- 2024/04/10
- JAMAGAZINE, その他, モビリティ
選択肢はいろいろ クルマの新しい乗り方
就職や異動などをきっかけにマイカーの購入を検討する人は多いでしょう。ただ、そうはいっても、車の使い方や予算によって、最適な方法は異なります。自動車メーカーは、若い人にも車に乗ってもらいやすいよう、さまざまな選択肢を用意しています。その一部を紹介します。
まず新車を手に入れるのには主に以下の方法があります。1つは現金での購入、次に一般ローン、最後に残価設定型ローンです。自工会がまとめている「乗用車市場動向調査」の2021年版によると、現在保有している車の購入方法は、「現金一括で購入」が56%と最も高く、「一般のローン/クレジットを利用して購入」が21%でした。現金一括で購入する人は、首都圏中心部や60歳以上で60%以上に上り、一般のローン/クレジットの利用は、家族形成期や30~50歳代の女性が全体と比較して高い傾向にあります。また、次回の予定購入方法についても、現金一括が57%、一般のローン/クレジットが28%と、現金払いや一般ローンを選ぶ人は依然として多いことが分かります。
「残価設定型」も選択肢の一つ
一方、現在保有している車の購入方法では、20%の人が「残価型設定あるいは据え置き型のローン/クレジットを利用して購入」と回答しました。現金一括払いや一般のローン/クレジットが主流ではありますが、これとは別の、新しい車の乗り方を選択する人がこれから増える可能性があります。
残価設定型ローンとは、将来の下取り額を予め決めておき、車両価格から下取り額(残価)を差し引いた額を分割で支払っていく方法です。一般のローンに比べ、ローンの対象となる金額が小さくなるため、月々の支払額が少なくなるメリットがあります。例えば、三菱自動車工業が2月に発売した「トライトン」の場合、60回払い(5年払い)で、走行距離を月間1千km以内に制限した場合、63%(23年12月の受注開始時点)という高い残価率でローンを組むことが可能です。現金や一般ローンでは手が届きにくい憧れの車も、残価設定型を利用すれば乗ることができるかもしれません。
若年層には〝サブスク〟もおトク
自動車メーカーは、サブスクリプション(定額利用)やフルサービスリースと言われるサービスも用意しています。スズキの「スズキ定額マイカー7(セブン)」やトヨタ自動車の「KINTO(キント)」、日産自動車の「Click Mobi(クリックモビ)」、本田技研工業の「楽らくまるごとプラン(楽まる)」、三菱自動車の「ウルトラマイカープラン」などが、これに該当します。SUBARUもキントと提携し、24年初夏には、スバル車をキントで利用できるようになります。
サブスクリプションサービスの契約方法など、細かな部分はメーカーによって異なりますが、メンテナンス費用や税金に加え、自動車保険(任意保険)料までがパック料金に含まれるものもあります。自動車保険料は通常、運転経歴の浅い若い人ほど高く設定されるため、パック化されることによって、若い人にとっては保険料負担を軽減できるメリットがあります。オンラインで契約できるサービスもあり、契約の煩わしさを軽減できることも、サブスクリプションサービスの利点と言えます。
また、メーカーによっては中途解約がしやすいプランも用意しています。基本的には3、5、7年などの契約期間の中から、自分のライフプランや予算に応じた期間を選択して利用するのがサブスクリプションサービスですが、転勤や結婚などで車に求める条件が変わる場合もあります。通常は中途解約金が発生しますが、サービスや条件によっては免除される場合もあるため、契約時に確認しておくことをおすすめします。
トヨタのキントでは、契約期間中の付加価値を高める新しい試みを用意しています。例えば、23年にプリウスから始めた新しいサブスクリプションサービスでは、納車後、技術革新にあわせて車をアップグレードできるよう、専用の設計を車両にあらかじめ搭載し、駐車支援機能などの後付けを実現したほか、コネクティッド技術で運転スキルを分析し、アプリを通じてアドバイスすることにより、通常下がる車の価値を維持する独自の仕組みを構築しました。価値を維持する分をサブスクの月額の引き下げにあらかじめ充てることで、リーズナブルに利用できるようにしています。24年からはこのサービスの対象をヤリス、ヤリス クロスにも拡大しました。
