- 2021/12/03
- JAMAGAZINE, コロナ, テレワーク
コロナで変わる？クルマの使われ方③
ニューノーマルの働き方を支えるクルマの価値
自工会広報誌「JAMAGAZINE」11月号よりピックアップ
プライベートな空間が確保できるクルマはテレワークにも活用できる
新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに、ビジネスシーンでも社会のトレンドや価値観が大きく変化しています。感染防止の観点からテレワークが定着し、ワークスペースとしてクルマを活用するケースも増えています。同時に「ニューノーマル」による人の行動変化は、働く場所に限らず、飲食や物販といったリアル店舗での需要まで様々な影響をもたらしています。これによりクルマを活用した新たなビジネスモデルが広がるなど、クルマが持つ「自由な空間」という価値に注目が集まっています。
テレワークの悩み
新型コロナウイルスの感染防止には、「密」を避けた生活様式が求められるため、人々の行動もコロナ禍以前とは様変わりしています。中でも効果的な感染防止策として政府が推奨するテレワークは、通勤が要らない働き方という従来にはない概念です。通勤時間が不要になることで時間の有効活用が可能というメリットの一方で、自宅では仕事スペースの問題や、家族に気を遣って仕事に集中できないといった不満の声も少なくありません。このためプライベートが確保できる空間として、クルマをオフィススペースとして活用する人がコロナ禍で急増しました。
プライベートな移動手段であるクルマは、執務スペースとしても魅力的な製品といえます。例えば、優れた設計のオフィスチェアを導入するには、かなりの予算が必要となりますが、クルマのシートは長時間運転しても疲れにくい設計としているため、仕事で長時間座っていても腰が痛くなりにくいといったメリットがあります。また、日本ではミニバンやハイトワゴン、SUVといった居住性を重視した車種が支持されていることも、車内テレワークのニーズにマッチしているといえます。
カー用品店には、より車内テレワークを快適にするアイテムが並ぶ
より快適な仕事場に
ただ、そもそもクルマは走行して移動することを目的に設計された製品です。このためクルマを仕事場として活用するために、より快適に過ごせる空間を実現しようという工夫も見られます。カー用品店ではコロナ禍以降、パソコンを置くことができる車内用テーブルをはじめ、ペンや小物などの収容関連用品、除菌グッズ、プライバシー確保のためのカーテンやサンシェードといった車内テレワーク向けのアイテムが人気を集めており、ピーク時にはコロナ禍前の２～３倍へ販売を伸ばしました。車内テレワーク向け用品の専用コーナーなどを設置している店舗もあります。
また、日産自動車は車内テレワークを快適に過ごすヒントを紹介するwebページを公開しています。段ボールを用いた手作りパソコンデスクや料理用ボウルを流用したWi-Fiルーター、古着のリユースクッション、エコノミークラス症候群対策ストレッチなど、手軽で効果的な工夫を紹介しています。
専用車両も登場
モネ・テクノロジーズは移動オフィスに適した架装キットなどを販売している
車内テレワーク需要の高まりを受けて、新たなビジネスを模索する動きも見られます。ソフトバンクやトヨタ自動車などの自動車メーカー8社が出資するMONET（モネ）・テクノロジーズ（宮川潤一社長兼CEO、東京都千代田区）は、１BOXをベースに様々な用途に利用できる架装を施した「マルチタスク車両」を販売しています。テーブルなどの車内レイアウトを自由に変更できるため、移動オフィスをはじめ用途に合わせた様々な活用が可能となっています。また、日産自動車、ソフトバンク、ゼンリン、大日本印刷、クワハラの５社は、クルマでの移動中にweb会議ができる「移動会議室」の実証実験を行ったほか、東急バスもバス車内で仕事をしながら通勤できる「シェアオフィスバス」の実証実験を行いました。このような取り組みは従来からMaaS（サービスとしてのモビリティ）の一環として行われていましたが、コロナ禍による生活様式の変化で改めて注目が高まっています。
日産など5社が行った移動会議室の実証実験では「エルグランド」を使用した
移動店舗で新たなビジネス
ニューノーマルの生活では、働く場所や生活習慣が変化したことで、人の行動や人流も様変わりしています。特に外食産業や小売り業界では、テレワークや感染リスク回避などにより、店舗経営が立ち行かなくなる事態も起きています。こうした状況の中、新たなビジネスチャンスとして、場所を選ばず出店できるキッチンカーや移動販売車を活用する事業者が増加しています。リアル店舗の新規出店に比べて設備投資が抑えられるほか、自治体が事業者支援として補助金や助成金を用意していることも追い風となっています。
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