「第27回自動車安全技術国際会議」(ESV国際会議2023)が20年ぶり日本で開催 自動車メーカーも技術をアピール

第27回自動車安全技術国際会議(ESV国際会議2023)が4月3~6日、パシフィコ横浜ノース(横浜市西区)で開催されました。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)国土交通省経済産業省の共催によるもので、事務局は日本自動車研究所(JARI)が務めました。日本での開催は2003年の名古屋以来、20年ぶりとなり、展示会には自動車メーカーも出展し、最新技術をアピールしました。

ESV国際会議は世界規模で行われる自動車安全に関する唯一の国際会議で、2年ごとに米国、日本、欧米諸国などで開催しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で4年ぶりの開催となった今回は、「次の50年に向けたすべての人のための先進的で公平な車両安全」がテーマとなりました。子どもや高齢者といった交通弱者保護のための安全技術や自動運転、人工知能といった分野の発表や議論が行われ、4日間で20を超える国から約1400人が参加しました。

初日に行われた全体討論会は「エイジング・ソサエティ(高齢化社会)」をテーマに行われ、日米欧の産業界代表や高齢者の運転特性などの研究者が意見を交わしました。この中で国交省の野津真生自動車局次長は、ペダル踏み間違い時加速抑制装置など、高齢者向け運転支援技術の普及に向けた取り組みを紹介しました。また、自工会安全技術・政策委員会委員の吉澤隆(日産自動車常務執行役員)が日本の自動車業界を代表して講演し、高齢者事故の実態とその防止に向けた取り組みについて説明しました。

全体討論会では自工会安全技術・政策委員会委員の吉澤隆が講演

展示会では自動車メーカー各社が先進運転支援システムや自動運転の取り組みを紹介し、多くの会議参加者が見学に訪れました。

日産自動車は、先進運転支援技術「プロパイロット」を紹介しました。高速道路での同一車線内ハンズオフ走行を実現した「プロパイロット2.0」を搭載したEV /BEV「日産 アリア 」も展示し、来場者の関心を引きました。

自動車メーカー各社が最新の安全技術をアピールした

トヨタ自動車は燃料電池車「MIRAI(ミライ)」や電気自動車(BEV)「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」といった環境対応車の展示とともに、予防安全技術「トヨタセーフティセンス」を紹介しました。屋外では「パーキングサポートブレーキ」などの同乗体験会を行い、会議参加者らがシステムの作動を体感しました。

マツダは「ドライバー異常時対応システム」を出展しました。ドライバーの異常を検知すると減速・停止を自動で行い、高速道路では路肩退避まで行うことができるシステムです。展示した「CX-60」で疑似体験できるようにしました。

スバルは運転支援システム「アイサイト」の最新技術を紹介しました。新型はステレオカメラに超広角の単眼カメラを組み合わせ、視野角を128度に広げました。ブースではこの「新世代アイサイト」を搭載した「クロストレック」を展示しました。

ホンダはEV「ホンダe」を用い、ヘッドライトによる表示や通信技術、人の状態特性を把握する技術によって、車と歩行者、二輪車が相互に道路交通上のリスクを認識する技術を披露しました。二輪車では新型エアバッグや、車のADAS(先進安全運転支援システム)からの認識を向上する技術を出展しました。

会議の合間には多くの参加者が展示会を見学

三菱自動車は主力市場である東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の交通事故を分析しました。ASEAN諸国では多くの事故に二輪車が関わっているといいます。このため同社は二輪車との衝突事故を念頭に置いた安全技術の開発に取り組んでいます。

スズキやダイハツ工業は、地域の交通課題を解決するための自動運転実証実験をそれぞれ紹介しました。スズキは小型車「ソリオ」、軽トラック「キャリイ」の自動運転実験車両と多くのADAS機能を搭載した軽自動車「ハスラー」の展示、紹介を行いました。自動運転車はいずれも「レベル2」(特定条件下での自動運転機能)の自動運転ですが、将来は「レベル4」(限定地域での条件付き自動運転)を目指し、地域交通、農業の課題の解決を図ります。

ダイハツは、神戸市北区の高齢化が進む住宅地で行った実証実験に使用した軽自動車「タント」の自動運転車を展示しました。カメラとLiDAR(ライダー)、GPS(全世界測位システム)などを搭載し、「レベル3」(条件付き自動運転)相当で法定速度(現地法定速度は時速40km/h)以下で走行するものです。

大型車メーカーではいすゞ自動車が「商用車メーカーとしての安全の考え方」「大型&小型トラックの使われ方」「商用車ならではの課題」をテーマに出展しました。小型トラックの新型「エルフ」を展示し、進化版のADAS(先進運転支援システム)も紹介しました。