- 2025/02/25
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未来を担う人財、集まれ! 大学キャンパス出張授業
自工会は、自動車メーカーの経営トップらが講師となり、業界の将来を担う大学生・大学院生にモビリティ業界の魅力を伝える「大学キャンパス出張授業2024」を開催しました。この取り組みは2013年から行っているもので、24年で11回目となりました。あらゆる点で変革期を迎えているモビリティ産業の可能性や面白さを、トップらが熱く語りかけました。
カワサキモータースの甲斐誠一執行役員MCディビジョン長は10月4日、兵庫県立大学姫路工学キャンパス(兵庫県姫路市)で「伝統と革新の『ものづくり』~カワサキの挑戦~」をテーマに講演しました。幅広くものづくりに携わってきた経験を踏まえ、「自分たちが良いと思うものだけを作っていればそれで良いという訳ではない」と話し、社会要請に応じた上で自社らしい製品や技術を開発していく重要性を説きました。質疑応答では「(同社の歴史車である)『Z1』や『Z2』など歴史車が欲しいが中古価格が異常に高騰している。この現状をどう思いますか」との学生の意見に対し、「どう思うかというと『毎度ありがとうございます』と思う(笑)」と笑いを誘いました。その上で「価格を決めるのは売る人ではなく買う人だ。われわれはできるだけ高く買ってもらいたいと思ってものを作る」と付加価値の高いものづくりにこだわる姿勢を示しました。

甲斐執行役員

水素エンジンモーターサイクル(研究車)やハイブリッドモーターサイクル なども展示
UDトラックスの長谷川眞也専務執行役員は10月9日、「多様性のなかで変化に適応するグローバル組織」をテーマに上智大学四谷キャンパス(東京都千代田区)で講演しました。長い歴史の中で親会社が何度か変わってきた同社ですが、外資系傘下に入った時代を振り返り、日本企業では珍しい独自のキャリア形成制度や社風を紹介しました。一例として、いすゞグループ入りした現在も運用されている社内公募制度を紹介しました。これは国内外の各部門が人材の募集枠を常に開示し、従業員が応募できる制度です。「日本は会社が親のように育ててくれる企業も多いが、海外は自ら成長していくという考え方が一般的」とし、これから社会人になる学生に自律的な成長を促しました。講演を終えた後には「多様な人材が働く会社で楽しく仕事をするための方法」についてグループディスカッションを実施。長谷川専務を交えて活発に意見が交わされました。

長谷川専務執行役員

グループディスカッションの様子
いすゞ自動車の作本弘司・開発部門VPは10月21日、東京大学本郷キャンパスで「『運ぶ』の社会課題解決に向けたいすゞの取り組み」をテーマに講演しました。トラックは国内の物流の9割超を担うインフラであり、直面している社会課題の解決に取り組んでいることを紹介しました。まず、「カーボンニュートラル(CN)の実現」では、電気自動車(EV/BEV)に加えて、燃料電池車(FCV/FCEV)、水素エンジン車など、地域や使用環境に合わせて多様な選択肢を残すことが望ましいことを説明しました。もう1つの課題である「ドライバー不足」に対しては、自動運転「レベル4(特定条件下における完全自動運転)」の実現に向けた実証実験を紹介しました。同社は2030年に向けた中期計画を発表しており、作本VPは「社会に対して何ができるか」の視点で、事業モデルの変革に取り組むと決意を語りました。

物流を取り巻く社会への解決の重要性を話す作本開発部門VP

自動運転車の実証実験について紹介
日野自動車の脇村誠CTO(最高技術責任者)は11月13日、東京都市大学世田谷キャンパス(東京都世田谷区)で「CTOが語るキャリアの秘密~挑戦と成長の物語~」をテーマに講演しました。自身のキャリアを振り返り、経験した出来事の「パズルのピースをつなげる」ことが重要だと、現役の学生たちにエールを送りました。自身は中学生のときに自動車エンジニアを志すも、高校卒業後は浪人生活も経験。ただ、高校時代のハンドボールでストレス耐性を身に付けたといいます。大学では2ストロークエンジンの研究をし、卒業後はスズキ、ヤマハ発動機で内燃機関や排気ガスの研究開発を手掛けました。日野自動車では、「ドライバー不足」「輸送効率の悪化」「移動困難者の増加」の解決にも技術で取り組んでいます。これまでのキャリアから「夢やワクワクを持ち続ける」重要性を語りました。

