- 2025/03/05
- JAMAGAZINE, その他, モビリティ

自動車諸元表の読み方① 寸法・型式編
カタログデータは略号や数字の羅列ですが、その中にはクルマのさまざまな性質や性格などが秘められている「情報の宝庫」です。クルマの選択に迷った時には、これらのデータを参考に各車両を比較し、あなたにもっとも適したクルマの選択に役立ててください。「自動車諸元表の読み方」シリーズ、第1回は「型式・寸法・最小回転半径」などを取り上げます。
〈型式・車種記号〉
クルマには、車種ごとに固有の「型式」が付きます。現在のトヨタ「GR86」の源流ともいえる「カローラ・レビン/スプリンター・トレノ」なら「AE86」、今も人気の三代目「スカイラインGT-R」は「BNR32」などといった具合です。クルマ好きの人々の会話は、車名より型式の方が通じる場合があります。
最近のカタログでは、この型式の前に排出ガス規制の識別番号である3桁のアルファベット・数字が表記されるようになりました。この3桁は排出ガス規制の適用の有無により表記方法が分かれます。
排出ガス規制の適用がある車の場合、1桁目は何年度の排出ガス規制適合車かを示し、2桁目はハイブリッドの有無と燃料の種類、3桁目は用途や規制値のベースとなる重量条件などを示しています。
なお、排出ガス規制適用のないクルマの場合は、1桁目はZ、2桁目は燃料の種類、3桁目は用途の区分を示しています。例えば、電気自動車(EV/BEV)で乗用車の日産自動車「日産リーフ」は、排出ガス規制の適用を受けず、EVで、用途区分は乗用車のため「ZAA-○○」で始まります。また、いすゞ自動車の「エルフEV」は同じEVでも用途区分は貨物のため、3桁目がBに変わり「ZAB-○○」となります。各桁毎のアルファベットが表す内容の詳細は表1、2をご覧ください。
また、これらの記号とハイフンに続く一連のアルファベットと数字は届出の型式名で、様式は自動車メーカーごとにそれぞれ異なります。
〈寸法〉
・全長×全幅×全高
車体寸法はクルマの外側の寸法、つまり大きさを表すもので、空車状態で測ります。この大きさと排気量により、車両の分類が分かれます。ただし、サイドミラーの出っ張り部分は寸法に含まれません。また、小型自動車を超える大きさの普通自動車も原則として全長12.0m×全幅2.5m×全高3.8mを超えてはならないことになっています。
なお、軽二輪車や原動機付き自転車、軽自動車、小型自動車はエンジン排気量とともに各寸法の制限が定められています。
・ホイールベース(軸距)
前輪と後輪の間の距離を示すホイールベースは、クルマの大きさや性質を決める最も基本的な寸法です。大型トラックなど3つ以上車軸がある場合はもっとも遠い車軸間の寸法で表記します。ほかの条件が同じであれば、一般的に長いほど乗り心地が良く、直進安定性にも優れますが、半面、運動性能は低下し、小回りも利かなくなります。

3車軸以上のトラックでは、最も遠い軸間をホイールベースとします
・トレッド(輪距)
左右の車輪の間隔で、空車状態のタイヤの接地面の中央から中央までの距離を示します。前輪と後輪で異なる場合が多いので、それぞれ併記しています。傾向としてほかの条件が同じであればトレッドが広いほど乗り心地は良く、カーブでの安定性が高まりますが、小回りは利きにくくなります。


車体の一番低い部分と路面との間隔で、やはり空車時の寸法です。同じ構造の車体なら低くするほど重心が下がって走行安定性が高まりますが、その半面、不整地や段差などでの走破性は低くなります。オフロード4WD車などでは悪路走破性の尺度の一つとなっています。

全長はダッシュボードの後端部から後席バックレストの背面までの距離、全幅はドア上部の高さにおける左右ドア内側の間隔、全高は床面から天井の一番高いところまでの垂直の高さです。これらの寸法はそれぞれの最も広い(高い)部分の数値であると同時に、室内には通常さまざまな張り出し部分があり、シートなどの大きさや形状によっても実際の居住空間は異なってきます。
〈重量 定員 最小回転半径〉
・車両重量
文字通りクルマの重さのことで、燃料や冷却水、油脂類(エンジンオイルなど)を規定量積んだ走行可能な状態の重量です。ただし、乗員や積載物の重さは含みません。車両重量は軽いほど「身軽」なため、クルマの運動性能や燃費は向上します。ただし、車体には重さのほかにも剛性や耐久性、衝突時に衝撃を吸収するボディ構造などさまざまな要素が求められるため、最新のクルマでは無駄なく最適な剛性が得られるよう、ソフトウェアによる構造解析を設計に採用したり、鉄からアルミ合金、樹脂材、カーボンファイバーといった材料に替えたりすることで軽量化を推し進めています。
・乗車定員
そのクルマに最大で大人が何人乗ることが許されるかを示します。12歳未満の子供は3名で大人2名分と見なすので、例えば定員4名の軽自動車でも大人2名と子供3名が乗ることが出来ます。定員を算出する場合の座席の幅は1名あたり40cm(園児バスなど幼児専用車は1名あたり27cm)、路線バスなどで立席を設ける場合は1名分0.14m2と定められており、乗務員席、客席、立席の合計が乗車定員となります。
・最大積載量
そのクルマに積むことが許される貨物の最大重量です。これは商用車に限られ、乗用車の場合はミニバンやワゴンのように荷物を積むスペースがあっても設定されません。例えばライトバンなどで乗車定員2(5)名、最大積載量400(250)kgという場合、2名乗車では400kgまで、5名乗車なら250kgという意味です。最大積載量はそのクルマの車体の強度やタイヤの耐荷重、ブレーキの制動能力などを考慮して50kg刻み(大型車は100kg刻み)で決められますが、軽自動車の場合は350kgが上限と定められています。

商用車には最大積載量の表示があります
・車両総重量(GVW)
定員が乗車し、最大積載量にあたる貨物を積んだ走行状態の重量、即ちそのクルマの重さの最大値です(GVWはグロス・ヴィークル・ウェイトの略)。具体的には車両重量+乗員の重さ(商用車の場合は+最大積載量)=車両総重量で、乗員1名の重さは55kgで計算します。道路運送車両法の保安基準では道路や橋を過剰な重量から守るため、ホイールベースごとに5.5m未満のクルマの総重量を20トン、5.5 ~ 7m未満は22トン、7m以上は25トンまで認めると同時に1本の車軸から路面にかかる重量を10トン以下、1輪あたり5トン以下と定めています。25トンを超えると、「特別認定車両」となり、通過する道路の所轄警察署長の許可が必要となります。また、道路交通法でも普通免許で運転出来るのは車両総重量5トン未満、中型免許は11トン未満と規定しています。このため、前述の最大積載量は、そのクルマが認められる車両総重量の最大値(例えば普通免許仕様なら3.5トン弱など)から車両重量と乗員の重さを差し引いた値で、かつ許容軸重の範囲内として設定されるのが一般的です。
・最小回転半径
そのクルマがどれくらい小回りが利くかの尺度となる数値です。平坦な路面の上でステアリングを一杯に切ってゆっくり回った際に一番外側のタイヤ(通常は前輪)が描く円周の半径で、タイヤの幅の真ん中を基準に計測します。フロントバンパーの角部など、車体の一番外側が描く軌跡は当然これよりも外側にはみだしますから、前方にガードレールがある場合や壁などに囲まれた場所で旋回するには、最小回転半径の数値よりも相応の余裕が必要です。
関連リンク