サブスクリプションサービスには、中古車を対象にしたサービスもあります。ホンダ、トヨタなどが提供しており、新車以上に割安な価格で車両を利用できることがメリットです。例えば、ホンダの「マンスリーオーナー」は、月額料金に税金やメンテナンス費用、保険料を含んでいます。この点は新車のサブスクリプションサービスと同じですが、最短1カ月から利用できる点が特徴です。長期の出張などで一時的に車を使用したいというニーズにも応えられるサービスです。
車に関するさまざまな手続きを一括で申し込むことのできるサブスクリプションサービスですが、忘れてはいけないのが駐車場の確保です。必要な書類さえ用意すれば警察署への車庫証明の届け出は販売会社が代わりに行ってくれますが、自宅に駐車スペースがない場合は、自分で駐車場を見つけて契約する必要があります。サブスクリプションサービスの中には駐車場検索サイトと提携し、お得に駐車場を借りられる方法を用意しているものもあるため、よく確認してみましょう。
中古車を用品でバージョンアップする方法も
サブスクリプションサービスの場合、サービス期間終了後は車を返却することを前提としていますが、「車を自分のものにしたい」という人もいるでしょう。環境や安全面の規制強化、原材料価格の高騰を背景に、新車の価格は少しずつ高まっているだけに、中古車も選択肢に入れ、「最初のマイカー」を選ぶ人も多いと思います。中古車を選択することに不安を感じる人もいるかもしれませんが、メーカー系のディーラーで販売している「認定中古車」は、厳しい基準を満たしています。
メーカーの認定中古車には、付加価値を付けて販売するサービスも広がっています。日産自動車が奈良日産(田代雄亮社長、奈良県大和郡山市)と共同で1月に開始したのが、「キューブレトロリノベーション」というサービスです。ユーザーの希望に応じ、劣化のある内装品やヘッドライトなどの外装品を専用のカスタマイズパーツなどに交換・装着することができます。ベースとする「キューブ」の認定中古車は、100万~120万円程度で流通しています。約7万円から利用できる用品パックを合わせても、手頃に高品質な中古車を購入できます。
ホンダも1月から所定の用品を搭載した認定中古車を「いまコレ+(プラス)」とし、販売を開始しました。最新のカーナビゲーションシステムや、踏み間違い時加速抑制システムなどを搭載することにより、年式の古い中古車でも、必要十分な機能を手に入れることができます。
来店せずに購入
20年から続いた新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、オンラインでの車の販売も広がりました。ホンダの「ホンダオン」では、オンラインで商談、見積り、査定、契約までの手続きを完結でき、実店舗に行く必要があるのは、納車の時だけです。オンラインでの手続きは、前述のトヨタのキントでも対応しており、遠方にしか店舗がない場合や、購入する車を決めている場合は、オンライン販売システムを使用することで、購入の際の負担を軽くすることができます。ホンダが23年に始めた中古車のオンライン販売サービスの場合は、輸送費を支払えば、自宅に納車してもらうことも可能であるため、一度も実店舗に行かずに車を購入することが可能です。もちろん、内外装の質感や乗り味の確認は実店舗でなければ難しい面もあります。ただ、近隣に実店舗が無い場合は、試乗の代わりにカーシェアリングサービスを活用するのも一つの方法でしょう。
「100年に一度の大変革期」と言われる自動車産業ですが、技術の進化だけではなく、乗り方の多様化も進み、ユーザーの細かなニーズに応えられる選択肢が用意されています。自分にピッタリの車を賢く、お得に乗る方法を研究してみてはいかがでしょうか。
※2024年3月時点での情報です。