自身のキャリアを例に、経験とチャレンジの重要性を話した脇村CTO

車両展示にも多くの学生らが集まった
ヤマハの渡部克明取締役会長兼代表執行役社長は11月19日、立命館大学びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)で、「『モノづくりの喜び』を原動力に、人と社会の幸せを描く~ゲンバ発 自由闊達な企業風土~」をテーマに講演しました。渡部会長兼社長は、「われわれのような製造業は『モノからコトへ』ではなく、『モノ+コト』を通じて新たな付加価値を提供していくことが重要になる」と説明。陸のモビリティである二輪車、海のモビリティであるマリンに次ぐ事業の柱として、ロボティクスやファイナンスなどの新領域を育てていきたいとの構想を語りました。同社のサステナビリティ推進や産学連携の取り組みについても紹介しました。講演では、製品開発に携わる若手・中堅社員も登壇。自身のキャリアを振り返りつつ、ものづくりに打ち込める仕事の楽しさを参加者に訴えかけました。

立命館大学で講演する渡部会長兼社長

モーターサイクルや電動アシスト自転車などの展示も行った
SUBARUの柴田英司執行役員CDCO(最高デジタルカー責任者)は11月25日、母校の明治大学生田キャンパス(川崎市多摩区)で「デジタルカーが作るスバルの未来」をテーマに講演しました。長年携わっている先進運転支援システム(ADAS)「アイサイト」について、原価を徹底的に削減してステレオカメラで人や自転車なども検知できるようにしたことなど、開発秘話を学生らに話しました。さらに現在進める人工知能(AI)技術を活用したアイサイトについても説明。柴田執行役員は「これから社会人になる学生のみなさんにとって(自動車業界は)絶好の機会。すごい時代で面白い業界だ」と語りました。構内では車両展示のほか、アイサイトの体験会も実施し、多くの学生がスバルの安全技術を体感しました。

「アイサイト」の開発秘話を語る柴田執行役員

多くの学生がアイサイト体験会に参加
本田技研工業の青山真二副社長は11月27日、大阪大学吹田キャンパス(大阪府吹田市)で「大変革期にあるモビリティ業界の面白さ」をテーマに講演しました。青山副社長は、次世代の成長分野とにらむソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)について、同社の取り組みを紹介。「ソフトウエアのアップデートで車両価値を高めることができれば、商機を生み出す可能性がある」と説明しつつ、「ここ数年で新しいエコシステム(生態系)を作ろうとする動きは強まっている。みんなの時代はもっとダイナミックになる。厳しいが楽しい時代になる」と呼びかけました。質疑応答では、学生から「電動化が進めばマニュアル車などはなくなってしまうのでは」との声も寄せられましたが、青山副社長は「知能化領域では運転以外を楽しむ方向にあるのは事実だが、運転自体を楽しみたい人の世界も残していくので安心してほしい」と力強く応答しました。

大阪大学で講演する青山副社長

開発責任者も交えたパネルディスカッションでは質問が相次いだ
三菱自動車の加藤隆雄社長は11月28日、京都大学吉田キャンパス(京都市左京区)で「脱炭素化とデジタル化に向けた三菱自動車の取り組み」をテーマに講演しました。同大学のOBでもある加藤社長は、内燃機関車とEVを組み合わせながら環境負荷軽減に挑む同社ならではの戦略を紹介。「地域ごとに最適な手法を考えていく必要がある」との見立てを示しつつ、「われわれには(電動車に関する)過去からの経験の積み上げと、将来に向けた技術がある」と述べました。質疑応答では、EVシフトの減速を指摘する鋭い意見も上がりました。加藤社長は「EVが主流になるには時間がかかるかもしれないが、電池技術がもう一段、二段進歩すれば随分変わるはず」と説明。併せて「みんなが三菱自に入り会社を大きくしてくれたら、手軽に乗れて楽しいクルマも造れるようになる」と、ワクワクするクルマづくりを引き続き追及する姿勢も強調しました。

