- 2025/01/29
- CASE, JAMAGAZINE, その他
地図・ナビ・ETC2.0の世界
もはやクルマの「無くてはならない装備」として定着したカーナビゲーション。走行中の現在地の表示やルート案内に加えて、多彩なオーディオ機能や大画面モデルなど、その性能は年々進化しています。基本的な使い方をおさらいするとともに、近年のカーナビにはどのような機能が搭載されているのかについて、初心者の方々にもわかりやすくご紹介しましょう。
カーナビの基本的な役割は、「地図上における現在地の表示」と、「目的地までのルート案内」です。迷わずに目的地にたどり着けるだけでなく、走行している場所を把握して、ルートが間違っていないことを確かめられる点でもカーナビは役立ちます。実際にルートを探索する際には、まず目的地の名称か、住所または電話番号などの情報を入力し検索します。入力後は最短距離だけでなく、渋滞を加味した最速のルートや、有料道路を使用するか否か、また最近の一部機種では「燃費の良い経路」など、複数のルートが提案されるので、適したルートを選択しましょう。
画面上の地図は、縮尺に応じて表示される範囲や内容が変わります。例えば、50m以下の縮尺では、細い道幅の道路や一方通行の有無、付近の建物の情報が一目でわかりますし、数百mや1km以上では、詳細な情報を省いてシンプルな表示にすることで遠方の道路状況などが把握しやすくなります。加えて、地図の表示方法には、常に進行方向を上に示す「ヘディングアップ」と、常に北側を指す「ノースアップ」、そしてヘディングアップの一種ですが鳥観図のように立体的に示す「3D表示」の3種類が選択できることも知っておくとよいでしょう。好みは分かれますが、初めて走る土地で右も左もわからない場合などは、ノースアップに設定すると方向感覚が養えます。
カーナビに表示される渋滞や交通規制などの情報は、道路交通情報通信システム(VICS)を介して届けられています。システムの運用を手掛ける道路交通情報通信システムセンターが24時間365日、道路状況に関する情報を収集し、編集・処理して届けています。また、2015年からは従来よりも精度の高い渋滞回避案内、大雨や噴火などの気象情報を届ける「VICS WIDE」が運用されており、対応のカーナビであれば利用することが出来ます。
余談ですがカーナビの画面にはさまざまな情報が表示されており、初心者の方は戸惑うかもしれません。例えば機種によっては時刻が3種類表示されているものもあり、現在時刻や到着予定時刻に加え「VICS情報を受信した時刻」が表示されています。運転中に混乱しないよう、安全のためにも出発前に確認しておきましょう。
このほか、ETC2.0という規格に対応したカーナビであれば、車載機が路上のアンテナと通信することで、VICSよりも広範囲の道路情報を集めることが出来ます。VICSは基本的に都道府県単位での情報提供となっていますが、ETC2.0では約1,000km分まで拡大しています。加えて、進路上の天候情報や渋滞状況を静止画像で得られることも大きな特徴です。渋滞に遭遇する前にルート変更を検討できるほか、冬季においては通過予定の峠などでのチェーンの装着の判断にも役立ちます。
カーナビは、全地球測位システム(GPS)を活用して現在位置を特定しています。一方で、トンネル内では電波が届きにくいですし、都会のビル群では建物に電波が遮られたり、反射したりしてしまうケースがあります。そうした際は、タイヤの回転数を計測するパルス信号を基に移動距離を計算して、自車位置を推測しています。ただ、タイヤの摩耗具合によって移動距離がずれてしまうので、GPSが再び受信できた際に正確な位置へ修正しています。
地図や道案内だけでなく、運転中の快適性を高めることもカーナビに求められる役割です。ラジオやテレビ放送の受信や外部入力端子によるメディアプレイヤーやビデオの再生といった従来の機能に加えて、最近では Bluetooth (ブルートゥース)によるスマートフォン(スマホ)などの手持ちのデバイスとの連動が人気です。
特に近年、主に市販カーナビ業界でエンターテイメント性による、付加価値を追求する動きが高まっています。Wi-Fi機能により、車内で無線LAN環境を構築できる製品や、カーナビ上で動画共有サービス「YouTube」を楽しめるモデルが登場しています。また、9インチ以上のモニターを採用した大画面モデルや画面と本体部が分かれているフローティングタイプは、ユーザーの認知度が高まっています。市販のカーナビメーカーは、ユーザーに純正品から交換してもらうことが第一歩となる訳ですから、あの手この手で差別化につながる工夫を施しています。
一方で、近年カーナビと競合が激しくなっているのが、Google Mapsなどのスマホのナビアプリです。特に、スマートフォンとの親和性が高い若年層ほど、アプリを利用するケースも高いとみられます。カーナビと異なり、初期費用を低く抑えられるだけでなく、最新の地図データに簡単に更新できる点は、ナビアプリの大きな特徴です。今後は、地図の精度も向上していくでしょうから、ナビアプリを選ぶユーザーが増えるのは間違いないでしょう。実際に、あるカーナビメーカーからもスマホに慣れた世代が今後も増えると危機感を抱く声も聞かれています。
また「棲み分けを図ることが重要」という声もあります。例えば、地図の見やすさは、画面の小さいスマートフォンよりも、カーナビの方が勝っています。
機種によってはスマホと連携できる「Apple CarPlay」や「Android Auto」に対応したモデルもあり、ユーザーにとっては両者の「いいとこどり」が可能です。さらに、ナビゲーションの機能を省いて上記スマホ連携に特化することで価格を抑えた「ディスプレイオーディオ」も増えています。
ある意味、ナビアプリとの競争が激しくなることで、さらにカーナビの技術開発が進むことも期待できるでしょう。この先、「CASE」と言われるように「つながるクルマ」の開発が加速し、カーナビや音楽などの「インフォテイメント」がどのように進化するのかは引き続き注目したいですね。