに参戦した車両など計5台を並べました。アジアクロスカントリーラリー参戦車両や2014年のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに参戦した「MiEV Evolution III」を展示し、50年以上にわたるモータースポーツ活動で培った四輪駆動技術の歴史を紹介しました。

三菱自動車はモータースポーツ活動と四輪駆動技術の歴史を紹介

ラリーやヒルクライム参戦車両と最新のPHEVやEVを展示

数多くのヘリテージカー販売店のブースには、購入できる旧車が展示されました。日本の車では「トヨタ スポーツ800」(1969年式)、「トヨタ カローラレビン」(1973年式)、「ダットサン フェアレディ(1969年式)、「日産スカイライン 2000 GT-R」(1972年式)など、昭和の時代に一世を風靡した名車が並び、きれいにレストアされたエンジンルームの写真を撮る来場者の姿もみられました。

昭和を彩った日本のヘリテージカーも展示された

トヨタ スポーツ800

トヨタ カローラレビン

ダットサンフェアレディ

日産スカイライン 2000 GT-R

 

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