京都大学で講演する加藤社長

キャンパスには「トライトン」や日本未発売の「エクスフォース」を展示した
日産自動車の中畔邦雄執行役副社長チーフテクノロジーオフィサー(CTO)は12月11日、九州大学伊都キャンパス椎木講堂(福岡市西区)で、「技術で、未来を創る~モビリティの現在地と将来展望~」をテーマに講演しました。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を「社会課題や顧客ニーズの変化に対応するための処方箋」と語り、開発にかける思いを伝えました。福島県浪江町で提供するオンデマンド配車サービスの事例を挙げ「モビリティは街づくりそのもの」と地域活性化に貢献する姿勢を示しました。海外でのキャリアを志望する学生に対しては、「文化の違いはあっても、基本的な考え方は世界共通。特にエンジニアは原理原則に基づいて行動することが重要」とアドバイス。またインターフェイス進化の方向性を示しつつ、「ソフトウエアに強い若い世代が自動車産業に興味を持ち、一緒に開発を盛り上げていければ嬉しい」と呼びかけました。

九州大学伊都キャンパスで講演する中畔執行役副社長

「日産アリア」など最新技術を搭載した日産車を展示
マツダの佐賀尚人執行役員は12月13日、千葉大学西千葉キャンパス(千葉市稲毛区)で「マツダの描く未来とマルチソリューション」をテーマに講演しました。佐賀執行役員は同大学で内燃機関を学んだ経験を持ち、母校の学生に向けてCNの達成に向けた道筋を語りました。マツダは内燃機関も活用し、世界各国の使用環境に合わせた適材適所で取り組むことが重要だとしています。実現に向けて、電動車の開発のほか「スーパー耐久レース」で取り組むバイオ燃料やCO2回収技術も紹介しました。また高齢化社会への対応も重要で、運転で心身を活性化させつつ、安全性を高める「ドライバー異常時対応システム」なども解説しました。佐賀執行役員は「地球・人・社会」がこれからの社会のキーワードであり、どのように貢献できるかを考えてほしいと、学生たちに問いかけました。

母校の千葉大学で講演する佐賀執行役員

CASEなど業界の変革と対応の重要性を説明した
スズキの加藤勝弘取締役専務役員技術統括は1月16日、静岡大学浜松キャンパス(浜松市中央区)で「次の100年も人と社会に愛されるインフラ企業であり続けるために」と題して講演しました。加藤専務は静岡県磐田市出身で、同大学工学部卒。講演では鈴木式織機からスタートしたスズキの歴史を紹介し、商品群を拡充した経緯を説明しました。さらに、昨年発表した「技術戦略2024」について解説しました。加藤専務は「インドではADAS搭載車でも、先進国とは全く違う道路混雑状況のため、他国と同じ仕様では衝突する危険性がある。スズキはインドに早くから進出しているので、コネクテッドカーの普及で交通安全に貢献したい」と力強く語りました。講演終了後には展示していたスズキのクルマやバイクに乗った学生らとにこやかに談笑していました。

インド製の新型車も披露した

静岡大学で講演した加藤取締役専務役員
三菱ふそうトラック・バスは1月30日、工学院大学八王子キャンパス(東京都八王子市)で「世界を動かし続けるすべての人のために ふそうと若手社員の挑戦」をテーマに講演しました。同大学OBでもある生産本部生産・計画統括部の赤間巌組立工作部長が登壇し、「自社のトラックが街を走っているのを見ると誇らしい気持ちになる」と、商用車メーカーで働くことの醍醐味を軽妙な語り口で披露しました。
質疑応答では、商用車領域にも押し寄せる電動化の波について、その趨勢をたずねる声が上がりました。赤間部長は、「当社が小型トラックでラインアップしている電気自動車はもちろん、今後、水素を燃料とするFCVや水素エンジンも可能性がある」とした上で、「技術的にはどれも実現可能だが、世の中がどれを受け入れるかが焦点になる。これからの自動車業界を形作るのは、みなさんがどのようなものを欲し、どのようなものを買うのかが肝心となる」と話しました。

三菱ふそうトラック・バスは赤間巌組立工作部長が工学院大学で講演

「母校で講演できたことは社会人人生でも最良の思い出になった」と赤間部長