ラリージャパン2023、トヨタが表彰台を独占

2023年世界ラリー選手権(WRC)の最終戦「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」が11月16~19日、愛知と岐阜の両県で開催されました。結果は、トヨタ自動車のエルフィン・エバンス選手(ドライバー)とスコット・マーティン選手(コ・ドライバー)が優勝し、トヨタ勢が上位3位を独占しました。地元・愛知県出身の勝田貴元選手は、2日目にクラッシュして最下位まで順位を落としたものの、猛追して5位に入りました。今年は主催者に愛知県豊田市も加わり、豊田スタジアム(同市)に特設コースを設置。多くの観客が身近に観戦できる環境が整い、国内外のラリーファンが熱狂しました。

WRCは1973年にスタートした半世紀の歴史を誇る世界最高峰のラリー競技です。サーキットを周回するレースとは異なり、ラリーは封鎖した一般道でタイムを競う競技区間の「スペシャルステージ(SS)」と、SS間の公道を交通法規を守りながら一般車両に混じって移動する「リエゾン」で構成されます。ラリージャパンのSSとリエゾンは、5市1町にまたがる約970kmにも及びます。

今年のラリージャパンで最大の見どころとなったのが、豊田スタジアム内でのスーパーSS(SSS)です。同スタジアムは普段はサッカーなどの競技が行われていますが、芝生をすべてはがし、全面をアスファルト舗装して専用のコースを設置しました。芝生はトヨタが運営する富士モータースポーツフォレスト(静岡県小山町)などで再利用すると言います。

最大の見どころとなった豊田スタジアムSSS

通常のSSは1台ずつ走りタイムを競いますが、豊田スタジアムのSSSでは2台が同時に走行するのが特徴です。豊田市の担当者は「前回、スタジアムには6万人が訪れたが、実際の競技を観戦することはできなかった」と話します。最も集客を図ることができる豊田スタジアムでSSを実施することで、より多くの観客がラリー競技を間近で体感しました。今回の有料観客席の来場者数は9万300人となり、そのうち、同スタジアムの来場者数は6万7600人でした。

SSSでは2台同時にタイムを競う

前年開催を踏まえた改善の取り組みは、愛知県岡崎市で開催したSSSで見られました。前年の岡崎SSSは乙川河川敷(同市)で開催しましたが、ラリー車両が疾走すると砂煙が舞い、競技がほとんど見えなくなる問題が発生しました。今年は岡崎中央総合公園(同市)に会場を移し、コースを舗装路に改めました。コースレイアウトも工夫を凝らし、身近に競技が体験できる観覧エリアも多く設置しました。

昨年の問題点を踏まえ、会場を変更した岡崎SSS

ラリー競技は広域にSSが点在します。ラリージャパンの開催エリアは、愛知県の豊田市、岡崎市、新城市、設楽町と岐阜県の恵那市、中津川市の5市1町にまたがります。今回、主催者に加わった豊田市はヘリコプターを活用した観戦スタイルにも挑戦しました。フィンランドなどで開催されるWRCでは、ヘリを使ってSS間を移動する観戦スタイルが定着していますが、日本では法規やコストが課題となっています。今回、ヘリ発着場所を5カ所確保して試験的に観戦ツアーを組みました。来年以降は、ヘリの数を増やすなどして富裕層向けのプログラムを検討しています。担当者は「ヘリを活用したホスピタリティープログラムで上げた収益を、子どもたちの招待費用などに充てたい」と話します。

昨年のラリージャパンは、ヒョンデチームが1、2位となりました。トヨタは12年ぶりの母国ラリーで悔しい敗北を喫しましたが、今年は上位3位を独占し、見事にリベンジを果たした格好です。WRCトップカテゴリー「ラリー1」で唯一の日本人ドライバーの勝田選手は、昨年の3位入賞から今年は優勝を目指しましたが、2日目のSSでクラッシュ。一時は最下位まで順位を落としたものの、その後のSSでトップタイムを連発して5位まで順位を上げました。

トヨタ勢が上位を独占した

トヨタの参戦と日本人ドライバーの活躍、そして地元自治体の取り組みが奏功し、今年のラリージャパンの来場者数(速報値)は、イベント参加や沿道の応援なども含め、4日間で延べ53万6900人に上りました。トヨタの豊田章男会長は、「このラリーを続けていければ、モータースポーツが文化となって日本にさらに根付いていけると信じている」と語ります。ラリージャパンは来年も愛知と岐阜の両県で11月21~24日、開催される予定です。

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