自工会と部工会トップがサプライチェーンの更なる強靭化に向けた取り組みを確認
日本自動車工業会(自工会)と日本自動車部品工業会(部工会)は23日、東京都港区の日本自動車会館で正副会長懇談会を開きました。両会首脳が集まる懇談会は昨年7月に続き2回目となり、価格転嫁や労務費の反映も含む適正取引とサプライチェーンの強靭化がテーマとなりました。自動車業界では大手企業を中心に価格転嫁を積極的に行ってきているものの、幅広いすそ野を持つ産業だけに、なかなかサプライチェーン全体に行き届いていかないという課題を抱えています。今回、両会首脳が直面する課題や将来展望について議論を交わしました。
自工会会長の片山正則(いすゞ自動車)は冒頭、「自動車産業と日本の未来のために『自工会ビジョン2035』をベースに様々な取り組みを進めて行くが、未来のためには部工会との連携が必要」とあいさつしました。部工会の茅本隆司会長(日本発条)からは「昨年に続き正副会長懇談会の開催をありがたいと思っている」と応じ、「前回の懇談会後、既存の枠組みからレイヤーを上げ、自工会の総合政策委員会・企画部会とサプライチェーン委員会・調達部会、部工会の総務委員会・SC部会を窓口とした定期的な意見交換会「マネジメントコミッティ」「ステアリングコミッティ」を新たに立ち上げ、継続的な話し合いを進めている」と両会の連携について言及しました。
続けて、マネジメントコミッティのメンバーである部工会の齋藤克巳副会長(豊田合成)は、両会の具体的な連携内容として「昨年7月の懇談会以降、自工会・部工会の連携は加速している。8月には取引適正化などを題材とした共催セミナーを実施して、更に太田(群馬)、広島、浜松、中部など自動車産業集積地では適正取引をティアの深くに浸透させることを目的とした説明会を実施してきた。また定期的な意見交換会「マネジメントコミッティ」「ステアリングコミッティ」では、労務費の価格転嫁や型取引などの「①適正取引の更なる推進」、品質適正化や量変動への対応力強化などの「②競争力の強化」、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなどの「③新たな価値・社会要請への対応」の3つの軸で、両会の取組みテーマを議論している」と説明しました。
茅本会長は適正取引について「一番難しいのは浸透させていくこと」だと指摘します。中小企業庁が発表した昨年9月の「価格交渉促進月間」フォローアップ調査結果によると、自動車・自動車部品業界の価格転嫁率は51.9%となり前回調査よりも上昇しましたが、労務費の価格転嫁は道半ばで特にティアの深くまでは浸透していないのが現状です。片山からは「改めて自動車業界のすそ野の広さと深さを感じている。自動車産業で働く550万人を守り、拡大していくためにも(適正取引は)大事な活動」と強調しました。
副会長からも適正取引についての重要性について意見が上がりました。自工会副会長の佐藤恒治(トヨタ自動車)は、「労務費の価格転嫁は今年の春闘においても大変大きく、競争力を担保しながら『水が流れるような』環境を作るのは難しい。個社個社での議論においてもなかなか難しい案件」との考えを示しました。また、品質適正化に取り組む手法として「サーキュラーエコノミーの観点も採り入れると、業界として『大きな方向性はこうしていこう』という議論がしやすくなるのでは」と述べました。
副会長の三部敏宏(本田技研工業)は、「連携しているテーマについてこれから課題が出てくる。実務者レベルで解決できれば良いが、そうでない場合は自工会と部工会のトップレベルで障壁を取り除くような少し上位の概念も含めて議論していくと、進んでいくのではないか。多少テーマを絞って本質的な議論にすれば、自工会と部工会の連携の意味が深まるのでは」と提言しました。
また、部工会の齋藤副会長も「部工会では正副会長による会員企業への個別訪問を実施して、適正取引の浸透を図っている」と述べました。加えて、競争力強化や新たな価値・社会要請への対応について、「中小企業は何をやればいいのか分からないのが現状。コスト負担が大きくて着手できないなどさまざまな声が上がっている」と述べ、サプライチェーンの強靭化を後押しする施策の重要性についても言及しました。
自動車産業は電動化や知能化が新たな競争の軸となり、中国の新興メーカーの存在感が高まっています。こうした中、国内の自動車産業が競争力を維持、向上させていくにはサプライチェーンのさらなる強靭化が欠かせず、今後ますます両会の連携が重要となってきます。
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