- 2024/06/25
- JAMAGAZINE, カーボンニュートラル, モータースポーツ
スーパー耐久富士24時間、自動車メーカー5社が脱炭素で“共挑”
5月24~26日に富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開催された「スーパー耐久シリーズ富士24時間レース」にトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダ、スバルの5社が参戦しました。各社がレースで競うのは順位だけではなく、開発中のカーボンニュートラル(CN)を実現する技術です。5社は「共挑」をスローガンに掲げ、24時間レースに“共”に“挑”みました。
国内では「スーパーGT」と「スーパーフォーミュラ」、そして「スーパー耐久」と、タイトルに「スーパー」を冠した3つのシリーズが国内3大レースとして知られています。スーパーフォーミュラが車輪とドライバーがむき出しになっているフォーミュラカーなのに対し、スーパーGTとスーパー耐久のマシンは市販のスポーツカーと同じ形状をした「ハコ車」です。スーパーGTレースは専用設計のマシンが走りますが、スーパー耐久は市販車ベースで改造範囲も制限されているために個人が運営するプライベーターといわれるチームも多く参加します。ドライバーもアマチュアからプロドライバーまでバラエティー豊かです。
スーパー耐久は排気量などでクラスが複数に分かれています。その中で「ST-Q」は、メーカーの開発車両が参戦できるクラスとして2021年に新設されました。同年3戦目の富士24時間レースにトヨタが開発中の水素エンジンを搭載した「カローラスポーツ」で参戦。水素エンジン車がレースに出場するのは世界初の試みであり、同クラスが注目されるきっかけとなりました。21年の第6戦にはマツダがバイオ燃料、22年にはトヨタとスバルが同じCN燃料を用いて参戦。その後、日産とホンダも加わり、24年は参加車両が10車種まで拡大しました。ST-Qは、各社が脱炭素技術を持ち寄る「走る実験室」として存在感が高まっています。
トヨタの水素エンジン車は、燃料の水素をこれまでの気体からエネルギー密度が高い液体に切り替え航続距離を延ばす挑戦を続けています。今回の富士24時間ではタンク形状を従来の円筒型から楕円形状に変えたことでタンク容量を1.5倍とし、航続距離を135キロメートルとしました。
また、今回のレースではタレントで日本レースプロモーション(JRP)会長を務める近藤真彦さんがドライバーとして水素エンジン車に搭乗したことも話題となりました。近藤さんは「水素エンジン車の走りはガソリン車と全く変わらない」と述べ、今後の進化に期待を寄せました。
CN燃料で参戦するトヨタ「GR86」、スバル「BRZ」、マツダ「ロードスター」は、それぞれ同じ燃料を使用しています。異なる車両とエンジンで同じ燃料を使用することで燃料特性などを検証し、得られたデータを燃料メーカーにフィードバックすることで、燃料の改善やコスト低減につなげる狙いです。
日産は22年から「フェアレディZ」で、ホンダは23年から「シビックタイプR」でそれぞれCN燃料を用いて参戦しています。いずれも参戦で得られた知見を市販車にフィードバックしていくことなどを目的としています。スーパー耐久参戦の5社は、レース会場で定期的に集まり「S耐ワイガヤクラブ」を開催しています。当初は「特にテーマを決めず『せっかくなので集まろうよ』とスタートした」(トヨタガズーレーシングカンパニーの高橋智也プレジデント)集まりでしたが、今では開発から人材育成など幅広いテーマが話し合われています。ホンダ・レーシングレース運営室の桒田哲宏室長は「自動車産業とレースをどう持続性を持たせ発展させていくか、考える機会になる」と話しており、今後の展開が期待されます。
スーパー耐久シリーズの中でも富士24時間は国内唯一の24時間レースであり、モータースポーツファンにとっては年に一度のお祭りとして人気があります。恒例の打ち上げ花火はレースをさらに盛り上げ、24時間レースを楽しもうと集まったレースファンや家族連れが爆音の中でキャンプを楽しむ姿もありました。
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