【今さら聞けない】シリーズ レース用語編

モータースポーツの2024年シーズンが始まりました。今年は電気自動車(EV/BEV)の最高峰レース「フォーミュラE」が日本で初めて開催されたほか、フォーミュラ1(F1)も4月に鈴鹿で開催されるなど、モータースポーツが例年以上に盛り上がっています。レース観戦を楽しむために知っておくと便利なレース用語や基本的なルールを解説します。

■マシンの種類

レースに参戦するマシンは、専用に設計されたレーシングカーです。一口にレーシングカーといっても、レースのカテゴリーによって、複数の種類があります。代表的なものを紹介します。

フォーミュラカー
フォーミュラカーは国際自動車連盟(FIA)が定めたレースマシンです。1人乗りで、4本のタイヤが露出していなければならないなどの規定があります。このフォーミュラカーを使ったレースの最高峰カテゴリーがフォーミュラ1(F1)です。

フォーミュラカー

プロトタイプカー
プロトタイプカーとは、タイヤがカウル(ボディ)に覆われているのが特徴のマシンです。世界耐久選手権(WEC)に代表されるレースカテゴリーに出場しています。

プロトタイプカー

GTマシン
GTマシンは市販車をレース専用として改造したものです。GTとは「グランドツーリング」の略で、スポーツカーなど、主に高性能車の名称に使われます。スーパーGTなどに参戦するマシンが該当します。

GTマシン

■フラッグの種類

レース中は、さまざまなフラッグ(旗)によって、ドライバーに危険の存在を知らせたり、ルールに基づいた指示を行ったりします。各フラッグの意味を説明します。

国旗
現代のレースはほとんどシグナルの点灯・消灯によりスタートが行われますが、故障時などは補助的に旗を用います。また伝統ある耐久レースやラリーなどではセレモニー的に国旗が振られるケースもあります。

国旗

赤旗
コース上でアクシデントが発生したり、大雨などで走行が危険になったりした場合に掲示されるのが赤旗です。レース中に掲示されると直ちに中断となります。

赤旗

黄旗
黄旗は、コース上で停車しているマシンなど、前方に障害があることを示す旗です。提示された区間は減速し、追い越しは禁止となります。競技によってはセーフティカー(後述)を導入する程ではないものの全域注意を要する状況で「フルコースイエロー(FCY)」となる場合があります。

黄旗

青旗
青旗は、後方からスピードの速いマシンが迫っていることを示す旗です。提示されたマシンは、後続車に進路を譲らなければなりません。主に周回遅れのマシンに提示されます。

青旗

緑旗
緑旗は、黄旗の解除を意味し、コース上の安全が確保されたことを示します。レースやセッション(練習走行や予選などの走行時間)を開始する時にも使われます。

緑旗

白旗
白旗は、救急車やクレーン車など、「セーフティーカー(SC)」(後述)以外の車両速度が遅い車両がコース上にいることを示します。

白旗

黒旗
重大な違反行為をした場合、そのゼッケン(車番)とともに提示されます。当該車両は「失格」となり、3周以内にピットインしなければなりません。

黒旗

オイルフラッグ
オイルフラッグは黄色と赤のしま模様をしています。コース上にオイルが漏れていたり、雨や砂などで路面状況が変化したりして、滑りやすくなっていることを示します。

オイルフラッグ

オレンジディスク旗
オレンジボールとも呼ばれます。マシンにメカニカル(機械的)なトラブルがあり、自車や他のマシンに危険を及ぼす可能性がある際に提示されます。迅速にピットに入り修復を命じるもので、カーナンバーを記したゼッケンボードとともに提示されます。提示を受けた次の周にピットインしなければなりません。

オレンジディスク旗

チェッカーフラッグ
チェッカーフラッグは白と黒の市松模様の旗で、レースの終了を告げます。レースのフラッグとしては最も有名といえるでしょう。レースの勝者がこのフラッグを先頭で浴びます。

チェッカーフラッグ

■スタート&ゴール

ローリングスタート
フォーメーションラップ(後述)を開始したマシンが止まることなくスタートする方式。世界耐久選手権(WEC)やスーパーGTなどがこの方式を採用しています。

スタンディングスタート
フォーメーションラップ後にすべてのマシンがグリッドに整列し、シグナルの合図によって一斉にスタートする方式です。F1などフォーミュラレースの多くはこの方式でレースが始まります。

スタート合図
現在はシグナルの点灯・消灯によってレース開始を合図します。開催国の国旗を振るケースもあります。

ポールポジション
予選で最も早いタイムを記録したマシンがスタートするグリッドのこと。

フロントロー
スタート最前列。2列スタートの場合、予選1位、2位のことを示します。

ホールショット
ポールポジションのマシンがトップで第一コーナーに進入すること。

ポールtoウィン
ポールポジションからスタートしたマシンが、レース中に一度もトップを譲ることなく優勝すること。

■その他の用語

ラップ(周回)
レースでは規定の周回数をいかに早く走ったか、あるいは規定の時間内にどれだけの周回数を走ったかで順位を競います。この周回のことを「ラップ(LAP)」といいます。「フォーメーションラップ」は、各マシンが隊列を整えて走行するスタート直前の周回のことを指します。またスタート後の最初の周回を「オープニングラップ」、レース終了直前の周回を「ファイナルラップ」と呼びます。

コントロールライン
コントロールラインとは、メイン観客席前の直線コース(ホームストレート)に設置されているラインです。1周当たりの走行タイム(ラップタイム)や周回数、順位などの基準となります。

ピットイン/ピットアウト
レース中は、タイヤ交換や燃料補給などメンテナンスを行う必要があります。この作業を行う場所を「ピット」と呼びます。ピットに入ることを「ピットイン」、コースに戻ることを「ピットアウト」といいます。また、ピットイン直前の周回のことを「インラップ」、ピットアウト直後の周回を「アウトラップ」といいます。

ピットイン

パドック
パドックとは、元々競馬用語で出走前の馬の歩様を確認する広場を意味する用語で、レースではドライバーやチーム関係者がサーキット内で過ごすピット裏の場所のことを指します。マシンを運搬するトランスポーターや、スポンサーらをもてなすモーターホームも設置されています。ここに特別に入場できる券種のことを「パドックパス」「ピットパス」「クレデンシャル」等と呼びます。

ポディアム/ポディウム
表彰台のことを意味します。

オーバーテイク/サイドバイサイド
レース中に前を行くマシンを追い抜くことをオーバーテイク、2台のマシンが横に並んで競り合っている状態をサイドバイサイドといいます。いずれもレースの見どころの一つです。コース幅の広い箇所で3台が競り合う状況を「スリーワイド」と表現することもあります。

パルクフェルメ
車両保管所を指します。技術的な不正や規則違反がないかなどを確認する場所です。

セクター
サーキットを複数の区間に分けた名称。3つに区分した場合はスタートラインから1つ目の区間をセクター1、次の区間をセクター2、ゴールラインまでをセクター3と呼び、各セクターでのタイムを計測しています。

セーフティーカー(SC)
セーフティーカー(SC)は、事故やトラブルが起きたときに出動する車のことです。トップを走るマシンを先導し、後続車は隊列を組んでゆっくり走行します。

セーフティーカー

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